アニメ「シャドーハウス」|自らもとことん参加、ソウマトウが語るスピード感あるアニメ制作の舞台裏

「黒-kuro-」も「ギリギリアウト」も原材料は同じ

──では「シャドーハウス」に話を戻して、どういうところから作品の着想を得たか教えてください。

シャドーのサラとその生き人形のミア。ミアはエミリコが所属する清掃班の先輩だ。 パトリックとリッキーの談話シーン。

のりが服屋でトルソーをボーッと見ているときに突然ひらめきました。あとはひっしの得意な服や背景、2人の共通の趣味である建築物や変な舞台での日常といったものの寄せ集めです。

──思いついても、メインキャラクターを真っ黒にするというのは勇気が必要だったのでは。

マンガ家って表情を描くのが仕事みたいなところがありますが、「シャドーハウス」では表情以外で感情を表現できないかなと思ったんです。のりは「小説ならできるんだからマンガでもできるだろう」という安易な考えもありましたし、ひっしはキャラクターの顔を描くのが嫌いなんですよ(笑)。ずっと「服や背景ばかり描いていたい」と言っているくらいで。もちろんキャラクターもかわいく描こうとしていますが、自発的に描きたいという気持ちはないんです。

──前作「ギリギリアウト」は、美少女ヒロインの魅力を前面に押し出したものなので意外に聞こえます。

もともとのりがグラフィックデザイナー、ひっしがマンガ家のアシスタントだったので、人の要望に合わせて仕事するのが染みついているんです。ソウマトウとしては「これが描きたい!」というものは特にありません。そのため基本的には編集さんの興味があるテーマやジャンルから手探りし始めて、そこからいろいろと思いついて徐々にエンジンがかかっていくタイプです。それに「ギリギリアウト」は連載会議にあたって3つ作品を提出したんですが、その中でも“がんばってる感”を出すために作った捨てアイデアだったんですよ。連載会議に3本も作品を提出したら、がんばってるように見えるだろうって(笑)。会議に提出した3話分以上のことを何も考えていなかったから、いざ連載になったときはそれ以降何を描いていいか悩みました。

──「ギリギリアウト」は緊張するとおもらしをしてしまう少女と、触れた相手の尿意を鎮める力を持つ男子のシチュエーションものですが、3話までしか考えていなかったという中で、連載ではよくあれだけ豊富なバリエーションのおもらしを描かれましたね。

とにかく「全話違うシチュエーションにしよう」というモチベーションでやっていました(笑)。

──さらに過去作の「黒-kuro-」は「シャドーハウス」につながる部分がある気もするのですが、「ギリギリアウト」は作風としては意外だったので、編集の方の興味があるテーマやジャンルから手探りし始めるという話は腑に落ちました。

「シャドーハウス」のPVより。

でも、気付きにくいかもしれませんが「黒-kuro-」や「ギリギリアウト」で描いたテーマはけっこう共通しているんです。変な舞台での日常、人ではない奇妙なキャラクター、不穏、アクション、シュールギャグ、家族愛、トラウマからの解放、民間信仰……パッケージを変えているだけで、「シャドーハウス」もそれらと原材料はだいたい同じですね。

次はギャグマンガをやってみたい、けど難しいかも?

「シャドーハウス」のPVより。

──もう少し「シャドーハウス」について聞かせてください。序盤からかなり丁寧に伏線が張られていますが、連載開始時にはどれくらい先の展開を考えていたのでしょうか?

最初からだいぶ先の話までぼんやり考えていて、あとから肉付けしています。ただ各エピソードはどのくらいの尺を取るかは描いてみないとわからなかったり、キャラクターの関係によって変更されたりするエピソードもあります。例えばお披露目なんて当初は3話程度で終わらせる予定でしたし。

──実際は1巻半ほどのボリュームとなりました。そこまで大きく変わるんですね。

細かい部分を考えるのを後回しにする癖があるんですよね。

お披露目のエピソードでのエミリコとラムの一幕。

──お披露目は庭園の複雑な地図も出てきますし、とても3話で終わる予定だとは思いませんでした。

担当さんはわくわくできる少年誌っぽいものが好きな人なんですが、「庭園に行くなら庭園の地図が欲しいです」と言われたんです。でも何も考えていなかったので、それから1日かけて庭園の地図とギミックを全部作りました(笑)。それがなければぼんやりした話になっていた気がするので、ありがたい助言でした。

──まさにわくわくできるような冒険感もありますし、お披露目はアニメ映えしそうな内容ですよね。ちなみに「シャドーハウス」を読んでいて一番驚いたのがトーンを使っていないことでした。単純な質問で恐縮ですが、かなり大変なのでは?

普通に大変です(笑)。もともとは作画方法を作品に合ったものにするために古い時代の印刷物を思わせる作画にしたかったのと、単純に飽き性なのでのりが軽い気持ちで「今回はハッチング(平行な線で一定の範囲を埋める技法)で」と指定したのが始まりです。表現の幅も制限されるので、今では少し後悔しているところです。

檻に囚われたケイト。

──今後も素敵な絵を楽しませていただきます。最後に「ソウマトウとしては特に描きたいものがない」ということでしたが、「シャドーハウス」を描き終えたときに今後挑戦してみたいジャンルを教えてください。

そうですね……ギャグマンガでしょうか。もともと描き始めたときに描いていたのはギャグマンガだったし、「シャドーハウス」と一緒に連載会議に出したものにもコメディがあったくらいなので。でもそれもギャグ部分がキツ過ぎて編集さんにドン引きされたくらいなので、難しいのかもしれませんが、いつか出せたらいいですね(笑)。