新年度、お疲れ気味のあなたへ! メンタルを鋼にしてくれる熱いマンガ「クイーンズ・クオリティ」12の名言

新年度が始まり、もう少しで2カ月を迎える頃。新生活を過ごす中で、少々お疲れ気味の読者もいるかもしれない。そんな方々にオススメしたいマンガが「クイーンズ・クオリティ」。最富キョウスケが2016年にベツコミ(小学館)で連載を開始し、2025年2月に約9年(前身となる作品「QQスイーパー」から数えると約11年)の連載に幕を閉じた。少女マンガ誌らしい、心ときめく恋愛描写はもちろん登場するが、その物語は骨太。コミックナタリーでは「クイーンズ・クオリティ」の特集を通して“メンタルが整う”作中の名言を紹介していく。

文 / 岸野恵加

人間の心理を深く描き出す“掃除屋”ファンタジー「クイーンズ・クオリティ」

「クイーンズ・クオリティ」の軸となる堀北家は、掃除屋を家業としている。
「玄武」「白虎」「青龍」「朱雀」と所属が分かれる掃除屋は、部屋を整える掃除もお手のものだが、彼らが取り除くのは、人々の心の中にある悪意や穢れだ。心の奥底にまで入り込んで、精神世界につながる扉を守り、汚れをはらう。

「クイーンズ・クオリティ」カット

主人公のふみは身寄りがなく、堀北家に住み込みで働く掃除屋見習いの女子高生(そこまでの経緯については前作「QQスイーパー」全3巻に詳しいので、先に読んでおくとさらに理解が深まるだろう)。彼女は強大な精神支配力を持つ“女王クイーン”の力を秘めており、文の力が覚醒していくにつれて、登場人物たちの運命が大きく変化していく。

「クイーンズ・クオリティ」より、“女王”の力を持つ主人公の文。

「クイーンズ・クオリティ」より、“女王”の力を持つ主人公の文。

細部までしっかりと描き込まれていながらもなめらかな筆致は爽快な読み心地を生み出し、ダークで壮大な世界観や勢いのあるアクションシーンはケレン味たっぷり。少女マンガのカテゴリーに属しながらも、枠にとどまらない表現は男女問わず幅広い世代から支持されている。

「クイーンズ・クオリティ」より、文と玖太郎。

「クイーンズ・クオリティ」より、文と玖太郎。

文と、彼女の“つれあい”である玖太郎の恋愛を軸にしたストーリーももちろん展開するのだが、人間の心理を巧みに深掘りしているところが「クイーンズ・クオリティ」の最大の魅力だろう。何度も打ちのめされそうになっても、文や玖太郎は悪意に飲まれず、自身を鼓舞して成長し続けていく。読了後はきっと、世界の見え方や自分の気持ちの置き方が変わっているはずだ。次項では作中に登場する珠玉の言葉たちを、選り抜いてお届けする。

登場キャラクター

  • 西岡文

    西岡文

    高校2年生。幼少期の記憶を失っている。玉の輿に乗ることが人生の目標。“女王”の力を持つがゆえに過酷な運命と向き合うことになるが、いつもポジティブに振る舞う。

  • 堀北玖太郎

    堀北玖太郎

    高校2年生。掃除屋としての腕前は確かなもの。人とコミュニケーションを取ることが苦手な“コミュ糞”。文に思いを寄せつつも、ある約束から本人に伝えることができず葛藤する。

  • 北原貴也

    北原貴也

    玄武門当主補佐で、精神科医。匂いでその人の性格や精神状態を察することができる。暗示術(特殊な催眠術)の達人。

  • 堀北ミヤコ

    堀北ミヤコ

    玖太郎の祖母で掃除屋玄武門の先代当主。いつも優しく文と玖太郎を見守りつつ、必要なときには毅然とした態度で威厳を示す。精神の世界“ウチガワ”ではフクロウの姿になる。

