アニメ「ノー・ガンズ・ライフ」 PR

「ノー・ガンズ・ライフ」諏訪部順一×山下大輝対談|「ノー・ガンズ・ライフ」の“らしさ”はどこにあるのか

いよいよ放送がスタートしたTVアニメ「ノー・ガンズ・ライフ」。同作の特集を連続で展開しているコミックナタリーでは、第2弾として主人公・十三役の諏訪部順一と、鉄朗役の山下大輝の対談を実施した。話題は2人が演じるキャラクターや、作品の見どころを中心に多岐にわたり、そこからハードボイルド一辺倒ではないキャラや作品の魅力が浮かび上がってきた。なお特集の最後には黒い背景に黒の衣装でバッチリとキメた2人のフォトギャラリーを用意したのでこちらにもご注目を。

取材・文 / 武井風太 撮影 / ヨシダヤスシ

十三にまとわりつく“虚無感”

──まずはおふたりが考える「ノー・ガンズ・ライフ」の魅力からお伺いしたいのですが。

左から諏訪部順一、山下大輝。江原正士演じるクリスティーナ松崎。十三が処理屋を構えるアパルトメント・松崎ビルヂングのオーナーをしている。

諏訪部順一 本作は、退廃的かつ近未来的な世界で繰り広げられる、メカあり、アクションありの物語です。マッチョなタフガイだけでなく、キュートだったりセクシーだったり、さまざまなテイストのキャラクターが登場するので、多様なニーズに対応できるのではないかと(笑)。個性豊かな面々の中にあって、主人公の乾十三は特にキャッチーです。なんたって頭がリボルバー銃ですから(笑)。

山下大輝 造形が奇妙というだけではなくて、性格が強烈だったりする人もいて。特に十三が住むアパートの大家のクリスティーナさんなんかは、生身の人間なのに超強そうなんです(笑)。個性が強いですし、演じられている江原(正士)さんの「声パワー」もすごいんですよ。キャラクター以外だと、自分は世界設定が魅力的だと思いますね。原作を読ませてもらったときに、1コマ1コマ恐ろしく丁寧に描かれてるなって感じて。背景や街並みにもこだわって作られているんだなと思いました。僕はスチームパンクが好きなのですが、その匂いもちょっとある作品ですよね。近未来的な理想や夢を詰め込んだような……。全体に冷たい硬質感があって、素敵です。なので、カラスマ先生が描いているそういった魅力と、アニメーションの魅力が重なったときに、一体どんなミラクルが起きるのかが、すごく楽しみでもありますね。

諏訪部 混沌、雑然とした街並みとか、自分もこういう世界設定は好みです。「ノー・ガンズ・ライフ」は、SFとしては、ハード感がありながらも割と間口の広い部類に入るのではないかと思います。

山下 それと、拡張者(エクステンド)という、身体の一部が機械化している人間がそこかしこにいますけど、十三みたいに頭を拡張してる人もいたりして「痛くないのかな?」なんて思ったり(笑)。(拡張した結果としての)造形がカッコいいし、面白いんですよね。でも拡張するには理由があるはずなので、どういう過去があったのかな、なんて妄想を掻き立てられる設定だなと思いました。十三の身体ひとつとっても、いろんな何かがあるんだろうなと。身体を拡張したことで便利になったと言いつつも、それに苦悩する人たちの思いも同時にあって。うまい話だけじゃないのが、リアルなんですよね。

諏訪部 人工的なものによって肉体の機能を補うというのは、すでに医療の分野では行われていますし、生身以上の腕力が発揮できる、着るタイプのパワードスーツみたいなものも実用化できそうなレベルで実際に開発されています。倫理的な面でも問題が大きそうですが、身体拡張技術が一般化した社会というのは、完全な絵空事ではないかもしれませんね。

諏訪部順一演じる十三が愛飲するタバコには、拡張者の神経の摩耗を抑える成分が含まれている。

山下 もうひとつ、今時珍しい「ハードボイルド」という点も魅力ですよね。1カットの止め絵だけ見ても、カッコいいんです。あとは、タバコを吸っている描写が細やかで、ハードボイルド感が出ているなと。

