淑乃ちゃんのターザンってなかなか聞けないので(日髙)
──「ナディア」といえば、コメディの要素も作品の魅力ですよね。
鷹森 確かにそうですね。「島編」(※第23~31話)はアフレコ中もよく笑ってました。ジャンのギャグ度も高かったし、ナディアもすごく暴走してましたし。
日髙 淑乃ちゃん「島編」のとき「ア~アア~♪」て声出してたよね。淑乃ちゃんのターザンってなかなか聞けないので、お腹を抱えて笑わせてもらいました(笑)。あのとき、「ナディアがこんな声出しちゃっていいの?」とか迷いはなかった?
鷹森 全然なかった(笑)。むしろなかなかヒロイン役でターザンの声を出すことはないので、「よしきた!」と、迷うことなく全力で楽しませてもらいました。
日髙 楽しんでたんだね(笑)。ジャンは普段からいろんな面を出してくれるキャラクターだけど、ナディアが開放されてターザンまでやっちゃう感じだったので、ジャンはその上をいかないといけない感じだったんですよ。だから毎週アフレコをするたびに、私はどこまで壊れていくのだろうと思うぐらいのテンションを上げてました。
3人でカフェに集まって、頭をつきあわせて「さあ、どうしよう」って(鷹森)
──ちなみにこのセリフをがんばったから、ぜひ観てほしいというシーンはありますか?
日髙 第1話の冒頭部分でしょうか。ナディアがなんにも話さないのに、「僕はジャン・ロック・ラルティーグ」という自己紹介から始まり、ジャンが自分のことをぶわーと長々しゃべるシーンがあるんです。あそこは最初のシーンということもあって、自分のがんばる気持ちが空回りしないように「抑えて、抑えて」と心がけていたんです。緊張もありましたが、テンポよく話しかけてるシーンだったので、あそこでなんとなくジャンというキャラクターの雰囲気をつかめた気がしています。なので、自分語りするジャンの長ゼリフをぜひ聞いていただきたいです。
鷹森 私は庵野監督から、第2話のジャンのおばさんの家からジャンの家へと向かう一本道での、ジャンとナディアがかわす会話の中の一言が「すごくナディアを表現していた」と褒めていただいたところですね。ただ今回どのセリフだったかなと見返してみたのですが、残念ながら見つけられず……。もうこれはBlu-ray BOXを買っていただいた方に、ここではないかと判断していただくしかないかなと。ここだと思ったセリフをぜひ教えてください。
日髙 別のシーンなんですけれど、私、第1話でナディアが「トトメース」って叫ぶシーンを、庵野監督が「いい!」って褒めていたのはすごく覚えてる。
鷹森 あそこは「あんなにテンション高く言うとは思ってなかった」って、庵野さんから驚かれましたね。
日髙 庵野監督、ずっと「いい! これはいい!」って言ってたんだけど、褒められてる淑乃ちゃんが「はあ……そうですか……」ってしっくりきてない感じで、はたから見てめちゃくちゃ面白かった(笑)。
鷹森 どこがいいのかよくわからなかったから(笑)。
日髙 あと第34話で、ジャンがナディアのために一生懸命歌を作ったのに、「……へたくそ」ってナディアが言ったその言い方を、庵野監督が「最高だ!」って褒めていて。
鷹森 いや、そのセリフは意外と難しかったのよ。強い感情をガーって出すよりも、ボソッと「へたくそ」って言うセリフのほうが私はやりにくくて。そこもがんばったセリフの1つだと思います。
日髙 歌といえば私たちで作詞したキャラソン「はじめての恋」覚えてる?
鷹森 庵野監督も交えた3人で作詞をしようってなったやつでしょ。
日髙 あの作詞の会、おかしかったよね(笑)。
鷹森 3人でカフェに集まって、全員で頭をつきあわせて「さあ、どうしよう」って。3人集まればすぐにできあがると思ってたのに、3人が考えていることがバラッバラで、何1つ決まらなかったんです。一言も、ワンフレーズも決まらなくて、最後のり子ちゃんが1人徹夜して作ってくれたという伝説の曲(笑)。
日髙 あのときは本当に決まらなすぎて、険悪なムードになったぐらい(笑)。でも最終的にちゃんと完成してよかったよね。
30年経って今は母のような気持ちで作品を観るように(鷹森)
──30年前にアニメを観たときと、今、年月が経ってから観たときに印象が変わったシーンやエピソードはありますか。
日髙 当時はジャン視点でアニメを観ていたので、「自分はこんなに思っているのに、なんで大人はわかってくれないんだ」という気持ちでいたのですが、時間が経って客観的に観られるようになってからは、ジャンもナディアもたくさんの大人たちから愛されていて見守られてきたんだなと改めて思いました。年月が経つにつれて大人の愛がわかるようになってきたんですよね。ネモ船長たちのような大人と一緒で、ジャンたちは幸せだったんだなと感じるようになりました。
鷹森 私も同じです。14歳の少女の気持ちになるようにと一生懸命演じていたので、完成したアニメもそういう視点で観てました。だけど、30年経って今は母のような気持ちで作品を観るようになり、もし私の子どもだったら……という視点でナディアを観るときもあります。収録しているときは、こんなワガママな感じでいいのかなという思いもあったのですが、そういう一面もかわいいと受け止められる余裕ができてきましたね。
日髙 そう! 意地はってる気持ちもわかるようになったよね。
鷹森 一途で自分の気持ちをストレートに伝えているところは、ナディアのすごくいいところだし、ステキな面だなと改めて思いました。
日髙 そんなナディアに振り回されていたジャンくんですが(笑)。アフレコしていたときも、私だったらここまでワガママなこと言われたら絶対に「勝手にしろ」って言ってしまうであろうシーンが何度もあったんですけれど、でもジャンくんはそうはならないんですよね。本当にこの子は優しくて前向きな子だなと思いながら当時演じていました。本当にとことん優しいですよ。改めて観返してみて自分で言うのもなんですけれど、相当優しい男の子を演じることができたなと感じます。
──では最後に、これからBlu-ray BOXを買われる方や、初めて観る方に向けてメッセージを一言お願いします。
鷹森 SFっぽいと思ったら、冒険活劇になったり、熱い人情シーンだと思ったら、恋愛シーンも出てきたりと、次はどうなるのかわからなくて目が離せないストーリー展開です。しかも出てくる登場人物たちはみんな個性的で魅力的。老若男女の皆さんに楽しんでいただけること間違いなしの作品なので、まだ観たことない方々には、ぜひBlu-ray BOXを買って毎日観ていただければ幸いです。
日髙 シリアスなだけではなく、ギャグシーンもあり、いろんな要素がぎゅっとつめこまれた宝箱のような作品です。その中に、ナディアという1人の少女が、背負った運命は本当にドラマティックで、最終話に近づくころには、この先どんな展開が待っているのかと、きっと皆さんハラハラするんじゃないでしょうか。SF好きな方はもちろん、いろんな方たちに喜んでもらえる名作だと思います。今回発売されるBlu-ray BOXを家族みんなでぜひ楽しんでください。
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