  • 喜田川鉱一

    喜田川鉱一

    文と玖太郎が通う高校の理事長であり、精神科医。玖太郎の姉・睦の夫。睦を溺愛している。文の資質を見抜き、掃除屋にスカウトした。

  • 四方アタル

    四方アタル

    ムシを使って人を操る“ムシ遣い”。“ウチガワ”では外見を女性に変える。孤児院で育ち、過去のつらい経験からムシ遣いとなった。

  • ツバサ

    ツバサ

    仲間同士が潰し合う朱雀門の生き残り。完全に気配を消す能力を持っている。身長202cmと大柄な体を持つ。文の母親の過去をよく知る存在。

  • 西嶽楓

    西嶽楓

    物語の後半から登場する、文の母。壮絶な過去を持ち、幼いツバサと一時期ともに暮らしていた。

マジでメンタルが整う「クイーンズ・クオリティ」12の名言

1 何があっても絶望だけはしないと決めているのです ──文(2巻6話より)

常にパワフルな文を象徴するようなひと言。2巻で描かれたこの言葉は、最終回に至るまで、彼女の行動原理を貫く考え方となる。文は「いまは何も持たぬちっぽけな私ですが 今の私の手の中にあるものは かき集めた希望と ただ必死に生き延びる術と自分への誇りと あなた(玖太郎)だけです」と、今の自分が持っているものを冷静に数えて、それを自信に換える。「もうおしまいだ」と目の前が真っ暗になってしまったときに思い出したいひと言だ。

「クイーンズ・クオリティ」2巻6話より。

「クイーンズ・クオリティ」2巻6話より。

2 人間なんてみんな気持ち悪いんだ
悪意とか 制御できない黒い部分とか誰にでもある
──玖太郎(1巻5話より)

攻撃的な性質の“黒の女王”が目覚めてしまい、自己嫌悪に陥る文に、玖太郎が優しく掛けた言葉。落ち込む文を玖太郎は「こわくない おまえは普通の女の子だ」と優しく抱きしめ、「ひとに言えないどうしようもない 今にもあふれて暴走しそうな感情とか 誰にでもある 俺にもある」と寄り添う。この直前のシーンで、玖太郎が文の髪を櫛でとかしながら口にする「自己嫌悪がひどい時は なるたけ丁寧に自分の身体を整えるといい」というアドバイスも、併せて心に刻んでおきたい。

「クイーンズ・クオリティ」1巻5話より。

「クイーンズ・クオリティ」1巻5話より。

3 戦う中で敵の姿を知れ それ以上に己を知れ
自分自身の内側ほど不可解で 危ういものは無い
──タカヤ(1巻4話より)

文の身が危険にさらされ、堀北家に緊迫した空気が流れる中、タカヤは文と玖太郎へ「売られた喧嘩は買ってやれ」「逃げるばかりじゃ埒があかんよ」と毅然とした口調で伝える。「修羅場の中でこそ、自分について多くのことを知ることができる」と発想の転換を助けてくれるようなひと言は、困難に直面した際に背中を押してくれるだろう。

「クイーンズ・クオリティ」1巻4話より。

「クイーンズ・クオリティ」1巻4話より。

4 あなただけではないの
誰でも大概 自分のことの多くをわからずにいるものよ
──ミヤコ(3巻13話より)

パン屋へ向かう道中、「自分のことなのにわからないことばかり」と不安を吐露する文に、ミヤコは優しい言葉をかける。なぜかうまくやれなかったり、なぜか相手を傷つけてしまったり……そんな衝動の理由はだいたい自分の中に埋もれているが、そこに向き合うのは恐ろしいこと。ミヤコはそう前置きしつつ、「自分のいちばん気味の悪い部分からも目をそらさないでほしい」と文を鼓舞する。ミヤコのような人生の大先輩たちが深みのある言葉を届けてくれるところも、「クイクオ」の外せない魅力である。

「クイーンズ・クオリティ」3巻13話より。
「クイーンズ・クオリティ」3巻13話より。

「クイーンズ・クオリティ」3巻13話より。

5 勉強することは「集中」の訓練のひとつだと思え ──玖太郎(4巻16話より)

期末テストを前に、文へ勉強を教える成績優秀な玖太郎。彼は、精神をコントロールする「集中」とは、掃除屋にとって最も重要でテクニックだと語る。頭が真っ白になるときは、頭の動きが止まっているのではなく、逆に考えすぎてメモリーオーバーになっている状態。そうした勝手な心の動きを防ぐため、「自分が決めた一つのことだけ考える。それ以外の思考に気づいたらかたづける」という方法を、玖太郎は文へ伝授する。余計な思考にとらわれすぎたり、頭がいっぱいでイライラしたりする人は、ぜひ身につけたいテクニックだ。

