当時は三橋のことがまったく理解ができなかった(中村)
──お互いのキャラクターについてはどんな印象でしょうか。
代永 阿部くんは……三橋の中ではいまだに怖い人なんじゃないですかね(笑)。絶対的に逆らえない存在。でも、自分をわかってくれる人。三橋にとっては、今まで一緒にバッテリーを組んできたキャッチャーとは違って自分を活かしてくれる、自分の意見を聞いてくれる初めての人だったと思うので。「本当のエースにしてやる」って言われたことは、この先、話が進んでもずっと三橋の中に残っているし。そういう意味では、すごく感謝していると思います。三橋がその気持ちを素直に阿部くんに伝えられればいいんですけど、言葉が出てこない。うまく気持ちを伝えられるようになってくれたらいいな、と思ってますけどね。まあ、まだ高校1年生なので、いろいろ積み重ねていけば、よきバッテリーになるんじゃないかなと。
中村 三橋かあ……。うーん、まあ当時はまったく理解ができなかったですけど……(笑)。
代永 ですよね(笑)。
中村 でも10年経って改めて作品に触れ直して、年を経て観てみると、案外許容できるようになりましたね。三橋の思うこととかやりたいこととも、わからなくはないかなと。阿部自身も、完成度高い人間ぶってますけど、まだ子供だし、他人を受け入れる余裕はなくて。自分の器というか、自分の形の中に入るか入らないかのジャッジをずっとしているわけだから、きっとおいおい変わっていくでしょう。
代永 三橋もだけど、阿部くんがどう変わっていくのかなっていう楽しみもありますよね。怪我をして、三橋との約束を守れなかったときの表情なんか見ると、繊細な部分もあるんだなと思うし。中学時代にバッテリーを組んでいた榛名(元希)と信頼関係が築けない、いわゆる“榛名事件”があって、いつピッチャーに裏切られるかわからないっていうのを経験しているから、慎重になっている部分もあるのかな。
アフレコでは、男子校みたいなノリの話ばっかりしてました(代永)
──当時のアフレコで思い出に残っていることがあれば教えてください。
代永 ずーっと田島役の下野(紘)さんがいじられてましたね(笑)。だいたい下野さんか僕がいじられるんですけど、僕はまだ新人でうまく返しができなかったり、どうしたらいいかわからなかったりしたので、そこを下野さんが応じてくれて……。下野さんが犠牲になってくれていたというか(笑)。
中村 あいつ、ボーッとしてるんですよ。
代永 (笑)。下野さん、自分の出番のときにマイクの前に出てこないことが多くて。「田島の声がしないな」と思ったら、下野さんが後からやってきて。
中村 「お前ー!」って。
代永 あとは、お母さん軍団を演じてる皆さんが「うちの息子自慢」みたいなことをやったりとか(笑)。あとはメインキャストでは女性がモモカン役の早水(リサ)さんと篠岡役の福圓(美里)さんぐらいしかいなかったので、男子校みたいなノリの話ばっかりしてました。「モモカン、乳でけーな」とか(笑)。
中村 まあ、でも真面目に仕事してましたよ。
代永 それはもちろん(笑)。野球のこともかなり勉強しましたよね。全員が全員、野球に詳しいわけじゃないので、詳しい人に相談したりとか。
中村 僕は全然野球がわからなかったので、野球をやる人や中継を観る人たちによく話を聞いてました。
代永 阿部くんは野球についてのセリフも多かったですしね。「ナイスピッチー」とか、「あざーす」とか「しゃーす」みたいな言い方も、実際の高校球児がどういう言い方をするんだろう、言葉として正解なのか、みたいな話もよくしてました。
中村 応援の掛け声を録るときに、今ベンチに誰がいるかは台本には明記されてないんですよね。画面に写っているメンバーはわかるんですけど、それ以外は誰がいるんだ?ってなったときに、今打っているのが誰で塁に出ているのが誰で、ネクスト(バッターズサークル)に入っているのがこの人だから、ここにいるのは誰々だなとか、役者同士で相談しながら演じていました。
──水島(努)監督から指示をもらうというよりは、キャストさんたちが率先して?
