アニメ「おおきく振りかぶって」|代永翼×中村悠一対談 10年経ってなお輝き続ける高校球児たちの魅力と 「おお振り」に込める強い思い

2007年4月にアニメ第1期が放送されてから10年。「おおきく振りかぶって」のBlu-ray BOXが1月24日にリリースされる。主人公の三橋廉と、彼とバッテリーを組む捕手・阿部隆也らが所属する公立高校の新設野球部を舞台に、甲子園優勝を目指す高校球児たちの成長を描く本作は、今なお多くのファンに愛される人気作だ。

コミックナタリーでは、Blu-ray BOX発売を記念し、三橋役の代永翼、阿部役の中村悠一による対談を実施。作品の魅力や当時の出来事を振り返りながら、「大事な作品」と口を揃えて語る2人の「おお振り」に対する強い思いにも迫った。

取材・文 / 増田桃子 撮影 / 島袋智子

また多くの人に「おお振り」を観ていただけるのがうれしい(代永)

──まず、Blu-ray BOX発売についての感想を聞かせてください。

三橋廉役の代永翼。

代永翼 お話を聞いたときは驚きました。昨年の10月に開催された「MBSアニメフェス2017」のパンフレット用に、中村さんと一緒に「おお振り」の取材を受けたんですけど、その時点ではまだBOXが出ることを知らなかったんです。「(BOXが)出たらいいですねー」なんて話をしていたら、その直後に「出ます!」と言われて。

中村悠一 そうだったね。「おお振り」という作品について代永くんと話をしたのは、2期が終わってからだから7年ぶりぐらいになるのかな。

代永 発表したら、皆さんにすごく喜んでいただけて。

中村 この10年で、アニメの技術や質に大幅な変化があったわけではないじゃないですか。僕も小さい頃に観ていたアニメのBOXを買うことはありますけど、それはVHSのデジタルリマスター版として、DVDやBlu-rayになったものなので。そういう意味で、大きな変化をしているわけではない作品のBOXを手にとってくれる方や、発売を喜んでくれる方がいるのは、本当にありがたいですね()。

代永 また多くの人に「おお振り」を観ていただけるのがうれしいです。子供の頃に観ていた人たちが大人になって、当時手に入れられなかったものを自分のお金で買うことができる喜びとか、その感動はすごくあるんじゃないかな。子供の頃にハマっていた作品を、大人になってから改めて観られるというのは素敵なことですし、僕らにとっても非常にありがたいことだなと思いますね。いつまでも「おお振り」が終わらずに続いてくれるのはうれしい。

阿部隆也役の中村悠一。

中村 MBSアニメフェスでは、1期のダイジェスト映像で7年ぶりに生アフレコで阿部を演じさせてもらって。すごく短いダイジェストでしたけど(笑)。ちょうど、10周年を記念してアニメを無料配信しているタイミングでもあったので、改めて作品も見返しまして。やっぱりすごく面白いし、とても丁寧に作られた作品なんだなというのを感じました。

代永 他のアニメのステージにも「おお振り」のキャストさんが出演していらして、そこで「懐かしいな」って声をかけてもらえたのはうれしかったです。泉役の福山潤さんには「俺、まだ泉できる!?」とか言われて(笑)。

中村 福山さんのほかにも、会場には西広役の(木村)良平と、花井役の谷山(紀章)さんもいたんですけど、3人とも僕らのステージを楽屋で観ていてくれてたみたいで、「やっぱりおもしれーな」って言ってくれて。当時から、出演者全員が「面白いよね」と言いながら収録をしていたなと思い出しました。

──久しぶりに「おお振り」の世界に触れてどう感じましたか。

代永 気が付けば、放送開始からもう10年なんだなと。

中村 10年って長いようですけど、僕らとしては「もう10年経ったんですか」っていう感じ。10代から20代になる人たちの10年間に比べれば時間の感じ方が違うというか、僕らは社会人になってからの10年なので、そんなに変わってないですよね。まあ、こいつは結婚とかしてますけど。

代永 ははは、ちょっと僻みが入ってきちゃったよ(笑)。まあ10年経ってますけど原作は続いてますし、甲子園の時期に再放送があったりだとか、終わっているようで終わってない感覚ですね。僕らは1年経てば普通にひとつ歳を取りますけど、この子たちはゆっくりゆっくり歳を重ねていくので。

※本商品は第1期をHDアップコンバートにてリマスターし、第2期と合わせたシリーズ全話を1BOXに収録したコンプリート版となる。↑戻る

原作を読んで、素直に「野球って面白いな」と思った(中村)