「クイーンズ・クオリティ」4巻16話より。
「クイーンズ・クオリティ」4巻16話より。

「クイーンズ・クオリティ」4巻16話より。

6 「荒波の中ではただふてぶてしくあれ」
私を鍛えた先生の言葉です
──文(6巻28話より)

予期せぬトラブルに苛立ちを抑えきれない玖太郎へ、文は微笑みながら「ここは開き直って この状況を楽しんでしまいませんか」と提案する。例え馬鹿にされていると感じても卑屈にならず、不愉快な運命を上から笑ってやる。肝の据わった文らしい考え方に、玖太郎の心も動く。

「クイーンズ・クオリティ」6巻28話より。

「クイーンズ・クオリティ」6巻28話より。

7 私は私の幸せを一番大事にします ──文(9巻42話より)

女王の力を受け取るための“代償”として、玖太郎の初恋の人である“ふゆちゃん”と自分自身、どちらかを残してどちらかをこの世から消す……そんな究極の選択を迫られた文。ふゆちゃんを残すことが玖太郎のためだと一時は思い悩むも、文は自分の幸せを大切にすることを選択する。第7話には「私は私のものだ ほかの誰にも支配されない」というモノローグが登場するが、このように「クイクオ」の作中では、“自分の意志で決めること”の大切さが繰り返し描かれる。

「クイーンズ・クオリティ」9巻42話より。

「クイーンズ・クオリティ」9巻42話より。

8 まだ生きられる 情けなくても 生きようぜ ──鉱一(12巻57話より)

ケンカ別れしてしまったかつての友人と対峙する鉱一。敵対関係となってしまった相手に過去の振る舞いを謝りつつ、「俺もおまえも臆病者だ」「それでもさ碧唯 臆病者の俺たちは まだ本当に死んだわけじゃないんだよ」と温かく寄り添う。年月を経たからこそ湧き出てきた鉱一の言葉が、読者の心に響く。

「クイーンズ・クオリティ」12巻57話より。

「クイーンズ・クオリティ」12巻57話より。

9 いろんな事を白黒じゃなく できれば
「そういうものなんだ」って置いておけたらいいなと思う
──玖太郎(13巻57話より)

「おまえの心間 隙ありすぎだろ」と自身の心の内側の世界から感じられる余裕について、蛇(=謎多き精神生命体)に問われた玖太郎。少し考えたあと、彼は「いろんな事をあんまりすぐにジャッジしないで一旦おいておく みたいな思考のクセがあるからかな」と自己分析する。つらい感情も一度置いておいて、落ち着いた頃に再度触れると、別の見え方ができることもある。「結論を出さねば」とつい急いてしまうときなど、日常のあらゆるシーンでぜひ取り入れたい思考法だ。

「クイーンズ・クオリティ」13巻57話より。
「クイーンズ・クオリティ」13巻57話より。

「クイーンズ・クオリティ」13巻57話より。

10 ひとの心は 苦しみや不幸に「理由」を求める
冷静な意志をもって 何度でも自分自身を支配しろ
──タカヤ(14巻62話より)

宿敵・朱雀門当主と対面し、その強大さに萎縮してしまう文と玖太郎。タカヤはそんな2人にこの言葉を授け、気持ちを切り替えさせる。人はつい苦しみや不幸に理由を求めてしまい、「自分が弱いせいだ」と自己嫌悪になりがち。強くなりたいと望む者は、生涯のなかで何度もその流れに飲まれてしまうが、タカヤは「何度でもその罠から這い出て、おまえを乗っ取ろうとする弱さを黙らせろ」と、文と玖太郎へ力強く説く。

「クイーンズ・クオリティ」14巻62話より。
「クイーンズ・クオリティ」14巻62話より。

「クイーンズ・クオリティ」14巻62話より。

11 かんたんなやり方でいいから
いつも決めたとおり丁寧にやれ って
──ツバサ(20巻86話より)

