コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第15回 ななじ眺「あるいとう」「パフェちっく!」
手癖では描けないマンガへの挑戦
新作は「あるいとう」を描いたからこその王道
──先日発売されたマーガレット2016年1号からは、新連載「ふつうの恋子ちゃん」が始まりました。
「あるいとう」を描いたからこそ、という王道を描こうと思っています。ただ王道とは言っても、ライトすぎないように、だからって「あるいとう」みたいに難しくもしたくない。「あるいとう」で覚えた「奥を描く」ということと、逆に反省点だった「もっとわかりやすく描かないといけない」ということを意識していきたいですね。
──主人公の恋子ちゃんは、「普通」にこだわる女の子です。
私自身がすごく普通なので、普通の主人公が一番描きやすいと担当さんに話したことから打ち合わせが進んでいきました。どうせなら、とことん普通にこだわる主人公にしようと。恋子は恋に悩むことも、まったく恋がないことも「しあわせじゃない」と思っていて、普通が一番しあわせだと思っている。なので恋子は特に何かを頑張ってくることもなかった。そんな主人公が、恋によって変わっていく様を描けたらなと思っています。あと、うちは娘が高2なので、最近の高校生の恋愛事情を聞いたりもしていたり(笑)。
──へえ! どんなことをお話されるんですか?
娘とはよく恋バナをするんですよ。今どきのリアルな恋を目の前で見ていると、40オーバーの私には目がチカチカします(笑)。どうしても理解できず「そういう時代」と無理矢理受け止める部分もありますけど、普遍的な部分も多くて、そのどちらもバランスよく自分に取り込めたらと思っています。難しいですけどね! 年齢という壁の高さが!(笑)
──あはは(笑)。では「ふつうの恋子ちゃん」で注目してほしいポイントなどはありますか?
作画の雰囲気を変えたつもりです。今までよりラフなタッチで線も太いけど、マットではなく空気感や湿り気のある絵柄を目指しています。それと、今までは暑苦しい性格の主人公が多かったんですが、今回の恋子はクールめ。そんな主人公が恋によって熱くなってく様を見ていただけたらと思います。……やっぱり暑苦しいですね(笑)。
この3作は、お棺に入れてください
──では、ななじさんが影響を受けたマーガレット、別冊マーガレットの作品についてもお聞かせください。
私、こういうときにいつも同じ作品を挙げるんですけど、まず紡木たく先生の「瞬きもせず」です。高校時代に読んだのかな。あの空気感が、なんていうか、平面じゃないんです。マンガって紙に絵が描いてある平面ですけど、紡木先生の作品はちゃんと奥があって、そこに人が住んでるっていうか。高校生が悩みながら本当に、あの紙の奥にちゃんといるんですよね。あの感じが大好きです。私、お棺に入れてほしいマンガがあるんですけど、「瞬きもせず」と、聖千秋先生の「いつも上天気」と、河原和音先生の「先生!」です! この3作はお棺に入れてください! あ、でもそうすると燃やされますよね……それはよくないな……。骨壷の横に供えてください(笑)。
──ははは(笑)。
河原先生の作品では「先生!」も好きですし、「愛のために」っていう読み切り集は、これから読み切り描こうっていう人に「参考にしなさい」って勧めてますね。あ、あとこれも読み切り集ですけど、椎名軽穂先生の「恋に落ちる」も大好きです。読んでて恋に落ちました。好きなマンガ、いっぱいありますね。私、集英社のマンガが大好きだったみたいで、本棚はほとんどこの王冠マークがあって、赤い文字のタイトルがズラッと並んでるんですよ。マーガレットを一番読んでましたね。桃伊いづみ先生とか、麻刀城ひとみ先生とか好きだったなあ。桃伊先生は「まじめに!男女交際」とかめっちゃ好きでした。画面も見やすかったですしね。無駄がなくて。コマ割りとかコマ運びも参考にしましたね。斜めのコマがちょっと入ってたり。私もよく取り入れてました。
──ななじさんもマーガレットで描かれて、ものすごく長いですよね。ななじさんが22年、「メイちゃんの執事」の宮城理子さんが25年で、ツートップです。
宮城先生は先輩ですね。うえりん(上田倫子)先生も長かったですよね。尊敬してます。あと「学校のおじかん」「君じゃなきゃダメなんだ。」の田島みみ先生も大好き。田島先生のほうがデビューは後かな。「うわ、すごい人きた!」って思いましたもん。絵もめっちゃかわいいし、話もめっちゃキュンとするし。モー娘。でゴマキが入ってきたときにザワッとした、あの感じだと思う。
──「なんかすごいのきた!」って感じですね。
すごい王道で、ど真ん中で。だからすごいがんばって参考にしましたね。トーンの使い方とか、アップの入れ方とか。本当に横に置いて描いてたくらい。一番見てたのは、「パフェ」描いてたころに「恋する1/4」とか、「青いスパイス」とか、あのへんかな。トーンの削り方で「田島先生風」っていうのがうちの仕事場ではあるんです(笑)。アシさんに「これ、田島先生風でお願い」って頼んだり。罫線のトーンを、細かくじゃなくて、ザクっと削るっていうやり方なんですけど。「パフェ」のときによく取り入れたなー。なんか勢いが出るんですよ。田島先生からしたら「違う」って言われるかもしれませんけど(笑)。あ、あとは斉藤倫先生も好きです。「すっとんきょーな兄妹」とか。斉藤先生はコマ割りとか、特に今でも参考に見たりしてます。コマのメリハリというか、この大きいコマを見せるためにこのコマを小さくする、というのがすごく参考になるんです。
──いろんな作品から技法を取り入れているんですね。
あ、それはすごくしてると思います。特にデビューして間もない頃は、とにかくマーガレットの作家にならなきゃ、マーガレットのために、と思ってたので。マーガレットを読んで分析してましたね。吹き出しの中のセリフは縦に何文字、横に何文字とか。本当にマンガの描き方をわかってないままデビューしたんですよね。なのでマーガレット愛はものすごく強いと思います!
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- マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
- 第1回 河原和音
- 第2回 咲坂伊緒
- 第3回 神尾葉子
- 第4回 中原アヤ
- 第5回 森下suu
- 第6回 あいだ夏波
- 第7回 やまもり三香
- 第8回 水野美波
- 第9回 幸田もも子
- 第10回 宮城理子
- 第11回 佐藤ざくり
- 第12回 椎名軽穂
- 第13回 小村あゆみ
- 第14回 いくえみ綾
- 第15回 ななじ眺
- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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ななじ眺(ナナジナガム)
2月19日生まれ。兵庫県在住。マーガレット(集英社)にて19歳でデビュー。2000年より同誌にて連載された「パフェちっく!」(全22巻)は、台湾でドラマ化も果たした。2007年からは「コイバナ!―恋せよ花火―」(全10巻)を連載。2011年より神戸北野を舞台にした「あるいとう」を連載する。そのほか東日本大震災チャリティーマンガ本「PARTY!」を主宰したり、出身地である兵庫県加西市の風土記「根日女伝承」をテーマにしたマンガ「ねひめのとき」を執筆したりと、多方面で活躍中。2015年よりマーガレットにて「ふつうの恋子ちゃん」を連載中。
2016年1月22日更新