TVアニメ「ふしぎの海のナディア」特集 鷹森淑乃×日髙のり子|オーディションの思い出からアフレコの裏話まで飛び出した激レア対談

1990年4月13日にNHK総合にて初回放送されてから、今年2020年で30年というアニバーサリーイヤーを迎えた「ふしぎの海のナディア」。謎の美少女・ナディアと、彼女に一目惚れした発明好きの少年・ジャンを中心に繰り広げられる冒険と成長を描いた名作アニメだ。コミックナタリーでは、Blu-ray BOX発売を記念し、ナディア役の鷹森淑乃とジャン役の日髙のり子の対談を実施。当時の思い出を振り返りながら、本作の魅力を語り合ってもらった。

取材・文 / サタケコズエ 撮影 / 武田真由子

「14歳の女の子をできるのかな」と不安な気持ちのままセリフに挑んだ(鷹森)

──おふたりで対談をするのはいつぶりでしょうか。

鷹森淑乃 のり子ちゃんとはプライベートでも仲よくさせてもらっていますが、プライベート以外で2人で語り合うっていうのは、もしかしたら今までにないかもしれません。

日髙のり子 アニメが放送中のときにはあったかもしれないけれど、それ以外だと初めてじゃないかな。

左から鷹森淑乃、日髙のり子。

鷹森 「ふしぎの海のナディア」放送30年というこのタイミングで、2人でたくさん語れるのはとてもうれしいよね。

──「ふしぎの海のナディア」についておふたりに語り合っていただく貴重な機会になりそうですね。では役が決まったときのことは覚えていますか?

鷹森 けっこう覚えています。オーディションだったんですけれど、当時はオーディション会場に着くと「このキャラクターをお願いします」って急に言われて台本を渡される感じだったんですよ。その場でどんなキャラクターでどんなセリフなのかを把握して、名前を呼ばれたらスタジオの中に入って1人ずつ声を録っていくという流れで。私は「ナディアで」と指定されて、「14歳の女の子をできるのかな」と不安な気持ちのままセリフに挑んだのを覚えています。特にナディアのセリフでダメ出しをされたわけではなかったのですが、そのままエレクトラさんにも挑戦させてもらって。

日髙 初めて聞きました! それは自分から提案したの?

鷹森淑乃

鷹森 そう、自分から。私としては、「もしかしたらこっちのほうが合っているかもしれない」と思っていたので、エレクトラさんをやらせてくださいってお願いしたんです。エレクトラさんのセリフは自分の中でもけっこう手応えあったので、結果「ナディアでお願いします」と言われたときは驚きました。

日髙 ナディアは不安になりながらやったけれど、エレクトラは自信持って演じてたんだ。

鷹森 自信たっぷりめだった(笑)。

日髙 (笑)。

鷹森 だから収録始まってからも、喜久ちゃん(井上喜久子)が演じるエレクトラさんのセリフをよく聞いてて、私だったらこうするかなと思ってた(笑)。

日髙 エレクトラに未練が(笑)。ナディアを演じながら、エレクトラを意識してたのかあ。

鷹森 少しだけ意識してましたね。でも、喜久ちゃんの独特な、強いんだけどその中にも優しさが含まれている声を聞いて、このキャラクターにはやっぱり喜久ちゃんが適任なんだなと。のり子ちゃんはオーディションのこと覚えてる?

日髙のり子

日髙 私は最初に「両方受けてください」って言われて、ナディアとジャンの2役受けたんだよね。当時「ピーターパンの冒険」というアニメで初めて少年役をやった後だったから、もう少しいろんなバリエーションの少年役の経験を積みたいと思っていた時期で。ピーターパン役のときには、それまで女の子の役しかしたことがなかったので、少年役をやるってことで、最初からやけに肩に力が入っていて、そのまま力の入ったキャラクターになってしまったんですよ。だから、ジャンのキャラクター表を見たときに、とても柔らかい印象を受けたので、今度は肩に力を入れないでしゃべれる男の子を演じてみたいなと思って、オーディションではその気持ちをのせて演じましたね。

──ジャン役に合格したとき、どう思われましたか?

日髙 当時、ナチュラルに少年の声で話せるような人になりたいと思っていたので、合格したときはすごくうれしかったです。しかも、相手役が仲よしの淑乃ちゃんだったので、演じやすかったこともあり、ここでもう1つ自分の少年役をバージョンアップできるかもしれないという期待でワクワクしていました。

鷹森 オーディションではナディアをどんなふうに演じたの?