文の母・楓に教えてもらった目玉焼きの焼き方を、文の前で実演するツバサ。子供の頃に殺し屋として生きていたツバサは、楓から親子のようにさまざまなことを学んだ。簡単なことでも1つのことを何回も何回も繰り返し、丁寧に積み重ねていくことが、生きる意味になる。「どんなクズでもそれだけで生きてる意味あるんだって」と楓に教えてもらったことを語るツバサの表情はとても晴れやかで、彼の中に息づく楓の思いが感動を誘う。

「クイーンズ・クオリティ」20巻86話より。
「クイーンズ・クオリティ」20巻86話より。

「クイーンズ・クオリティ」20巻86話より。

12 食べることは生きることの中心で
自分と世界をつなぐことだ とても尊いことなんだ
──楓(20巻89話より)

お箸やお茶碗は正しく持つ、肘をつかずにこぼさず食べる、犬食いはNG……食事の作法を丁寧に指導してくる楓に、ツバサはなぜこんな面倒なことが必要なのかと問う。「まともに生きたい」という翼の願いを叶えるため、楓は自分の知っている“まともなこと”のすべてを、ツバサへ教えようとしていたのだった。どんなに打ちひしがれても、ごはんを食べてさえいれば、少しずつ前に進んでいく。そんな勇気をもらえる言葉だ。

「クイーンズ・クオリティ」20巻89話より。
「クイーンズ・クオリティ」20巻89話より。

「クイーンズ・クオリティ」20巻89話より。

番外編 こんな場面も見どころ! キレ味が魅力のギャグシーンも紹介

よそよそしい玖太郎の本音は……?

2人で買い物に行くことを命じられた文は、自身によそよそしい態度を取る玖太郎との弾まない会話に気まずさを覚える。その緊張感は読者である私たちにも伝わってくるものの、玖太郎が必死に明かす本音には、思わず笑いが溢れてしまう。

「クイーンズ・クオリティ」20巻89話より。

「クイーンズ・クオリティ」1巻3話より。

クライマックスに投じられる緊張と緩和の名シーン

作中において“絶望”の具現者であり、物語のラスボス的存在でもある柳。そんな柳から発せられた「絶望の宴の支度は済んだ」という言葉にさらに緊張感が増すかと思いきや……柳が姿を消した瞬間、そのセリフを思い切りイジる文たち。「笑っていいんだ!」と、クライマックスのシリアスなシーンの中でも、お笑いの理論で大事な“緊張と緩和”を読者に味わわせてくれる。

「クイーンズ・クオリティ」24巻105話より。
「クイーンズ・クオリティ」24巻105話より。
「クイーンズ・クオリティ」24巻105話より。

「クイーンズ・クオリティ」24巻105話より。

「クイーンズ・クオリティ」のセリフに込めた思い 作者・最富キョウスケからメッセージ

クイーンズ・クオリティは、漫画ならではの物語と世界観を思いっきり楽しんでいただきつつ、読み終わった後ちょっとした「お土産」を現実に持ち帰ってもらえたらいいな…と思いながら描きました。
それはお掃除の技だったり考え方のコツだったりですが、「言葉」についてもそうです。全てのセリフを嘘のないように大切に選びました。
どこかに一つでも、気に入った言葉を見つけてもらえたら作者としてこれ以上嬉しいことはありません。

「クイーンズ・クオリティ」完結記念!最富キョウスケ作品の無料キャンペーン

「クイーンズ・クオリティ」の完結を記念し、小学館の女性向けマンガのWebサイト・フラコミlike!と主な電子書店では、最富キョウスケ作品の無料試し読みの増量キャンペーンを実施。5月26日から6月8日23時59分までの期間、「電撃デイジー」1~5巻、「QQスイーパー」全3巻、「クイーンズ・クオリティ」1~8巻を無料で読むことができる。気になる作品がある人はこの機会にチェックしてみよう。

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きっと元気になれる! 「クイーンズ・クオリティ」のキャラクターたちに会いに行こう!

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プロフィール

最富キョウスケ(モトミキョウスケ)

8月1日生まれ。2002年に「へたくそキューピッド」で小学館の第8回まんが学園ブロンズ賞を受賞し、マンガ家デビュー。主な作品に「男前!ビーズ倶楽部」「ビーストマスター」「電撃デイジー」など。2014年から2015年にかけてベツコミ(小学館)で「QQスイーパー」を連載。その続編となる「クイーンズ・クオリティ」が、同じくベツコミで2016年から2025年にかけて発表された。