コミックナタリー PowerPush - 種村有菜「猫と私の金曜日」
マーガレットで新境地!りぼん卒業後を語る
マーガレットに合わせて、トーンは減らしています
──今回は、ネタを出し惜しみしないようにお話を作っていると、別のインタビューでもおっしゃっていました。
はい。やっぱり、りぼんでキャリアを積むと、徐々に連載作品が長くなっていくんですが、最終回がいつ出る号か決まってから温めていたネタを放出していくと、そこから人気が出はじめるんです。だったら、なんでいままで隠してたんだろう、と思いはじめまして。やっぱり出し惜しみはよくないし、終わりが決まってからネタを出しても描き切れなかったり。発想は新鮮なうちに使ったほうがいいんだなって実感したんです。だから「猫金」からは、出し惜しみせずに行こうと思って。ネタに困っても、アドリブで切り抜けていこうと。
──連載にもグルーヴ感が出そうですね。いまのところ、まだネタに詰まった経験はないんでしょうか。
いまのところないです。意外といけるもんだなってくらい、ホイホイ出てきますね。りぼんは月刊ペースでしたがマーガレットは隔週と速いので、実は連載始まる前に、7話までは作ってたんです。7話で人気取れなかったらこの話は終わろうと思っていて。でも、ほんとぴったり7話で私の求めてる反応がそれなりに返ってきたのでひと安心です。ここからはもう完全にアドリブですね。
──りぼんからマーガレットに移ったことで、読者層も少し上がったと思いますが、意識して変えていることはありますか?
話に関係のないギャグシーンを入れないようにしてます。前はテンポをよくするために入れたり、「こんな絡みも面白いかな」という感じで意味のないギャグも入れてたんですが、ちょっと読者層が上がると、そういったものは好まれないらしく。ちゃんと流れに沿ったコミカルな表現はいいんですけど。だからそういった突拍子もないギャグは徹底的に省いて、大人っぽくなるように心がけてます。
──絵柄の面ではどうですか?
目を小さくしてますね。すでに第1話と最新話でも目の大きさがだいぶ違いますが……。(初連載作の)「イ・オ・ン」なんて、文庫版作業のときに久々に見返したら「やっぱりデカいなー」と。小学生って目だけで絵を判断するので、デカければデカいほどいいんですよ。あと小さい子って目を本に近づけて読むので、キャラの目が小さいと顔の真ん中に何もないように見えるんです。実は大きい目がちょっと嫌になった時期があったんですが、そのとき少し目を小さくしてみたら、「目がカエルみたいですよ」っていうファンレターが来たことありました(笑)。
──ははは(笑)。
そんなお手紙いただいたので、やっぱりりぼんで小さい目はだめなんだな、と実感しましたね。本当は相応に小さくしていきたいんですが。りぼん時代、最後のほうはとても無理をして描いてましたね。
──種村先生と言えば華やかなトーンワークが印象的ですが、その辺りもマーガレットに移ったことで変えてるんでしょうか。
トーンはだいぶ減らしてますね。「猫金」も最初は多かったんですけど、雑誌に掲載されると、ほかの作品に合わせて、できるだけ貼らないように我慢してます。やっぱりほかの作品を読んだあとに「猫金」を見ると、読みにくいって思っちゃう。絵もゴチャゴチャしないように、できるだけ抜くようにしてます。
──そこはりぼんとは違うところですね。
りぼんは1カ月繰り返して読まれるものなので、トーンを貼りこんだり、描き込んだり、情報を詰め込んでも読者がちゃんと付いてこれるんです。でもマーガレットは隔週で発売されるので、詰め込み過ぎちゃうと疲れちゃうんでしょうね。だからつるっと、さらっと読めるマンガを目指してます。でも私の読者さんには、華やかさであったりトーンワークにも注目頂いてるので、そんなに白くなりすぎないように、ちょうどいいところを模索しながら描いています。
愛にとって金曜日は特別な日。図書室で、大好きな芹沢先輩に会える日。そして猫太くん(いとこの小5)の家庭教師の日。大好きな先輩に告白しようとしたら、猫太くんに邪魔をされ……さらに本気で告白された!? 小学生男子、高1のオトメ女子、高2の先輩のマジ恋三角関係がはじまる!
種村有菜(たねむらありな)
1996年、りぼんオリジナル6月号(集英社)に掲載された「2番目の恋のかたち」でデビュー。1997年にはりぼんにて「イ・オ・ン」を初連載し、その後「神風怪盗ジャンヌ」が大ヒットを記録する。同作や「満月をさがして」はTVアニメ化もされた。詩的かつ印象的なセリフまわしや、こだわりのある美しい絵は、日本のみならず海外でも人気が高い。2011年にりぼんとの専属契約を終了し、フリーに。マーガレット(集英社)では2011年に「風男塾物語」を短期集中連載し、2013年2月より「猫と私の金曜日」をスタートさせた。