青春群像劇の名手・なかじ有紀画業40周年インタビュー、“誰も傷つけない作品でありたい”という願い (2/2)

何かに抗ってジタバタしてる男の子が好き

──1999年から2004年までLaLaで連載された「ビーナスは片想い」は、現状でなかじさんの最長作品です。ストーリーを振り返ってみて、特に印象に残っているシーンを挙げるとしたらどれでしょうか。

英知と紗菜の初キスシーンです! お互いに告白することもなく、戦友という立場でいかに自然にキスをするかに工夫を凝らしました。

「ビーナスは片想い」より、英知と紗菜の初キスシーン。

「ビーナスは片想い」より、英知と紗菜の初キスシーン。

──英知も紗菜も深見くんに片思いをしていましたが、確かに“戦友”という言葉が似合いますね。英知と紗菜の2人もとっても仲がよかったですから。2人の初キスシーンには甘い言葉や告白はなく、でも雪が降り頻るクリスマスでとてもロマンチックでした。そういえば英知をはじめ、なかじさんの作品は「かわいい顔立ちの男の子」が主人公になることが多い印象があります。これは意識的でしょうか?

私の作品はたくさんキャラクターがいることが多くて、最初はカッコいい系の男の子を立てようと描き始めるのですが、気が付くとかわいい系の男の子が真ん中に来てるんですよね(笑)。かわいいというか、何かに抗ってジタバタしてる男の子が好きみたいです。

──英知もそうですが、「小山荘のきらわれ者」の彰吾も、「ハッスルで行こう」の海里も、「ZIG☆ZAG」の太陽も人懐っこいし明るいし、困難にあってもへこたれずにジタバタしてました(笑)。

かわいい系では英知が一番のお気に入りです(笑)。そういえば、最近かわいい系の男の子を描いてなかったので描きたいですね。

──なかじさんはLaLaの印象が強いですが、「京*かのこ」は当時季刊誌だったAneLaLaで連載されました。掲載誌がAneLaLaという少しお姉さん雑誌に変わったことで、作品に何か影響はありましたか?

そうですね、お仕事しながら恋愛をする女性に向けた雑誌だったので、それを念頭に置いていました。ヒロインもLaLaよりお姉さんになりましたしね。でも「京*かのこ」の最初のほうは、LaLaで連載をしながらだったので大変すぎて実はあまり記憶がありません(笑)。その後LaLaでの連載も終わり、AneLaLaは隔月刊になって、自分の時間が持てるようになりホッとしていたように思います。

マンガ家人生初めての単独原画展

──連載中の「xxx(キスキスキス)な関係」はLINEマンガで発表されています。電子媒体での掲載になりましたが、描き方に変化はありましたか?

1ページ単位で読んでいただくものがほとんどなので、“見開き”“めくり”といった効果が出しづらく、それを補うように意識してネームを切るようにしています。

「xxxな関係」のイラスト。

「xxxな関係」のイラスト。

──「xxxな関係」は編集者のヒロイン・まひると、人気少女マンガ家・花咲先生のラブコメディです。「少女漫画家はいつか描いてみたかった」とLaLaのインタビューに書かれていましたね。

自分自身が少女マンガ家なので、それを活かせたらと。実は花咲先生のモデルは、身近な方なんです(笑)。まひるの先輩編集者・百合のモデルは自分の担当さんです。

──少女マンガ家という環境を活かしてらっしゃいますね(笑)。思い入れのあるキャラクターは誰ですか?

傍若無人な花咲先生です! まひるも大変だなあと思いながら描いています(笑)。

──花咲先生に翻弄されつつも仕事に手を抜かず、まひるは元気でひたむきですよね。なかじさんの作品はとても前向きなキャラクターが多い印象があって。「前向き」や「元気」といった要素はなかじさんご自身は意識していますか?

読んで元気になっていただけたら幸いです! できれば誰も傷つけない作品でありたいとは常に思っています。

──まひると花咲先生に限らず、なかじさんはデビューしてからの40年でさまざまな恋愛を描かれてきましたが、どんなところからインスピレーションを得ているのでしょうか?

いろいろです! 周りの人たちとか自分の体験とか妄想とか(笑)。

──今後作家としてやりたいことはありますでしょうか?

まずは「xxxな関係」をきちっとエンドマークまで描きたいです! ほかにも描きたいものがありますが、なかなか実現しそうになく……。でもいつかきっと!と思っています。

「純愛ラビリンス」のイラスト。

「純愛ラビリンス」のイラスト。

──9月16日から原画展の開催が決定したと伺いました。

そうなんです! マンガ家人生初めての単独原画展を、渋谷モディで開いていただけることになりました! あんな作品やこんな作品も展示しておりますので、足を運んでいただけるとうれしいです。お待ちしています!

──最後に、ファンに向けて一言お願いします。

ずっと応援してくださっている方も、最近知ったという方もご覧いただき本当にありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。これからもどうぞよろしくお願いします!