日髙 それがナディアに関しては、どんな気持ちで演じていたのか思い出せず……(笑)。ナディアのキャラクターも面白いなって思っていたはずなのに、ジャンへの思いが自分の中の記憶として強く残りすぎて。記憶の奥のほうへ行っちゃったみたい。

──実際に自分の役を演じたときやアフレコ中、印象に残ったことを教えてください。

鷹森 「ナディア」の打ち入り(※アフレコ前に集まって、志気を高める会のこと)をしたときに、共演者の方から「庵野(秀明)監督はとてもこだわりの強い方だから、すごく大変らしいよ」って言われたんです。キャラクターやセリフをすごく大事にされていると聞いていたので、とても緊張していたんですよ。そしたら、まさかの何も言われないという。しかも初日だけではなく、ずっと庵野さんからダメ出しが来ず、それはそれで怖かったんですけど(笑)。だから、数カ月経ってから思いきってダメ出しをしない理由を聞いてみたら、「今回から(直接のダメ出しは)しないことにしました」って言われて。もう少し早くそのことを知っていたら、もっと早くのびのびとナディアを演じられてたかもしれません(笑)。

──日髙さんは印象に残っているアフレコはありますか?

アニメ「ふしぎの海のナディア」第15話「ノーチラス最大の危機」より。

日髙 私は1つずっと印象に残っているアフレコがあります。それは、第15話「ノーチラス最大の危機」のフェイトさんが亡くなるシーン。あれは本当に悲しくて、ジャンが「フェイトさん! フェイトさん!」って何回名前を呼んだかわからない。フェイトさんがジャンに対して「船長の判断は正しかったんだ」と話してくれていたけれど、亡くなる寸前になって「まだ死にたくない!」と叫び、ジャンが「フェイトさん! フェイトさん!」って泣き崩れるこのシーンは、演じていて本当につらくて悲しかったんです。実際に涙と鼻水が大洪水で、でもノイズを出すことはできないからガマンしながら収録して、といういろんな意味で印象深かったですね。

鷹森 わかります。「ナディア」では近しい人が亡くなる描写がいくつか出てくるんですけれど、ネモ船長が最後に「ナディア、どんなことがあっても、生きろ!!」って言っていたシーンもすごくつらかったですし。生き返るんですけど、ジャンが1回死んだシーンもショックが大きすぎて印象に残っています。

日髙 ……あれ? ジャンって死んじゃったっけ?

鷹森 え、忘れちゃったの!? 自分の役なのに!!(笑)

日髙 ほかの人が亡くなったところは覚えているのに、自分が死んだシーンを覚えていなかった(笑)。

「あのマリーに好かれていたの?」って(日髙)

──「ナディア」には個性豊かなキャラクターもたくさん登場しますが、もし結婚するならどの男性キャラクターがいいですか?

鷹森 私はやっぱりジャンがいいかな。優しいし。

アニメ「ふしぎの海のナディア」第6話「孤島の要塞」より。

日髙 そうね、私も。ガーゴイルはちょっとイヤかな(笑)。ネモ船長は寡黙すぎて何考えているのかわからない感じがあって、ちょっと怖いところがあるよね。近寄りがたいというか。サンソンもカッコいいですけれど、でもやっぱり優しさはジャンがピカイチ。あ、でもハンソンにはもうちょっと光を当ててもいいと思う。

鷹森 意外とね。

日髙 かしこくて発明できるし。ハンソンのよさにもっと皆さんに注目してほしいです。そう思うんですけれど、やっぱり結婚するならジャン(笑)。

──そこは譲れないんですね。

日髙 譲れないですねー。

アニメ「ふしぎの海のナディア」第13話「走れ!マリー」より。

鷹森 カップルで言うならサンソンとマリーの組み合わせも意外でびっくりしなかった?

日髙 びっくりした! 「あのマリーに好かれていたの?」って。マリーがサンソンをいいと思っているとは思わなかったし、あのマリーが認めるのはすごいことだなって。マリーが認めたサンソンなんだから、サンソンってきっとすごいいい人なんだろうなって改めて思いました。

鷹森 マリーはしっかりしてますからね。もしかしたら登場人物のなかで一番しっかりしてるかもしれない。