コミックナタリー Power Push - よしむらかな「ムルシエラゴ」

よしむらかな×深見真×成田良悟“信頼できる”マンガ家が描く、“普通の人がいない”百合アクション その魅力を大いに語る

「ひどい人」って、友達間で出る言葉ではないよなと(よしむら)

──こだわりたい部分と、妥協するところは両方必要だと。

「魔法少女特殊戦あすか」1巻より。©Makoto Fukami/SQUARE ENIX ©Seigo Tokiya/SQUARE ENIX ©Naoya Tamura/SQUARE ENIX

深見 そうですね。趣味と嗜好とのバランスは……。このエピソードの中で百合シーンを入れたらなんか変なテンポになっちゃうなとか。入れたいんだけど入れられないところですごく悩んでるんです。

よしむら でも「魔法少女特殊戦あすか」の中でも深見さんの描きたい思いってにじみ出てますよね。女の子が女の子を見て顔を赤らめるシーン描写を1コマ分使って描かれたりしてますけど、そういったシーンって別になくても物語は進むじゃないですか。でも百合を描く上では大切なこだわりだと思います。

成田 1巻でくるみがあすかに「ひどい人 私を魔法少女にしておいて自分は逃げ出すなんて」って言うシーンがありますよね。あすかが「その節はすみません」といった感じで本気で落ち込んでしまう。そこでくるみが「約束はこれからも守ってくださいよね」って、フワって笑うところ。あそこすごく百合を感じます。

「魔法少女特殊戦あすか」1巻より。©Makoto Fukami/SQUARE ENIX ©Seigo Tokiya/SQUARE ENIX ©Naoya Tamura/SQUARE ENIX

よしむら あ、それすごいわかります。そこのシーン、友人を糾弾するときに選んだ言葉が「ひどい人」っていうのがなかなか友達間では出ないよなって。

──異性に言うような含みのある言葉ですよね。

よしむら 「ひどい人」って……なんだか廓の匂いがします。

深見 ははは(笑)。ちょっと時代劇的な感じ。

よしむら そうそう。そういった百合シーンに深見さんなりのこだわりを感じるんです。百合を描きたいんだなあと。

成田先生の書く物語は人間を捉える解像度が高い(深見)

深見 成田先生はヤングガンガンで連載中の「バッカーノ!」のコミカライズはどうなんですか? 原作者として何か意見を出されたりとかは。

成田 作画の藤本新太さんが、私より「バッカーノ!」に詳しいんですよ(笑)。

よしむら へえ。1巻は過去編なんでしたっけ。

藤本新太作画による、コミカライズ版「バッカーノ!」1巻より。©2016 Ryohgo Narita Licensed by KADOKAWA CORPORATION ASCII MEDIA WORKS ©Shinta Fujimoto/SQUARE ENIX

成田 そうですね。今本誌で連載しているところが小説の本編にあたるんですが、1巻の基本的なあらすじは藤本さんにお任せしますと言って描いてもらったんです。そうしたら本当に「私より詳しいよ!」ってくらい、私が忘れてるような細かい設定をどんどん盛り込んでくれていて。私もそれを思い出しながら「そうですね。こういう場面だったらこのキャラはこういうセリフを言います」といった感じでお返して、制作を進めています。

深見 成田先生の書くお話って、人間を捉える解像度が高いですよね。1人の人間を描く上での密度が高い。やっぱり人間を見たときに、解像度が低いとみんな同じに見えてしまうと思うんですよ。“ただ池袋を歩いている若者たち”で終わってしまう。それが解像度が高くなってくると、1人ひとりの人間がクッキリとしてくる。「この高校生にはこんな過去があるかもしれない」とか、今すれ違ったバンで起きていた事件は……とか、そういうのが見えてきて「デュラララ!!」になるのは、想像力とか解像度が高くないとできないと思います。

藤本新太作画によるコミカライズ版「バッカーノ!」より、アイザックとミリア。©2016 Ryohgo Narita Licensed by KADOKAWA CORPORATION ASCII MEDIA WORKS ©Shinta Fujimoto/SQUARE ENIX

成田 ああ、本当ですか。自分ではそこまで意識してなかったです。私は余計なことばかり書いちゃうんですよ。例えば誰かと誰かのできごとに対して、それを見ていた人はどう反応するだろうとか。その2人の成長物語としては、第三者の視点は余計な要素になってしまうから書かないのが正解なはずなんだけど、自分は書きたくなってしまう。だから自然と群像劇になっちゃうんですよね(笑)。

よしむら 群像劇って難しいですよね。こいつはこう考える、一方でこいつはこう考える、って視点をたくさん持っていないといけない。でも描くのは自分1人なわけですよ。成田先生は「余計なことばかり書いてます」とおっしゃってますけど、いろんなキャラの視点に切り替えて物語を書き進めていくっていうのはやっぱりすごいことだと思います。