代永 そうですね、やっぱり第一声を発するのは僕らなので。まずは自分たちの思うようにテストでやってみて、監督に確認することが多かったです。水島監督は野球をやってきた方なので。
中村 「おお振り」はかなり原作に忠実に作られてますが、尺の問題で原作のシーンをカットしたとき、そのせいでつながりがおかしくなってないか現場で判断したり。スポーツアニメにはよくあることなんですけど、昔やったサッカーのアニメでも、現場にサッカーが好きな人がいて「ここでパス出すって、絶対ないんですけど」って現場で揉めたりして。観ている人がそこまでの厳密さを求めているかはおいといて、やっぱり作り手としては、野球好きな人が観たときに本当の野球と同じように楽しんでもらえるようにしたい、と思ってました。
ほぼ素人だったからこそ、三橋の心情に寄り添えた(代永)
──三橋も阿部も、演じるのは難しかったのではないかと思うのですが、キャラ作りには苦労されたのでは。
代永 そうですね……。三橋は擬音も多いし、言葉を変なところで区切ってしゃべったりするし、そのくせ心の中ではすごくよくしゃべる子だったので、モノローグとセリフの使い分けは大変でした。当時デビューしたばかりで、技術もなかったですし。でも、むしろそれがよかったんじゃないかなと思うこともあって。高校で新設の野球部に入って、新しい仲間とスタートする彼と心境的にはかなりリンクしてたんじゃないかなと。ほぼ素人だったからこそ、三橋の心情に寄り添えたというか、三橋として存在できた部分はあったのかなと思います。新しい環境に対する緊張だったり、仲間たちとどうコミュニケーションをとっていったらいいのだろうかっていう悩みも重なっていたし、とにかくがむしゃらにがんばってましたね。今振り返ると、自分でもよくこの役をできたなって思います。
中村 三橋はしゃべり方や動きも、ほかのキャラクターより個性が強いので、技術でカバーするしかない部分もあったと思うけど、三橋のすぐテンパるところや周りが見えなくなるところ、キョドるところって、代永が新人だったからこそキャラとリンクしてやれる部分だったと思いますよ。
代永 オーディションのときから、ひぐち先生がすごくこだわって役を1人ひとり選んでいただいていたっていうのもあって。このキャラクターを活かすも殺すも自分次第なんだと。ひぐち先生に選んでもらえて、感謝の気持ちはすごく大きいですが、「おお振り」という作品の大きさがすごく肩にのしかかってもいました。やるからには絶対に失敗できないって。でも観てくれた人に「すごく面白かったです」とたくさん言ってもらえて、がんばってよかったなって思いました。
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アフレコ現場を殺し合いの場だと思っていた(中村)
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COMPLETE Blu-ray Disc BOX」 - 2018年1月24日発売 / アニプレックス
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- 新録DJCD(代永翼、中村悠一、谷山紀章出演)
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- ノンテロップOP&ED集
- 1期:第26話「基本のキホン」
- 2期:第12.5話「目標」
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- 発売中 / 講談社
県立西浦高校野球部は秋季県大会へ挑むが、エースの三橋が投球フォームの改造を焦ったツケで本来のパフォーマンスを発揮できずに敗退。三橋のスランプ脱出の目処が立たないまま、中間テストと自主練を経て練習再開! メントレでアップデートした西浦は4市大会へ挑むぞ!
- 代永翼(ヨナガツバサ)
- 神奈川県出身、1月15日生まれ。賢プロダクション所属。主な出演作は「Free!」(葉月渚役)、「弱虫ペダル」(真波山岳役)、「黄昏乙女×アムネジア」(新谷貞一役)など。
- 中村悠一(ナカムラユウイチ)
- 香川県出身、2月20日生まれ。シグマ・セブン所属。主な出演作は「CLANNAD」シリーズ(岡崎朋也役)、「機動戦士ガンダム00」シリーズ(グラハム・エーカー役)、「おそ松さん」(松野カラ松役)など。