COMICメテオにて連載中の山本アリフレッド「理系が恋に落ちたので証明してみた。」は、大学研究室を舞台に理系の学生たちが恋愛感情を定量的に測定し「好きの一般条件」を理論的に導き出そうと奮闘努力するさまをコミカルに描いたラブコメディ。1月よりTOKYO MXほかにてTVアニメが放送中だ。
単行本は8巻が発売されたばかりで、総合電子書籍ストア・BookLive!にて8巻を購入すると、TVアニメ版キャスト陣の録り下ろしのボイスとコマを組み合わせた“マンガ動画”が特典として視聴できる。コミックナタリーでは、ヒロイン・氷室菖蒲を演じた雨宮天にインタビューを実施し、作品の魅力やキャラクターへの思い入れ、声優としての演技に対するこだわり、“マンガ動画”のアフレコの様子などをじっくりと語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 須田卓馬
そこがあったんだ!
──最初に原作を読まれたときの感想から教えてください。
とても面白いマンガだなと思いました。ギャグマンガはけっこう好きなんですけど、理系の要素や知識を話の中に組み込んでコメディにするっていうのは今まで読んできたどれとも違う、すごく面白いテーマだなと。「そこがあったんだ!」っていう。
──「判定問題」や「帰無仮説」など、さまざまな理系の用語が出てきたりと、確かに斬新な切り口の作品です。
あと、嫌いなキャラが1人もいないんです。出てくるキャラ出てくるキャラ、みんな個性が強いのに愛らしくて。よくある、最初は印象悪くて最終的にいい奴だとわかる的なパターンがこの作品には全然ないですね。最初からみんな好き、みたいな。
──ほとんどのキャラがボケで1人だけツッコミがいるみたいな人物配置ですよね。
そしてやっぱり氷室と雪村(心夜)の、見ていてちょっとかゆくなるような初々しいやり取りもひたすら面白くて。原作を読んだとき、本当に「氷室役やりたい!」って強く思いました。
バカなセリフほどカッコよく
──氷室を演じるにあたって、どんな心構えで臨みましたか。
絵だけを見たときは「クールで頭よさそうでバリバリ理系」みたいな印象だったんですけど、内容を知っていくにつれて「ひたすらかわいい子だな」と感じたんです。表向きは理知的で凛としているけど、実はすごく乙女心を持っているじゃないですか。外見とのギャップがすごくある子なので、そのかわいらしい部分を大切にしていきたいなって思いましたね。
──アニメを拝見すると、雨宮さんは凛とした方向性にがっつり寄せてますよね。お芝居がシリアスであればあるほど、真剣におかしな考察をしているというギャップで笑える仕組みになっていて。
そうなんです。そして氷室と雪村が真剣であればあるほど、奏(言葉)ちゃんのツッコミが冴えわたるという(笑)。奏ちゃんのツッコミってイコール視聴者の気持ちだと思うので、そこはかなり意識しましたね。ディレクションでも「もっとカッコよく」「もっと理系モードで」という指示もありましたし、バカなことを言うシーンは特に、かなりカッコよくキメキメで演じることを心がけました。
──ただ、そこで役者さんの演技に「笑わせてやろう」みたいな思いが透けて見えると視聴者としては興ざめしてしまったりもしますが、雪村役の内田雄馬さんも含めて見事な振り切り具合でした。そのさじ加減は難しかったのでは?
キャラ本人からしたら、ただただ本気で言っていることですからね。こちらとしては、そのまっすぐな気持ちを声に乗せるだけなんです。私はあまり「ここで笑わせてやろう」みたいな声優の欲望を乗せないタイプで、あくまでキャラの気持ちを尊重したいと思ってやっていますね。そこのさじ加減で苦労したという意識は特にないです。
「もっと年齢感を上げてください」
──それも含めて、氷室はハマり役ですよね。雨宮さん以外にいったい誰がやれるんだというくらいのキャラクターじゃないですか?
本当ですか? そう言っていただけるのはうれしいですけど、氷室というキャラクターを演じるのは私にとってかなり難しいことでしたし、アフレコ終盤までずっと悩みながら作っていったキャラクターだったので……。
──具体的にはどんな悩みが?
1話のアフレコで「もっと年齢感を上げてください」って何度も言われて、オーディションのときに作った氷室の声色よりもかなり低い、大人っぽいしゃべり方に現場で変わっていったんです。なので、私の持っていたイメージとかなりギャップがあるところからのスタートでした。その大人っぽいベースを保った状態で、どうしたら私の感じた氷室のかわいさを出せるのかと探りつつ、やりすぎたら氷室から外れちゃうんじゃないかという心配もあったり。
──表現したいのは氷室の子供っぽいところやかわいらしいところなんだけど、出す声はカッコよくなきゃいけないという。
私は高めのトーンを使うと“かわいい”に寄りすぎちゃう声だなと自分では思っているので、いかにその成分を出さずに高めの声を使うか。これが仮にシリアスな作品であれば、ベースの氷室だけを大事にしていけばいいんですけど、「リケ恋」はラブコメディじゃないですか。振り切らなくちゃいけない、けどキャラを守らなきゃいけない。さらに話数を追うごとに雪村くんの気持ちとぶつかる場面も出てくると、また新たな表情も見せたりする。もうどうしたらいいのか……。何度も何度も家で練習して録音して聴いて、「これは氷室の範囲内なのかな」「ちゃんと氷室のよさが出てるのかな」って試行錯誤を繰り返して。そういう難しさがありましたね。
──そんな中で、例えば酔っぱらったシーンなんかは思いっきり“かわいい”に振れるわけですよね。
あはは、そうですね(笑)。でも、ベースの氷室を意識するあまり、ちょっと振り幅が小さくなっちゃっていたところがあったんです。そんなときに「もっと大きくやって大丈夫です」「1回氷室を忘れてください」みたいなディレクションをいただいたので、安心して「あ、もっとやっていいんだ」と思えましたね。結果的に「私の思うかわいい氷室が出せたな」って自分で思えたので、それがすごく救いでした。
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「あ、これ氷室だわ」