コミックナタリー Power Push - 大久保篤が語る「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」

もっと“悪く”! 大久保篤が「モンスト」に放つストライクショット

ゲームをやっていると「おおっ!」ってなるシーンがたくさん

──やり込んでいらっしゃるのが伝わってきます。映画「モンスト」でもモンスターたちのバトルシーンが描かれていましたね。

「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」より、アーサー。

バトルシーン、面白かったです! もっといっぱい観たいくらい。ラスボスと戦ってるアーサーのストライクショットはカッコよかったですね。ゲームでもアーサーを一番使っているので、うれしかったです。あとストライクショットのときのセリフを言うのが熱い。天草四郎(葵が使っているモンスター)の「信仰こそ我らが武器、進め!」とか、ゲームをやっていると「おおっ!」ってなるシーンがたくさんありました。

──気になるキャラクターはいましたか?

冒頭のバトルシーンで神威がロープに縛られて、いいところがなくてちょっとかわいそうでした(笑)。あとはカグツチかな。

──カグツチは3DS版に登場するモンスターですね。

「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」より、カグツチ。

そうなんですよ。アプリ版にはいないから持っていなくて、なおさら興味が湧きましたね。それに連載中の「炎炎ノ消防隊」は火の能力者ばかりのマンガなので、火属性のカグツチは気になります。

──「炎炎」では消防士たちのバトルが描かれていますが、戦闘シーンを描くうえでどんなところにこだわっていますか?

僕はわかりやすさを大事にしていて。キャラクターが何をやっているのか、どっちに向かっていってどう飛んでいったのかが読者に伝わるように、いつも意識しています。

──最近のエピソードだと第7特殊消防隊の紅丸と第8特殊消防隊の桜備の大隊長対決、カッコいい殴り合いでした。

ありがとうございます! 確かにあのあたりはキャラクターがどんな動きをしているのかわかりやすいかもしれませんね。逆にわかりにくくすることで“すごい必殺技感”を出すこともあるんですよ。僕の中では、「聖闘士星矢」系の表現というか。

──「聖闘士星矢」系?

例えば氷河が「ダイヤモンドダスト!!」って叫んで必殺技を打ち込むと、「どういう動きを繰り出しているのかは正直よくわかんないけどすげえ!」ってなるじゃないですか。ああいうカッコよさの出し方もあるな、と。

──なるほど! 先ほど映画のバトルシーンが面白かったとおっしゃっていましたが、マンガとアニメではアクションの描き方は違いますか?

「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」より。

アニメは止まった絵を連続させて動かす作業ですけど、マンガは止まっている絵を動いているように描く作業だと思います。やっていることがまったく別なんですよね。マンガは効果線を使ったり、あえて人物や背景をグニャって歪ませて、スピードが出ているように見せる描き方をしたりします。アニメでもそういう表現はあると思いますが、大勢の方が作画をする作品だと難しいだろうなって思います。マンガは躍動感のある絵で、アニメは躍動感のある動き……というのでしょうか。それに加えてCGをうまく使用している映画「モンスト」は、素晴らしい躍動感でした。ストライクショットをぶっ放すアクションなので、かなり爽快感があって気持ちよかったです。

──“爽快感”はゲームの「モンスト」とも共通する要素かもしれませんね。

共通といえば映画を観終わった後にYouTubeのアニメの戦闘シーンをちょこっと観てみたんですけど、そっちもゲームっぽさが出ていてよかったです。坂本龍馬(「モンスト」のモンスター)と一緒に全員で敵に攻撃するところは、龍馬のストライクショットの「号令」を再現していたし、攻撃すればするほど攻撃力がダウンしてしまうオベリスクを(同じく「モンスト」のモンスターである)ウリエルが攻撃したのは、ウリエルのアビリティだと固定のダメージを入れられるから。こういうの、ゲームファンは楽しいですよね。見応えがありました!

いけないことをするという後ろめたさが子供心を刺激する

──映画では、YouTube版では謎に包まれていた主人公のレンの過去が明らかになります。

先にYouTubeのアニメを観ておけば、レンに記憶がない理由や春馬の両親のことなど、いろいろ答え合わせができますね。

──映画「モンスト」は弱っているドラゴンを元の世界に戻すため、少年少女たちが謎の敵と戦いながら“ゲート”がある島根を目指す、ロードムービーの側面もあるジュブナイルものです。もし、少年マンガ家である大久保先生が、「モンスト」をマンガにするとしたら、どのような内容にしますか?

少年マンガ家としてですか……。僕だったら、レンたちが島根を目指す理由をもっと後ろめたいことにするかなあ。

──と言いますと?