──では10年前、初めて「おお振り」に出会い、ご自身のキャラクターを演じることになった当時の思い出を聞かせてください。

代永が演じる三橋廉。努力家で野球に対する強い情熱を持つが、中学時代に他の野球部メンバーから無視された経験により自分に自信が持てずにいる。

代永 まず三橋というキャラクター自体が、今までのアニメや野球マンガの中では珍しい存在ですよね。この主人公がどうやって話を盛り上げていくのかなと。毎日ビクビクして、でも野球が大好きで、野球をやるにはチームを組まなきゃいけないのに周りとコミュニケーションをとれなくて。でもピッチャーとして大事な、芯の強いところを持ってる。三橋を演じながらも、この子がどういうふうに成長していくのかを見守っている感覚もありました。阿部くんがハラハラする気持ちもよくわかるなと(笑)。イライラする部分もあると思うんですけど、そこが彼の持ち味だったり、人を惹き付けるところなんだろうな。

中村 僕は2次オーディションのときに初めて原作を読んだんです。1次オーディションは資料だけ渡されて、事務所で録ったので。原作を読んで、最初は困惑しましたね。代永くんの言う通り、今まで見てきた野球マンガじゃないなと。まずモノローグやセリフが多い。実際、プロ野球選手とかは試合中にああいった駆け引きをしているんでしょうけど、僕は野球にも詳しくないし、普通の人はそこまで考えずに野球を見ていることが多いじゃないですか。「おお振り」を読んで、試合中はこんな駆け引きや心理戦をしながら、1球ずつ投げているんだと知って、素直に「野球って面白いな」と思いました。

代永 ひぐち先生が精神的な部分をすごく丁寧に描いてくれているのも、他の野球マンガとは違う部分ですよね。キャッチャーの阿部くんが率先して考えて分析して、作戦を立てて回していくのもすごく新鮮でした。また三橋と阿部くんの関係も独特で。意見が合っているのかと思ったら合ってなかったり、ちぐはぐなやりとりがあったり、それを支えるチームメイトがいたり。もちろん高校球児ががんばって甲子園を目指して、新設の野球部が優勝校を破っていくっていうドラマも楽しい。

中村が演じる阿部隆也。中学生時代はシニアの野球部に所属していた策略家で頭脳派なキャッチャー。高校で三橋とバッテリーを組むことになる。

中村 放送当時にはわかりませんでしたが、その後いくつか作品をやらせていただいて今の経験値で考えると、「おお振り」をアニメにして面白く魅せるのはとてつもなく難しいことなのかもしれないなと思うんです。モノローグやセリフが多いと、アニメはどうしてもテンポが悪くなるんですよね。それを演出やシナリオの面白さで飽きさせない。阿部の止め絵で僕がずっと喋っているだけのシーンも結構多くて、大丈夫なのかなと思ったけど、アニメを観ると全然気にならない。

代永 阿部くんは特にセリフ多いですからね。台本もすごかったし。

中村 Aパートずっとモノローグだな……みたいなのもあるわけですよ(笑)。でもそれでも時間を忘れて観ていられるというのは、やっぱり作り方が上手いんだなと思います。いろんな要素がうまく噛み合って作品できているんだなと。

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  • 全38話
    (第1期:1話~25話、第2期:1話~13話)
特典DISC収録内容
  • DJCD(1枚)
  • 「おおきく振りかぶって」「おおきく振りかぶって~夏の大会編~」オリジナルサウンドトラック(2枚)
完全生産限定版特典
  • キャラクターデザイン・吉田隆彦描き下ろしアニメ版権ジャケット
  • ブックレット
  • サウンドトラックCD
  • 新録DJCD(代永翼、中村悠一、谷山紀章出演)
映像特典
  • ノンテロップOP&ED集
  • 1期:第26話「基本のキホン」
  • 2期:第12.5話「目標」
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県立西浦高校野球部は秋季県大会へ挑むが、エースの三橋が投球フォームの改造を焦ったツケで本来のパフォーマンスを発揮できずに敗退。三橋のスランプ脱出の目処が立たないまま、中間テストと自主練を経て練習再開! メントレでアップデートした西浦は4市大会へ挑むぞ!

代永翼(ヨナガツバサ)
神奈川県出身、1月15日生まれ。賢プロダクション所属。主な出演作は「Free!」(葉月渚役)、「弱虫ペダル」(真波山岳役)、「黄昏乙女×アムネジア」(新谷貞一役)など。
中村悠一(ナカムラユウイチ)
香川県出身、2月20日生まれ。シグマ・セブン所属。主な出演作は「CLANNAD」シリーズ(岡崎朋也役)、「機動戦士ガンダム00」シリーズ(グラハム・エーカー役)、「おそ松さん」(松野カラ松役)など。