阿呆トロによるマンガ「怪病医ラムネ」は、現代人が抱えるストレスや心の闇が表出した“怪病(かいびょう)”専門の医者・ラムネと、その弟子の中学生・クロが活躍するファンタジー。月刊少年シリウス(講談社)で連載が始まり、現在はマガジンポケットにて連載中。奇想天外な“怪病”の数々と、ラムネによる斜め上の解決、そしてラムネとクロの、まるでコントのようなコミカルな師弟関係が魅力だ。
このたびコミックナタリーでは、アニメでラムネを演じる内田雄馬とクロを演じる永塚拓馬の対談を実施。「ながつ」「雄馬さん」と呼び合う2人は、1対1のメインキャラクターとしては初めて共演となる。そんな2人の絶妙にハッピーな掛け合いを楽しんでほしい。
取材・文 / 的場容子 撮影 / ヨシダヤスシ
弱っている人の心に“怪”が入り込み、身体に変化を及ぼす“怪病”を専門とする医者・ラムネを軸に、心に棲み着く怪異を暴くファンタジー。目からマヨネーズが出る怪病、陰茎がちくわ化する怪病、耳が餃子になる怪病、頭からポップコーンが飛び出す怪病……。そんな奇妙な“怪病”を治療する“怪病医”のラムネと、その弟子・クロのコンビが描かれる。
読む前のイメージは……「怪病=妖怪」だった!?
──最初に作品のお話があったとき、どんな印象を受けましたか?
内田雄馬 原作の単行本がすごく明るくポップな装丁だったので、「楽しそうな作品だな」と思いながら読みはじめました。毎回登場するのは悩みを抱える患者たちで、みんな「怪病」という形で悩みが身体に現れている。それを治すのが怪病医であるラムネの仕事です。ラムネによる治療方法も、患者が自分への向き合い方を見直すきっかけを与えるもので、今の自分の立場からも想像し、考えやすいものだったので、身近に感じられて楽しく読ませていただきました。
──「怪病」と聞くと「なんだろう?」と思いますが、実は現代人が抱えがちな悩みに正面から向き合っている作品ですよね。
内田 そうなんです。治す過程で「怪具(かいぐ)」という特別な道具が登場しますが、あくまで間接的なものであり、最終的には患者本人の意思、つまり自分がどうしたいかというのが一番の肝です。ファンタジーではありますが、その部分は僕らが今生きている世界と変わりがないので、そこが重要なテーマだと感じました。人間的な感性をそのまま持ち込んで演じることができたと思います。
永塚拓馬 僕、実は、原作を読む前のイメージでは「怪病」という妖怪が登場して、ラムネが戦って倒し、患者を治していく……みたいな感じかなあ、と思っていました(笑)。
内田 (笑)。「“怪”ってなんやろな?」って思ったんだね。
永塚 そうそう。あと、ラムネは外科医みたいに手術して治していくのかなと想像してたんですよね。そこも違って、患者の内面を治すというのも意外で面白かったです。人の心がテーマなのでシリアスな場面も多いのですが、シリアスになりすぎないように、怪病や怪具のコミカルさで描いている。すごくバランスがとれていて、素晴らしい作品だと思いました。
ずっと2人で言葉を交わすことにワクワクした
──おふたりはこれまで、ほかのアニメなどでも共演されていて、また事務所の先輩・後輩というご関係です。今回、「怪病医ラムネ」でメインキャストとして共演できると聞いたとき、どう感じたのでしょうか。
内田 どう感じたのかねえ。これは聞かせてほしい(笑)。
永塚 これまで共演はあったとはいえ、1対1のメインキャストとして共演する機会はなかったので、お話をいただいたときにすごくうれしかったです。雄馬さんって、自分にとっては事務所でも一番近い先輩なんですよ。
内田 そうだね。
永塚 だから、そんな近しい先輩といつか共演できたらいいなというのは、デビュー当時からずっと思っていたことだったので、実現できたのはすごくうれしかったですね。
内田 確かに、ながつ(内田が呼ぶ永塚の愛称)とのがっつり共演ってあんまりなかったから、僕も楽しみでした。メインで掛け合いをするキャラクター同士だし、基本1話完結のお話だからメインの登場人物は少なくて「僕とクロ」というのが基本だから、ずっと2人で言葉を交わすというのはワクワクしました。
永塚 レギュラーでご一緒するのも1年半ぶりくらいですしね。
──改めて共演してみて、いかがでしたか?
内田 これまで演技の中で言葉を交わすことがあまり多くなかった分、今回のお仕事を通してお互いを知ることが多かったよね。「初回でどんなふうに言葉を投げてくるのか?」とか、そうしたことを間近で感じられたのが新鮮でした。あとは、今のご時世もあって、全体的に掛け合いの芝居というのが減ってきているんですよね。
──昨今、別録りが多いのですね。
永塚 そうなんですよ。
内田 だから、シーンによっては掛け合い相手がその場にいない状態で録ることも多い中で、僕らはクロとラムネとして、ずっといる。収録でも最後までながつとずっと一緒にいられて、掛け合いを大事にしながら録らせてもらえたんです。そこが僕らとしてはすごくありがたく、うれしかったです。
ラムネと雄馬さんの共通点は「鼻歌」、
クロとながつは「大食い」?
──そんなラムネとクロの関係ですが、ラムネは大人、クロは中学生ということで年齢差があります。普段は、大人なのにちょっと適当なラムネを冷静なクロが支え、いざというときはラムネが怪病医として能力を発揮する。そんな2人を演じてみて、おふたり自身のキャラと似ている部分を感じることはありましたか?
永塚 ラムネは鼻歌を歌っていることが多いのですが、雄馬さんもけっこう歌ってることが多いですよね。
内田 あー多いかもね!(笑)
永塚 今日の写真撮影のときもずっと歌っていましたし(笑)、そのへんはちょっと近いかも。
内田 アドリブで「鼻歌を歌ってください」というシーンが多かったんですよ。
──面白い一致ですね(笑)。クロは割と冷静沈着ですが、永塚さんと似たところはありましたか?
永塚 クロは大食いなんですけど、僕も「意外とよく食べるね」って言われることがあります。
内田 ながつってよく食べるの!?
永塚 そうですよ!
内田 それは意外だわ。
永塚 この前、自分のニコニコの番組でペヤングのペタマックスに挑戦したんですよ。
内田 うっわ! あのでかいやつか……。
永塚 そうです。最後はスタッフさんの助けも借りましたけど、「もう入らない!」ってところまでがんばって(笑)、3分の2ぐらいは自分で食べました。
内田 まじ!? それはすごいなー! 細いのに意外に食べるんだ。身体には出ないんだね。
──どこに吸収しているんですか?
永塚 一応、めっちゃ動いているので(笑)。あと常にこの量を食べるわけじゃないから。
内田 食べるときは食べるタイプなんだね(笑)。
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阿呆トロ先生と会って話したことは「名前の由来」と……