「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」より。

この映画は4人の子供の冒険であるところとか、メインビジュアルの線路とか、結構「スタンド・バイ・ミー」を意識されているように思えたんです。「スタンド・バイ・ミー」って主人公の子供たちの目的がとってもわかりやすくて納得できるんです。ただ「死体を探しにいく」というだけ。子供って、死体をめちゃくちゃ見たいものだと思うんですよ。

──えっ!?

僕が子供の頃、最寄り駅で電車の飛び込み自殺があったとき、クラスメイトと学校を抜け出したのをよく覚えています。興味や好奇心もすごくあったんですけど、いけないことをするという後ろめたさが余計に子供心を刺激したというか。子供って「スタンド・バイ・ミー」みたいに、行動する目的が悪いほうが実はリアルなんじゃないかなと。きっとワクワクするんですよ。背伸びしたいと言いますか。

──確かに好奇心から死体を探しにいく旅は、ドラゴンを救うための旅とは違って後ろめたいですね。

「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」より。

レンたちは、春馬の親に車を貸してもらったりと、大人から冒険の後押しをされていますよね。僕は親や大人に「ダメだ! 行っちゃダメだ!」って言われながらも「うるせえ! 行くんだ!」というふうに、反発して行動するほうがワクワクするんですよね。歪んでるのかな……(笑)。

──どうでしょう(笑)。では最後に映画「モンスト」の魅力について、改めて一言お願いします。

大久保篤

ゲームの設定やYouTube版の伏線の回収など、「モンスト」のファンの人たちにはたまらない出来の作品になっていると思います。これだけプレイヤーの気持ちをしっかり汲んだ作品に仕上げるのは、とても大変だったんじゃないでしょうか。また、映画の中では、ゲームのキャラクターが派手に動くシーンが観られるので、ゲームの方で「モンスト」の世界観に入り込めなかった人にも、ぜひ観てほしいです。かくいう僕も、映画を観終わった後、手が震えて原稿が描けませんでした。気が付いたら、原稿が湿っているんですよ。何かと思ったら、僕の涙でした。新クエストのヒントもあるかもしれないですよ!

CONTENTS INDEX
特集トップ・作品紹介
ジャングルポケット 斉藤慎二
ヨーロッパ企画 上田誠&角田貴志
スタジオジブリ 鈴木敏夫
超特急 リョウガ&ユーキ
大久保篤
映画「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」2016年12月10日(土)公開
「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」

小学4年生の焔レンは、3人のチームメイトとともにゲーム「モンスト」の開発に協力していた。ある日レンたちは研究所の地下で、現実世界にいるはずのないドラゴンを目撃する。弱っているドラゴンをもとの世界に戻すため、“ゲート”を目指し旅に出ることになった4人。その目的地は、かつてレンの父が失踪した場所でもあった。身勝手なレンはチームの輪を乱し仲間と衝突するが、徐々に自分が1人で生きているわけではないことに気付いていく。

スタッフ

監督:江崎慎平
脚本:岸本卓
ストーリー構成:イシイジロウ、加藤陽一
キャラクターデザイン原案:岩元辰郎
モンスターデザイン原案:近藤雅之
キャラクターデザイン・総作画監督:金子志津枝
美術監督:加藤浩、坂上裕文
色彩設計:大西峰代
チーフCGIディレクター:福島涼太
CG演出:川原智弘
音響監督:明田川仁
音楽:MONACA
撮影監督:野村竜矢
編集:長谷川舞
制作:ライデンフィルム、ウルトラスーパーピクチャーズ、XFLAG PICTURES
製作:XFLAG
配給:ワーナー・ブラザース映画

キャスト

焔レン:坂本真綾(小学生時代)/ 小林裕介(中学生時代)
水澤葵:Lynn
神倶土春馬:村中知
若葉皆実:木村珠莉
影月明:河西健吾
石橋健太郎:北大路欣也
オルタナティブドラゴン:福島潤
アーサー:水樹奈々
ゲノム:山寺宏一
エポカ:水瀬いのり

主題歌

ナオト・インティライミ「夢のありか」

大久保篤(オオクボアツシ)

2001年に「一善の骨」でデビュー。「ソウルイーター」は月刊少年ガンガン2004年6月号(スクウェア・エニックス)より約9年にわたり連載され、テレビアニメ化も果たした。その後、「ソウルイーター」の外伝である「ソウルイーターノット!」を同誌2011年2月号より連載し、2014年にテレビアニメ化。2015年より週刊少年マガジン(講談社)にて「炎炎ノ消防隊」を連載中。

大久保篤「炎炎ノ消防隊」(6)
12月16日発売 / 講談社
「炎炎ノ消防隊」(6)
463円
Kindle版 / 432円
限定版 / 1404円