成田 いやいや。でも「ムルシエラゴ」の7巻部分にあたる、桜剪会のエピソードは今までよりも視点が移り変わっていて、群像劇としても面白くてすごいなと思いましたよ。

黒湖は突き抜けたクズ

──最後に、この座談会をきっかけに伝えておきたいことなどあれば。

深見 リクエストしていいですかね。これからも黒千代のイチャイチャがたくさん見たいです。

よしむら成田 はははは(笑)。

よしむらかなによる座談会のイメージイラスト。

成田 私は要望とかではないんですけど、ひとつ気になっていることがありまして。5巻に出てくる幼女の誘拐の話。あのエピソードで、過去にヒゲおやじを助けた女の子は空ちゃんの母親だって、黒湖だけが気付いてますよね。いつどのタイミングで、母親にその真実を伝えて精神的に攻めるんだろうって気になってます。「たくさんの女の子が死んだのは奥さん、あなたのせいだよ」みたいなことを言って(笑)。そこで傷ついた奥さんを黒湖が慰めて自分に依存させる……という、マッチポンプはいつ見られるんだろうと……。

よしむら こういうことを先輩に言うのもアレなんですけど、歪んでますね(笑)。

成田深見 あははは(笑)。

成田 いやいや。黒湖だけは秘密を握っていて、まだ奥さんとつながっているってことはきっとそういう展開にするんじゃないかなと(笑)。

よしむら これ表には出してませんけど、6巻冒頭の黒湖と空の母親のベッドシーン、これ娘の部屋ですからね。

──ええっ!

成田 よくその口で私に「歪んでますね」と言えましたね(笑)。

よしむら深見 ははは(笑)。

よしむら 歪んでます。「ムルシエラゴ」のキャラクターはみんな歪んでると思います。

深見 いやでも、本当に黒湖の突き抜けたクズ感は貴重ですよ。

「ムルシエラゴ」4巻より。

──でもなんだか愛嬌がありますよね。クズだなと思いますけど、かわいらしさも感じます。

よしむら ああ、本当ですか。それはありがたいです。

深見 これが男ならアウトですよ。「幼女チョロい」なんて言っちゃう男だったら最低。クズですよ(笑)。

よしむら いや、現時点でもうクズですけどね(笑)。

深見 女の子だから許される部分はありますよね。

よしむら 実際にいたら絶対に近寄りたくはないですけど。

成田 まあそうでしょうね(笑)。

よしむら 殺されちゃいますから(笑)。

店舗特典

「ムルシエラゴ」7巻 2016年3月25日(金)発売

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  • フタバ図書各店 イラストペーパー<

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「魔法少女特殊戦あすか」2巻 2016年3月25日(金)発売

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  • とらのあな各店(一部店舗を除く)ミニ冊子(原作シナリオの一部を収録)

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    ミニ冊子(深見真描き下ろし小説収録)

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  • こみらの!各店(一部店舗を除く) イラストカード

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  • BOOKEXPRESS各店(一部店舗を除く)イラストペーパー

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  • 全国のフェア参加書店 しおり

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※特典の配布はなくなり次第終了。配布方法は店舗によって異なる場合あり。

よしむらかな「ムルシエラゴ(7)」 / 2016年3月25日発売 / 576円 / スクウェア・エニックス
「ムルシエラゴ(7)」

世にはびこる凶悪犯罪者に対応するため、超法規的措置によって選ばれた“公的”スローター(大量殺人者)、紅守黒湖。その監視官であり、無類の乗り物好きである相棒、屠桜ひな子。善悪の彼岸で繰り広げられるバイオレンス・アクションがここより始まる!

よしむらかな

よしむらかな

和歌山県出身。「ぬらりひょんの孫」などで知られる椎橋寛のアシスタントを経て、2012年に「超究魔法少女ミーコ」で第1回YGマンガ賞を入選受賞。2013年にヤングガンガン(スクウェア・エニックス)にて読み切り「ムルシエラゴ」を発表し、同年連載化に至った。

深見真(フカミマコト)

深見真

富士見ヤングミステリー大賞を受賞し小説家デビュー。百合、銃器、格闘技などを愛する。小説「ヤングガン・カルナバル」シリーズを手がけ、テレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」では虚淵玄とシナリオを共同執筆。また週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて連載中の「王様達のヴァイキング」では、ストーリー協力などを務める。2015年より月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて「魔法少女特殊戦あすか」の原作を担当。

成田良悟(ナリタリョウゴ)

成田良悟

第9回電撃ゲーム小説大賞にて金賞を受賞した「バッカーノ! The Rolling Bootlegs」にてデビュー。「デュラララ!!」や「越佐大橋シリーズ」といった人気作のほか、「Fate/stay night」のスピンオフノベライズ「Fate/strange Fake」(すべてKADOKAWA)など幅広く手がける。2015年10月よりヤングガンガン(スクウェア・エニックス)にて連載中のマンガ版「バッカーノ!」では、完全監修と銘打ち、原作・監修を担当している。

※プロフィール画像はよしむらかな描き下ろし