コミックナタリー PowerPush - 巴亮介「ミュージアム」
女性も楽しめる!? サスペンスホラー 目利きの書店員が読みどころを解説
恋愛ドラマみたいな要素も
──主人公の沢村刑事はどんな印象ですか?
八尾 終盤は家族を取り戻すための物語になってると思うんですけど、そこでの沢村刑事はすごくカッコよかったですね。
鎌倉 3巻に、後ろ姿だけで奥さんを見分けるシーンが出てきますよね。「わー!」って鳥肌立ちました。
遠藤 学生時代に奥さんの背中をずっと見ていたからわかる、っていう回想が挟まるのもよかったですよね。ドラマチックだったなあ。
八尾 緊迫感あるシーンなのに、ここだけ恋愛ものみたいでしたね。この物語は沢村刑事が家族をないがしろにしてしまったところから始まりますけど、本当は愛がある、っていう感じがすごくよかった。
鎌倉 うん、家族愛がちゃんと描かれてるし、ヒューマンドラマ要素があるのも女性が読んでて面白いと感じられるところだと思います。
人と話すことで面白さが何倍にも膨らむ作品
──3巻では最終話が15ページ加筆されてますが、皆さんはすでに読まれたんですよね。
鎌倉 はい。最後の最後で「えー!そういう終わり方なの!?」って思わされました。どちらとも取れる、「読者のご想像にお任せします」っていうような曖昧な終わり方がもう……ずるい!って(笑)。
遠藤 えっ。私はハッピーエンドだと思い込んでた。違う解釈もできました?
鎌倉 よく読むと、ハッピーエンドともバッドエンドともとれるようになってますよ。
遠藤 えーそうなんだ。もう一度読み込んでみます。
鎌倉 どっちが真実なんだろうって、1人で読んでるとモヤモヤしちゃいます。この作品は3巻で完結ですけど、明らかになっていないというか、謎なままの部分も多いですよね。この蛙男の実の両親のバラバラ殺人事件っていうのも、彼がやったことなのかどうなのかが気になって仕方なくて。
遠藤 3巻の最初のあらすじで、「当時、中学生だった早苗の初作品!?」って書かれてましたね。どっちなんだろう。
鎌倉 それが彼のやったことだとしても、何年も経ってから幼女樹脂詰め事件を起こした経緯もわからない。連続裁判員殺しは「自分の芸術を汚された」っていう明確な動機があるわけだけど。
八尾 確かに。蛙男って謎が多いですよね。そもそもなんで「早苗」なんて女みたいな名前なんだろう、とか。彼の過去を描く番外編も見てみたいな。
──謎のひとつとして、2巻で“佳代の彼氏”としてちらりと顔を覗かせる男が何者なのか、という議論もネット掲示板では盛り上がってましたよ。
八尾 え、てっきり私、この男性は蛙男が扮してるのかと思ってました。確かに改めて見てみたら似ても似つかないですね。
遠藤 カツラで扮装? うーんでも顔が全然違うし。
鎌倉 すごく気になる。実は共犯がいたとか? ……怖い!
八尾 真相を巴先生にぜひ聞いてみたいですね。
鎌倉 言われなかったら気付けなかった。なんか「ミュージアム」って、こういうふうに人と「これってこういうことじゃない?」って言い合いたくなる作品だし、人と話すことでより面白さが何倍にも膨らむと思います。
遠藤 うんうん。言われて初めて気付くことが多くて楽しい。3巻が出たら、ラストシーンの捉え方についていろんな人と意見交換してみたいですね。
「ミュージアム」予告映像
あらすじ
悪魔の蛙男、絶望“最終刑”完遂!! 超戦慄猟奇サスペンスホラー、“殺しの美術館”、衝撃大完結ッ!!! 禁断の最終話を15ページ、緊急加筆ッ―――!! ヤンマガ連載時には見れなかった“悪魔の最終劇”を大解禁!! 巴亮介、単行本未収録“若BUTA”シリーズ!! 「僕らは親友と言う体で」総計80ページ、同時収録ッ!!!
巴亮介(ともえりょうすけ)
1983年12月6日生まれ。神奈川県横浜市出身。第61回ちばてつや賞ヤング部門において「GIRL AND KILLER─オンナと殺し屋─」で大賞受賞。2009年、ヤングマガジン53号(講談社)に同作が掲載されデビューを果たす。2013年7月より、同誌にて「ミュージアム」を連載。