諏訪部 ただ、いわゆるハードボイルド的カッコよさのど真ん中ではなく、ちょっと違う切り口で「乾十三」というキャラを構築したいと監督はおっしゃっていて。アフレコ開始当初、カッコよく決まり過ぎているのでNGということがけっこうありました(笑)。監督や脚本陣と改めてディスカッションして、イメージ像の擦り合わせをしたのですが、その際に出たキーワードが「虚無感」でした。

──虚無感ですか。

諏訪部 本作の世界は、詳細はわかりませんが、長い戦争が終わった後という設定で、十三には戦地から帰還したという経歴があります。きっと多くの死を目の当たりにしてきたでしょうし、その経験は死生観などにも大きな影響を与えているのではないかと。生き生きとした言動もしますし、コミカルなところもありますが、その奥底にはなんとも言えない虚無感が……みたいな感じを意識して演じてほしいと言われています。

劇中でも十三は多くを語ることはしない。

──演出陣からお話を受ける以前は、ハードボイルドという要素も意識されていたんですか。

諏訪部 何をもって「ハードボイルド」と言うんでしょうね(笑)。別段意識したことはありません。本作で描かれている「乾十三」という存在をいかに表現していくかに注力しているだけです。「こういう系のキャラだから」とステレオタイプな感じでイメージすることは、むしろ絶対にしないようにしています。カッコよくやろうと意識してやることほどダサいことはないじゃないですか(笑)。

鉄朗のがむしゃらで泥臭い魅力

──十三は顔がリボルバーなので、表情がない中での芝居になると思います。演じるにあたって、難しくはなかったですか。

十三のカット。

諏訪部 原作も台本もありますから、特に難しいことはありません(笑)。ただ、表情があるキャラクターを演じる場合、自分は引き算の芝居をすることもあります。ぶっちゃけ、そのときに必要な感情表現を絵が十分してくれていれば、シーンとして成立しますからね。その点、十三には表情がないので、言葉や音で表現しないと、彼が今どういう気持ちなのかが視聴者に伝わりにくい部分があり。心の機微に関しては、意識してわかりやすく表現したりもしています。

──なるほど。それもあってか、第1話を拝見していると、まるで十三に表情があるようにも思えたのですが……。

諏訪部 無機物でも、見る角度を変えたり、光の当たり方に変化があったりすると、何かしら違うニュアンスを感じることがありますよね。これって、見ている側の意識の問題なのではないかなと。イメージ投影というか。見る者の思いを映す鏡みたいな感じですね。

──鉄朗のキャラを掴んでいくのにあたっては、ご苦労はありましたか?

山下大輝演じる鉄朗はひょんなことから十三に保護されることになる。

山下 オーディションのときに抱いたのは、「まっすぐなことを、その場でできる子」というイメージでした。ですから、僕もまっすぐさを意識しながら演じていたんです。ただ、いざ第1話のアフレコに臨んだときは大きな問題に直面しまして……。鉄朗は、基本自分の声帯ではしゃべらないキャラクターなんですよ。

──ああ。声帯を潰されていて、ハルモニエという能力で、拡張体を乗っとることでしゃべるんですよね。

山下 ええ。その乗り移ったときに移られた側の声になるのか、それとも鉄朗自身の声になるのかを検討して。結果、乗り移られたほうに寄る演技になりました。

山下大輝

──あ、そうなんですか! では、山下さんは第1話から鉄朗自身とは多少違った声で演じられているんですね。

山下 ええ。鉄朗の声ではあるんですが、いかつい拡張体として、ほんのり声が低めの演技にしているんです。ただ、最近収録している話数では普通の鉄朗の声で演じてもいるので、時と場合によるのですが……。

──鉄朗の性格はどのようなものだと思われますか。

山下 演じてきて思うのは、めちゃめちゃ頑固だなと。もう食い下がる食い下がる(笑)。すごくがむしゃらで、泥臭いと思いますね。そんなところを尊敬もします。ちゃんと人の話は聞いて、そのうえで「自分はこう思うんだ」と発言できるメンタルの強さ。そこはとても魅力的だと思います。一方で、今後鉄朗のことはいろいろ明かされていくとは思うんですけども……そうなったときに、がむしゃらだった彼が何と向き合ってどうなるのか。楽しみにしてもらえたらなと思います。