「理系が恋に落ちたので証明してみた。」雨宮天(氷室菖蒲役)インタビュー|女子はこれ、普通にときめくよ!コメディだけにとどまらない多層的な魅力

「あ、これ氷室だわ」

──お気に入りのシーンを教えてください。

その酔っぱらいのシーン以外だと、「ムード値」の実験をするところです。

──キスをしたくなるようなムードの条件を数式化しようと試みるエピソードですね。

あれってメインキャラクターが全員登場するエピソードじゃないですか、先生まで含めて(笑)。キャラクター同士の関係性がわかりやすい話数だなって。それまでの話数でそれぞれのキャラクターみんなを好きになっていたからこそ、「この人とこの人の組み合わせだと、こういう反応が起こるんだ!」みたいな。彼らのやり取りがすごく愛おしくて面白くて、お気に入りですね。

──あの回は、いろんなカップリングを自然に見せられるという意味で見事な設定だと思いました。

好きな相手とのキスとそうでない相手とのキスを比較するため、棘田恵那(CV:大森日雅)とキスすることになった雪村。

いやホントに! 関係性を見せるための話数とかじゃなくて、あくまで実験しているうちに見えてくるっていうのが素敵で。

──実験というシチュエーションをうまく使っていますよね。では、印象に残っている氷室のセリフはありますか?

ええと……今ってオンエアだと何話まで終わってます? ラストに近いシーンだとネタバレになっちゃいますよね。

──この記事の掲載予定は3月中旬なので、もう終盤ですね。それにWebでは全話先行配信されていますし、あまり気にされなくても大丈夫ですよ。

なるほど……とは言え、テレビ派の人には楽しみにしててほしいですから!

──わかりました(笑)。では、中盤くらいまでの中から。

まず、初回冒頭の決めゼリフ「この恋0か1か証明するぞ!!」が、自分の中では言えて安心できたセリフでした。これから「リケ恋」という物語が始まるうえで大事なシーンだし、めちゃくちゃカッコいいシーンでもあったし。2人だけを切り取れば、ですけど(笑)。先ほどお話ししたシリアスとコメディが表裏一体なところなど、その後のお芝居の基準になっていく重要なセリフだったと思います。ここで「あ、これ氷室だわ」って思えたのは大きかったですね。

──そこで何かひとつ見えたものがあったと。

はい。あとはもう酔っぱらったときの「ゆきむらくんすきー♥」ですね(笑)。その2つかな。

内田雄馬の稀に見る噛み方

──アフレコ現場の雰囲気はいかがでした?

和気あいあいとした楽しい雰囲気だったんですけど、コメディであると同時にすごく難しい用語をたくさん言う作品でもあるので、まあ噛むんですよ(笑)。言い慣れてないから。

──「オキシトシン」とか、普通に生きてたら言う機会ないですよね。

幼い頃から神童と称された頭脳の持ち主である雪村も、氷室と同様にこの世の事象はシステムを解明しないと気が済まないという性分だ。

そんな中で私がすごく好きだったのは、雄馬さんの噛みっぷり(笑)。あるとき雪村と氷室の掛け合いの中で雄馬さんが突然、稀に見る派手な噛み方をしたんです。なのに、どういうつもりなのかわからないんですけど、「噛んでない」みたいな顔でそのままセリフを続けるんですよ。だから次の氷室のセリフが回ってきちゃうんですけど、私は笑いをこらえているからどうしても言えず、「ふっ」て吹き出しちゃって(笑)。それでやり直しになったということがありましたね。私もがんばって平静を保とうとはしたんですけど……。

──内田さんと2人してごまかそうとしたけど、ごまかしきれなかった。

そんな感じです(笑)。たぶん私だけでなく、ほかのキャストさんからもちょっと笑い声が出ちゃってたんじゃないですかね。この作品の現場だからこそ起こることかなって。

「みんな驚くぞ、ウシシシ」

──アニメのオープニング主題歌「PARADOX」は、雨宮さんがご本人名義で歌われています。本編でのカッコいい芝居とは真逆と言っていいくらいのキュートな歌い方ですけど、これはどんな意図で?

雨宮天

氷室として歌ったらキャラソンになっちゃうので、あくまで雨宮天として歌おうと。そのうえで、最初に曲をいただいたときに聴いて感じた「ポップでかわいい曲」という印象をそのまま、自分なりの表現で歌わせていただきました。私の今までの曲にはあまりそういう歌い方をしたものがなかったので、いい機会だしポップに振り切った歌い方に挑戦してみようと。

──今までにないというのは本当にそうですよね。例えばこの「PARADOX」で雨宮さんの歌手活動に興味を持たれた方が、過去のアルバムなどを聴いたらびっくりするんじゃないですか? 過去にはTrySailのメンバーの麻倉ももさんが雨宮さんのことを「いつも絶望の淵で闇を切り裂いている」なんて表現していましたけど(参照:麻倉もも「365×LOVE」インタビュー)。

切り裂いてますもんね(笑)。歌うときって、いただいた曲の主人公になりきりたいっていう気持ちが強いんです。役を演じるときも「このキャラはこういう声で、こういうしゃべり方なんだろうな」って作っていきますけど、それと同じで、楽曲にもそれぞれふさわしい歌い方があって。

──表現者としてその都度100%を出してきた結果でしかないと。「驚かせてやろう」みたいな気持ちはさほどない?

驚いてくれたらうれしいですけど、驚かせるために表現方法を変えるということはないですね。ただ、作ったものが結果的に驚くような作品になった場合、「みんな驚くぞ、ウシシシ」とは思うかもしれません(笑)。

──主題歌を担当する際、キャラ名義の場合とご本人名義の場合と両方あると思いますけど、アプローチはどんなふうに違ってきますか。

雨宮天

例えばキャラソンだったら最初から歌って練習するんじゃなくて、1回キャラの声で歌詞を読んでみるんですよ。「この子だったらこの言葉はこう読むだろうな」って。だから練習の仕方からまったく違いますね。それで「この子、歌ヘタそうだな」と思ったらヘタに歌ってみたり、「この子はビブラート効かせたりしそう」って思ったらそういうふうにやってみたり。イメージでどんどん作っていく感じです。

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