そのままアニメ化する必要はないですよ
──「ノー・ガンズ・ライフ」をアニメ化するにあたって、カラスマさんはどの程度作品に関わっているんですか?
カラスマ もうほぼお任せという感じですね。
伊藤 最初は「この話をそのままアニメ化する必要はないですよ」っておっしゃっていたじゃないですか。
カラスマ 言ってましたね(笑)。「処理屋の十三がいろんないざこざを解決する」っていう枠組みさえあれば、あとはけっこう自由にできる作品なんじゃないかと思っていたんで。
伊藤 ただ、これだけしっかりしている原作があるのに、それを無視してっていうのは原作へのリスペクトがないですからね。今後それこそアニメが「寅さん」みたいに長く続いていくようなことになれば、オリジナルのエピソードをやってもとは思っています。
──本日のインタビュー時点ではアニメは第3話まで放送済みですが、実際にアニメを観てみてカラスマさんはいかがでしたか?
カラスマ 僕が描き込んでしまうタイプということもありますが、原作より情報が整理されているのでマンガ版を読むのがしんどいなって思った人にもぜひ観てほしいですね。連続した動きや、音楽や声優さんの演技みたいな、原作にはない要素もありますし。今日のインタビュー前に第8話の編集作業を見せてもらったんですけど、「十三の背中に格納されているメカってこうやって出てくるんだ」って、作者なのに先ほどようやくわかりました(笑)。原作ではごまかして描いていた部分なので。
伊藤 個人的には「ドラえもん」の四次元ポケットみたいに、どこからともなく出てくる感じにしてもいいかなと思っていたんですけどね(笑)。あのあたりのギミックはCGのリソースを割いている部分なんですよ。
カラスマ あのシーンはアニメならではだと思うので、ぜひ観てほしいですね。あとアームド斎の金ピカ具合なんかも原作ではわからない部分なので注目してもらえると。
僕だけが「十三は諏訪部さんじゃないんじゃ?」と言っていた
──声優の演技という部分では、実際にキャラの声を聞いてみたときの印象はいかがでしたか。
カラスマ 皆さんイメージ通りで最高でしたね。
伊藤 十三役の諏訪部(順一)さんは、もともと先生がイメージしていた声だとお聞きしていたので。
カラスマ そうですね。キャスティングについても基本的にはお任せだったんですが、「十三は諏訪部さんにしてくれ」と延々と言っていましたから(笑)。
伊藤 これは諏訪部さんご自身にも後でお伝えしたことなんですけど、僕だけが「十三は諏訪部さんじゃないんじゃないか」と言っていたんですよね。
──えっ、どうしてですか?
伊藤 諏訪部さんって声はもちろん、ご自身の佇まいもカッコいいじゃないですか。僕の中ではストレートにカッコいい人を十三役にすることに抵抗があったというか、そこまでカッコよくない人がやせ我慢をしたときに出てくるカッコよさを見せたほうがいいんじゃないかと思っていたんですよね。もちろん諏訪部さんの声がイメージと違うということではないので、決まったあとには本人に「ごめんなさい」って伝えましたけど(笑)。
──今回の連載で諏訪部さんにインタビューした際には、監督から「十三の『虚無感』を意識して演じてほしい」と言われたとおっしゃっていました(参照:アニメ「ノー・ガンズ・ライフ」特集 諏訪部順一×山下大輝対談)。
伊藤 読みましたよ。最初は僕の語彙の中にそんなカッコいい単語あるかなって思っちゃいました(笑)。僕がお伝えしたのは例えばあるセリフをしゃべってもらうときに「もっと先の展開で描かれているこの感情で芝居をしてください」ということですね。
カラスマ どういうことですか?
伊藤 そのセリフをしゃべっているときの気持ちが必ずしも本心ではないというか。例えば「表では希望を持てる会話をしているんだけど、話が進んでいくとそのセリフを言った際には諦めの気持ちが隠れていたというのがわかるから、この部分は醒めている感じでしゃべってほしい」みたいなことですね。そういう話をしている中で諏訪部さんが「虚無感」というワードを感じ取ったのかもしれません。
日笠さんが「エロ要員か!」って
カラスマ ほかにも「こういう演技をしてほしい」って伝えられたことってあるんですか?
伊藤 諏訪部さんに関しては最初にそういうお話をさせてもらっただけで、今は諏訪部さんの考える十三を演じてもらっていますね。新規で登場したキャラクターのキャストに関しては「こういう方向性で」って話はさせてもらいますけど。
──ウルトラジャンプ11月号(集英社)に掲載されていた「ノー・ガンズ・ライフ」のアフレコレポートには、監督と音響監督の郷文裕貴さんがカレン役の上田麗奈さんの演技に対して、「もっとヤラしいほうが良くないですか…?」「とりあえずやってもらいましょう」と言っていたと描いてありました(笑)。
伊藤 言ってたかな? まあそういう個性を立てることで、よりキャラクターが立つかなっていう計算もあるのでお願いした可能性はあります(笑)。女の子に関していうとお尻を強調したシーンも多いですが、先生の趣味が入っていたりするんですか?
カラスマ よく「性癖ですか?」って言われるんですよね。もちろん僕の好みも入ってはいるんですけど、基本的には「喜んでもらえたら」みたいなサービスで入れています(笑)。
伊藤 女性キャラで言うと、「ノー・ガンズ・ライフ」が始まる前の飲み会でオリビエ役の日笠(陽子)さんに話しかけられたときに「(オリビエは)ちょっとエロい感じの人です」って伝えたら「エロ要員か!」って言われたんです。もちろん物語を読み進めていけばオリビエがエロ要員ではないってことはわかりますし、現在は日笠さんもそういうキャラじゃないってことは理解しているんですけど、最初にそういう先入観をもたせちゃったのはちょっと申し訳なかったなと思っています。
このキャラはどういう色の下着を履いてますか?
──では最後に今後の見どころや2020年4月から放送される第2クールに向けての抱負をお伺いできますか。
伊藤 ちょうどいま編集している第8話のアームド斎編が終わると、第1クールは個別のエピソードが続くんです。そして2クール目からまた大きな流れが訪れる。
カラスマ 2クール目には原作のちょっとしたエピソードを膨らませたオリジナル要素もありますね。
伊藤 まだ言っていいのかわからないんですが、女性キャラの下着姿が見れたりしますので。先生に「このキャラはどういう色の下着を履いてますかね?」って聞いたりしましたから。
カラスマ シリーズ構成の菅原(雪絵)さんからは十三のパンツの色も聞かれましたよ。
伊藤 えっ、十三のパンツ? それ物語に関係ないから菅原さんの趣味だよ(笑)。そういう箸休め的な部分はもちろん、2クール目はヴィクターやセブンとのバトルが本格化して息を切らせない展開が続くことになるので、1クール目を最後まで楽しんでいただいて2クール目も期待していただければと思います。