なかじ有紀40年の歩み

デビュー前
中学3年生の夏に初投稿
1982年
「聖一郎・愛・哀・eye」でデビュー
(LaLa1982年8月大増刊号)

同じく「聖一郎」シリーズの「聖一郎ちゃんに首ったけ」が、LaLa1982年2月大増刊号に初掲載され、「聖一郎・愛・哀・eye」でマンガ家デビューを飾った。

1983年
「学生の領分」でLaLa本誌初登場、その後隔月連載に
(LaLa1983年4月号)

LaLa1983年7月大増刊号で初表紙を飾る
(LaLa1983年7月大増刊号)

LaLa大増刊号はオール読み切りの雑誌。この後も何度も表紙イラストを担当し、人気のほどがうかがえる。

1985年
「小山荘のきらわれ者」で初の本格連載
(LaLa1985年7月号)

LaLaの表紙&巻頭カラーで登場し、「初の本格連載にハリキるなかじ有紀」「有紀りんの新連載」という初々しいアオリ文が光る。

「小山荘のきらわれ者」のイラスト。

「小山荘のきらわれ者」のイラスト。

1988年
「カラフルBOX」の連載開始
(LaLa1988年9月号)
1990年
「RED」の連載開始
(LaLa1990年2月号)
1991年
「隣のDOUBLE」の連載開始
(LaLa1992年1月号)

「CUTEでPOPなご近所恋愛コメディー」とキャッチコピーが付けられ、連載開始号の巻頭カラーを飾った。神戸に引っ越してきた愛久美(めぐみ)と、お隣に住む双子・藤也と桜太が織りなす恋愛模様が描かれた。さらにLaLa1993年2月号からは「隣のDOUBLE」の「PartⅡ」として新連載「隣はSCRAMBLE」がスタート。藤也と桜太を軸にしたラブコメディが人気を博した。

「隣のDOUBLE」のイラスト。

「隣のDOUBLE」のイラスト。

1992年
初の画集「SALAD(サラダ)」発売
1994年
「ハッスルで行こう」の連載開始
(LaLa1994年10月号)

調理師学校に通う海里がコック見習いとして仕事に恋に奮闘するグルメコメディ。連載開始号の表紙と巻頭カラーを飾り、物語の舞台であるレストラン・ピッコロのエプロンとティーセットがプレゼント企画に。

「ハッスルで行こう」のイラスト。

「ハッスルで行こう」のイラスト。

1997年
「BRAN-NEW」の連載開始
(LaLa1997年8月号)
1999年
「ビーナスは片想い」の連載開始
(LaLa1999年4月号)

連載開始号の巻頭カラーを飾った「ビーナスは片想い」は、なかじの現在の最長連載。紗菜(すずな)と英知のキャンパスロマンスが描かれ、単行本12巻まで刊行された。最終回が掲載された2004年4月号では人気コンテストの発表も。わずか数ポイント差で英知が2位、ユッキーが3位とデッドヒートを繰り広げたのを尻目に、主人公の紗菜が1位に強さを見せつけ輝いた。

「ビーナスは片想い」のイラスト。

「ビーナスは片想い」のイラスト。

2004年
「ZIG☆ZAG」の連載開始
(LaLa2004年11月号)
2009年
「純愛ラビリンス」の連載開始
(LaLa2009年6月号)

平凡な女子高生・ウミとその兄で芸能人のハルトとの恋を描いたラブコメディ。なかじが「一度は描いてみたかった」という一つ屋根の下に住む“血のつながらない兄妹もの”で、単行本は全7巻で刊行されている。

2013年
「今日から兄貴です!!」の連載開始
(LaLa2013年6月号)

「京*かのこ」の連載開始
(LaLa7月号増刊AneLaLa)

LaLaの増刊・AneLaLa第1号に掲載された「京*かのこ」。なかじが大好きな和菓子をテーマに、京都の老舗和菓子屋のひとり娘・鹿乃子の修行物語が描かれた。

2014年
「小山荘のきらわれ者~リターンズ~」の連載開始
(AneLaLa第6号)

AneLaLaが隔月刊化された第6号で連載スタート。「小山荘のきらわれ者」の最終回から3年後を舞台に、それぞれの夢に向かって羽ばたく成介、彰吾たちが描かれた。

「小山荘のきらわれ者~リターンズ~」のイラスト。

「小山荘のきらわれ者~リターンズ~」のイラスト。

2019年
「xxxな関係」の連載開始

オリジナル作品をLINEマンガで先行配信する「白泉社オリジナル×LINEマンガ」施策の1作として、2019年7月に配信開始。マンガの編集者まひると、大人気少女マンガ家の花咲里央のラブコメディだ。単行本は現在5巻まで発売中。

「xxxな関係」のイラスト。

「xxxな関係」のイラスト。

告知情報

画業40周年記念 なかじ有紀 原画展 / なかじ有紀デビュー40周年記念ガチャ

画業40周年記念 なかじ有紀 原画展

  • 2022年9月16日(金)~10月2日(日)
    東京都 渋谷モディ7Fイベントスペース

公式サイト

開場時間:11:00~19:00
※入場は閉場の30分前までとなります。
※営業時間は急遽変更となる場合がございます。
※混雑時はショップへの入場時刻が遅れる場合がございます。
料金:無料
主催:キャラアート株式会社
協力:株式会社白泉社


なかじ有紀デビュー40周年記念ガチャ

販売期間:2022年9月5日(月)12:00~10月17日(月)12:00

販売ページ

プロフィール

なかじ有紀(ナカジユキ)

大阪府出身。9月11日生まれ。AB型。1982年に「聖一郎・愛・哀・eye」でデビュー。LaLa(白泉社)で1985年から1988年まで連載した「小山荘のきらわれ者」が大ヒット。読者の絶大な支持を受け、人気を不動のものとする。その後、「隣のDOUBLE」「隣はSCRAMBLE」「ハッスルで行こう」「ビーナスは片想い」「純愛ラビリンス」など多くの作品を発表。2019年からはLINEマンガで「xxxな関係」を連載中。