TVアニメ「怪病医ラムネ」特集 ラムネ役・内田雄馬×クロ役・永塚拓馬対談|「つらいときには『怪病医ラムネ』を見てほしい。そこにはラムネ先生がいます」

阿呆トロ先生と会って話したことは「名前の由来」と……

──キャラについてさらに掘り下げます。まずラムネについて、ちょっと傍若無人に見えたり、歯に衣着せぬ言動を浴びせることもある。だけど、実は腕利きの怪病医。息を吹き込むうえで、どんな工夫やこだわりがあったのが教えてください。

内田 ラムネは一見適当そうなキャラで、単純にはしゃいだり、冗談言ったりすることも多いんです。そういうときは感情そのままに冗談を言い、それ以外の意味は特に込めない。だけど、例えば患者に何か言葉をかけることで選択をうながすときには、しゃべっている言葉の裏にそれ以外の意味があったりする。その場合も、あまり意識しすぎずに、話す中で自然に。それが大事だったかなと思います。

──なるほど。

内田雄馬

内田 「誘導してるぞー」というのが表に出てしまうと、押し付けがましくなっちゃうので。それよりは「ラムネ先生っていつも適当だよね」と思われていても、実は話していることは芯を食っているというか、本質を突く説得力はしっかり持とうと思っていました。そのためには、セリフの流れや台本の組み立てを読み込んで、どこが一番大事なのかを見極めるのが大事だったと思います。

──そんな精緻な読み込みの上に作っていったのですね。ラムネは、あまり過去がはっきりとはしないミステリアスなキャラでもあるので、苦労もあったのではないでしょうか。

内田 それはもうこの仕事の常というか……。ラムネの、どうしても患者を治したいという強い思いの背景には、過去の経験が関係しているんじゃないかな?と感じることもありました。だけどそれは僕の妄想の域を出ないので、結果的にはあんまり余計なことは考えずに演じました。勝手に自分で設定を作っちゃうと、そうじゃなかったときに戻れないので、台本にあることと、そこから読み取ることを大事にしました。

──作中で明かされてないことは、あえて考えずに演じていたんですね。

内田 はい。あとは監督からディレクションをいただいて、そこに対して、「なんでそうなったんだろう?」と考える作業ですね。それと自分の中にあるものとのずれを丁寧に正すのが、ラムネをたどるのに一番いい方法だったのかなと。この作品に関してはそう思います。

──まさに、ここ最近マガジンポケットでの連載でも、キャラクターの過去のエピソードが登場したりしていますね。

内田 そうですね。とはいえ、アニメと原作は似て非なるものだと僕は思っていて。もちろん原作を読んで込められた思いを大切にしようと思うのですが、一方で、僕らが作っているのは“アニメーションの「怪病医ラムネ」”なので、原作に引っ張られすぎてもいけない。だから必要なものであれば、監督から先にディレクションをもらって挑むのがいいと思っています。

──なるほど。

内田 あとラムネとクロに関して、ベーシックな情報を作者の阿呆トロ先生からいただいたことがあります。それは細かく具体的な情報というより「だいたいこんな感じの人です」というもの。そこも参考にしながら、ちょっとずつ人物を作っていきました。

──そうだったんですね。先生とは実際に会ってお話しされたのですか?

内田 1話の収録のときに一度だけお会いできたんですよ。見学に来てくださいました。

──どんなお話をされたんですか?

永塚拓馬

永塚 「なんで阿呆トロ先生というお名前にされたのですか?」ってお聞きしました。

内田 そうだったね(笑)。

永塚 先生の答えが、「売れてるマンガ家は、漢字とカタカナの組み合わせと、“あ”で始まる名前が多いからです」って(笑)。

内田 そうそう! 理由が意外で、めちゃめちゃ面白いですね!ってなりました(笑)。

──そんなやり取りが(笑)。続いて、永塚さんがどうクロを作っていったのかお聞かせください。大人のラムネよりもしっかりしていそうに見える、ビジュアルもちょっとクールなキャラですよね。

永塚 クロは飄々としているんですけど、心がないわけではないんです。だから、冷たすぎたり、機械的にはならないようにすごく注意しました。あと、原作ではクロって基本ジト目なんですけど(笑)、アニメでは表情が少し豊かになっていたんです。だから最初の頃は、「ジトーっとした感じの演技でやろうかな?」と思っていたのを、中学生ということもあり、ちょっと若めにシフトチェンジしました。

──クールさを残しつつ、少し中学生らしいキャラになるよう微調整をしていったんですね。

永塚 はい。あとはやっぱりアニメーションで表情に動きがつくので、それに合わせてクロの感情をちょっと多めに作ってみたりしましたね。

「ラムネ先生には、ちょっとだけ強くあたってもいい」

──先程、収録では2人の掛け合いを楽しまれたというお話がありましたが、どんなふうに掛け合いを作っていったのでしょうか。

永塚 クロに関しては、「ラムネ先生にはちょっとだけ強くあたってもいい」とディレクションをいただいていたんです(笑)。だから、普段は飄々として、あんまり感情を表に出さない分、ラムネに対してはけっこう強めに、というのは意識していました。

──逆にそうすることで、ラムネには心を許している感じがしますね。

永塚 そうですね。心を許しているからこそ、そういう強めのツッコミもできるんだろうなと感じました。

──実際に2人で掛け合いをしてみて、いかがでしたか?

アニメ「怪病医ラムネ」より。

永塚 楽しかったです!

内田 ね、楽しかったね!

永塚 ボケとツッコミみたいに、漫才的なところもありましたよね。

内田 確かに性格が全然違うのは明白なので、会話を聞いていて楽しいと思います。

永塚 ラムネも“ツッコミ待ち”みたいなところがありますからね。「これ、クロにつっこんでほしいんだろうな」って(笑)。それも仲がいいからできることですもんね。

──ラムネ先生の、ちょっと女性に惚れっぽいところなど、親しみやすくてかわいらしいですよね。

内田 そうそう(笑)。何も考えていないところと、考えているところの差が激しい人なので。人間ってみんなそうじゃないですか。ものごとを丁寧に、ずっと考え続ける人もいますけど、例えば「おにぎり食べたいな」って思ったときに、「なんでおにぎり食べたいと思ったんだろう?」とか考えないですよね。

永塚 考えないですね(笑)。

内田 そういうもので、人間の行動のすべてに理屈がつけられるわけではない。ラムネも、怪病医として理屈を持って患者に接する分、普段は逆で、衝動的に動く瞬間もある。特にクロとのシーンは、家の中で過ごしていることも多いので、のんびりしたやり取りができるのも楽しかったですね。

左から内田雄馬、永塚拓馬。

永塚 ラムネにちょっと抜けているところがあるからこそ、患者さんも心を開きやすいのかもしれないですよね。紅葉師匠は完璧すぎるから(笑)、師匠の前ではみんな「背筋ピシッ!」ってなっちゃうじゃないですか。

内田 いやあ、怖い人だからね……。

永塚 その分、ラムネは友達感覚で接することができて、なんなら病気が治ったら、一緒にご飯食べに行ったりもできちゃう。これはラムネならではだと思うので、そこも魅力なんだな、と思いますよ。

──紅葉師匠に対してはラムネも背筋を正しますよね。一体、この人からどんな試練を受けてきたんだろう?と気になりますね(笑)。

永塚 過去に何があったんですかね。ラムネ、首輪とかつけられてそうですよね(笑)。

内田 (笑)。簡単な修行ではなさそうだよね……。