アニメ「シャドーハウス」|顔のない“シャドー”一族を巡る数奇な物語、その謎と魅力を5つのキーワードから紐解く

4月よりTVアニメが放送されるソウマトウの「シャドーハウス」は、とある洋館で貴族の真似事をして暮らす顔のない“シャドー”一族と、彼らに仕える“生き人形”を描くゴシックミステリー。コミックナタリーではTVアニメのオンエアを前に5つのキーワードに焦点を当てて作品を紹介する。作品に触れたことのない人も、これを機にその不思議な魅力の一端を知ってもらえれば幸いだ。

構成・文 / 齋藤高廣

イントロダクション

原作者のソウマトウは原作・デザイン担当のり、作画担当ひっしからなる2人組ユニット。少女誌から青年誌、4コマ誌までさまざまなジャンルの雑誌で作品を発表している。原作マンガの「シャドーハウス」はそんなソウマトウが2018年より週刊ヤングジャンプ(集英社)にて連載中で、となりのヤングジャンプおよびマンガアプリのヤンジャン!では雑誌連載と同時並行でフルカラー版を配信。韓国では日本から数週遅れのニアサイマル配信が行われており、フランス、台湾などでも単行本が展開されている。日本では単行本は第6巻まで刊行されており、第3巻には「とつくにの少女」のながべ、第4巻には「約束のネバーランド」の白井カイウがそれぞれ帯コメントを寄せた。また俳優の高杉真宙がたびたびテレビ番組や自身のWeb連載で本作を紹介し、「Fate」シリーズの奈須きのこもブログで感想を綴るなど、各界の目利きたちから注目を集めている。

「シャドーハウス」1巻 ©ソウマトウ/集英社
エミリコは自身の出自についてなんの疑問も抱かず、“生き人形”としての職務をまっとうしようとする。©ソウマトウ/集英社

物語は“シャドーハウス”と呼ばれる洋館に住む顔のない“シャドー”の少女・ケイトと、彼女に仕える“生き人形”エミリコの日常の描写からスタートする。寝坊してしまったり、掃除中に物を壊してしまったりと失敗してばかりだが、立派な生き人形になろうと奮闘する日々を過ごすエミリコとそれを見守るケイト。2人の日常にスポットを当てる形で物語が進行するのかと思いきや、その後シャドーハウスにはほかにも生き人形やシャドーが住んでいることが明らかに。彼らとの交流や洋館で巻き起こるいくつかの事件、“お披露目”と呼ばれるイベントを通し、館やシャドー一族に秘められた真実が明かされていく。

そんな「シャドーハウス」の持ち味は、作品世界に漂う不穏な雰囲気、そして「シャドーとは何者なのか?」などの謎がじわじわと解き明かされていく展開だ。本作の冒頭だけを読むとシャドーの生活を丁寧に描いた日常ものという印象を受けるかもしれない。しかし物語を読み進めていくとキャラクター同士が協力して困難を乗り越えていく冒険もの、主人公たちが不穏な存在に立ち向かっていくサスペンスものなど、さまざまな側面が垣間見え始める。特定のジャンルに限定されない、さまざまな楽しみ方ができるのも魅力のひとつだ。

ケイトのモノローグ。彼女は一体何に苛まれているのだろうか。©ソウマトウ/集英社
異形の存在“こびりつき”を退治しようと奮闘するエミリコ。©ソウマトウ/集英社 シャドーハウスは間違っていると説くケイト。その真意とは……?©ソウマトウ/集英社

「シャドーハウス」を読み解く5つのキーワード

“シャドー”“生き人形”

ケイトの前後を間違えてしまったエミリコ。ケイトの頭からすすが立ち昇っている。©ソウマトウ/集英社

「シャドーハウス」を楽しむうえでまず押さえておきたいのは“シャドー”の設定。全身が影のようで顔のない彼らには、体中からすすが出てしまうという特徴がある。特に頭から立ち昇るすすは、彼らが怒りや不安など負の感情を抱いている証拠。表情がわからないシャドーの気持ちを知ることができる数少ない手がかりだ。

また、彼らがすすだらけにした部屋を掃除し、それぞれのシャドーの「顔」として振る舞う“生き人形”の存在も忘れてはならない。表情が見えないシャドー一族を判別するため人間そっくりに作られたという彼らは、シャドーに対して深い忠誠心を持っている。

エミリコへの思いを独白するケイト。©ソウマトウ/集英社

作中には多数のシャドーと生き人形が登場するが、主軸に描かれるのはシャドーの少女ケイトと、その生き人形エミリコ。自らもシャドーでありながら一族の行動に疑問を抱くようになっていくケイトは、さまざまな出来事を通じて少しずつその秘密に迫っていく。またエミリコもケイトとの絆が深まるにつれて、彼女の目的に協力するように。最初は噛み合わないところもあった2人が徐々に親しくなっていく展開も、この作品の見どころだ。TVアニメではケイト役を鬼頭明里、エミリコ役を篠原侑が演じているが、その他の対になるシャドーと生き人形は1人のキャストが演じ分けている。それぞれのキャラクターをどのように表現するのか注目しよう。

ケイトと同期の“シャドー”たち。©ソウマトウ/集英社 ケイトやその同期の“シャドー”たちの「顔」を務める“生き人形”。©ソウマトウ/集英社

“すす”

すすを生き人形がこまめに掃除する理由は、見た目が汚いからというだけではない。すすが溜まってしまうと自ら動き出す“こびりつき”となり、それが生き人形の体内に入ってしまうと、正気を失う“すす病”の原因になるのだ。そしてこびりつきがさらに集まると、“亡霊”と呼ばれる巨大な姿に。この亡霊が後々騒ぎを引き起こすことになる。

屋敷内に現れた“こびりつき”の集合体。©ソウマトウ/集英社 ふとした拍子に“すす能力”に目覚めたケイト。訓練することでその力が増していく。©ソウマトウ/集英社

また生き人形にとっては脅威となりうるすすだが、シャドーの中にはそれを自在に操る者も。シャドーたちそれぞれがどんな能力を持っているかは、マンガとTVアニメで確かめよう。

なぜすすはシャドーの体から出てくるのか? こびりつきとは何か? どうして生き人形は“すす病”にかかるのか? “すす能力”の仕組みとは? ……すすを巡る謎は、どれもシャドー一族の核心に触れそうなものばかりだ。


2021年4月10日更新