コミックナタリー PowerPush - 未来日記
マンガ実写化のプリンス、岡田将生が語る TVドラマ版「未来日記」の魅力と難所
演じながら自分自身も一緒に成長していく感覚があった
──特に印象に残っている撮影中のエピソードはありますか?
最後の、由乃と新太がお別れするシーンです。ドラマってストーリーの流れや感情の流れとは関係なく、シーンごとバラバラに撮影していくことが多いんで、そういう時って気持ちの切り替えが少し難しいんですね。もちろん普段はそれでもちゃんと切り替えて撮影しているんですが、最後のシーンだけはどうしても一連の流れで演じたいねと、剛力(彩芽)さんと2人で話し合って。スタッフさんにそれを伝えたら、理解して協力してくださったんです。だからあのシーンは気持ちの入り方が違うというか、「やりきったな!」っていう達成感があって。思い返すと今でもすごくうれしくて、心に残っています。
──撮影で苦労したシーンはありましたか?
原作とはストーリー展開が違うんですが、ドラマの方も「現実世界と仮想世界を行き来する」というかなり壮大な話でしたので、よく共演者の人たちとは「自分がどっちの世界にいるかがわからなくなる」って話をしてました。「これはどっち(を撮影してるの)だっけ?」って(笑)。さっきも言ったけどドラマはストーリーの時系列順に撮るわけではないので余計に、現実に戻って仮想空間に行ってまた現実に行って、ということが1日に何度もあって。そういう面ではかなり苦労しましたね。
──サバイバルゲームということで戦うシーンも多かったかと思いますが。
いや……、それが正直、僕自身は(戦闘シーンが)全然なくて。手を下すのはすべて由乃(剛力彩芽)が、という(笑)。
──確かにそうですね。ヒロインにひたすら守られ続ける主人公。
そうそう(笑)。同じ男としてはちょっと複雑な気分にもなりましたけど、まあそれが新太のキャラクターだし、個性なんだろうなと思います。それに後半はちゃんと頼もしくなっていきますので。
──物語が進むに連れて、情けなかった新太の気持ちも変化していますね。責任感が出てきたというか、自分が助かりたい、ではなく大切な人を救うために自分が頑張らなきゃ、と。
自分が生き抜くために誰かを倒していかなければいけない、というのはこのドラマのいちばんハードな部分ですが、消えていく他の所有者たちの思いを背負って生きてかなきゃいけない、という気持ちが新太を成長させたんじゃないかなと思います。「未来日記」は新太の成長物語でもあると思うので、そこは丁寧に見せたかった。
──今まで何不自由なく生活していた、ただの大学生にはかなりハードな状況ですよね。
でもそういう恐怖を乗り越えたから新太は成長できたんだと思います。最初はあんなにだらしなかったのに、目の前の事件を解決していく中で、辛い出来事や経験をプラスに成長していく新太には結構感動しましたね。演じながら僕自身も一緒に成長していく感覚がありました。
もし本当に未来日記があったら
──もし岡田さんが実際に、未来日記を手に入れたらどうしますか?
僕は使わないです!
──即答でNOですか! かなり誘惑的なアイテムだとは思いますけど……。
いや、僕も実際に未来日記を手渡されたらどうするか分かんないですけど……。頼りたくなる気持ちも分かりますし、甘えてしまう部分も絶対あるので。ドラマの撮影中、精神的に疲れてたときとか、先のことがわかればな、と思ったときもありました。ただきっと、1回見てしまったら止められなくなると思うので……僕は見る前に壊します(笑)。
──演じられたからこそ、そう感じるのかもしれないですね。疑似体験のような。
それもあると思いますね。演じた経験も踏まえて考えると、未来なんて知らないほうが面白いんじゃないかなと今は思っています。
──ただこの未来日記の面白いところは、未来を変えられるところですよね。絶対に避けられない未来として日記に書かれているだけではないですから。
確かにそうですね。もし僕が実際に使わなければいけない、という状況になったらどんどん行動していって変えていったほうがいいなと思います。まあでもそれはそれで結構怖いかな……。
──怖いといえば、この作品の重要キャラクターである由乃も、ある意味怖い女の子ですよね。ドラマではだいぶマイルドにはなっていましたけど。
撮影が始まった頃は現場の男性陣と「本当にこんな人がいたらどうします?」っていう話はよくしてました。
──また由乃がかわいいから無下にもできないみたいな……。
それが男の弱さでもありますからね(笑)。
──物語の後半では由乃の行動の理由というのもわかってきますので、納得する部分もあると思うんですけど。
演じてるうちにだんだんかわいいなーと思えてくるんですよね。あの一途さというか、自分のために身を投げ打ってくれるっていう。ただ終わってみると、やっぱり僕がその相手をするのはちょっと無理だなって(笑)。……まあ第三者的に応援していたいなっていう感じで。
原作者の方に満足していただけるのがいちばん嬉しい
──「未来日記」に限らず、「天然コケッコー」(くらもちふさこ原作/2007年)の大沢広海役や、「宇宙兄弟」(小山宙哉原作/2012年)の南波日々人役など、マンガ原作の作品を演じられる機会が多いかと思うのですが。
これまでいろいろなマンガ原作の作品に出させていただいたんですが、実はそれほど気にしてなくて。ファンの方々のことを考えると、容姿はなるべく近づけたいなとは思いますけど。今回は年齢の設定が変わったのでそこも気にする必要なかったですし。
──原作者がいてファンの方がいて、すでに愛されているキャラを演じるっていうのは難しい部分もあるかと思いますが。
僕は意識し過ぎないようにしています。最初は気にしていたこともあったんですが、実際に動いている人間が演じるものと、マンガで描かれるものというのはどうしても違ってきますし。作品単体で見た時に、物語やキャラの関係性が成立していて、なおかつ面白ければそれでいいじゃないか、と思うようになりました。
──変に原作を意識し過ぎないで、実写は実写としての完成度を目指すと。
はい。マンガはマンガ、ドラマはドラマとして観てくれる人が楽しんでいただければいいかなと。でも、当然原作への尊敬は絶対忘れませんし、いちばん大切にしなければいけないと思っています。僕は原作者の方に満足していただけるのがいちばん嬉しいですね。
──では原作者のえすのサカエ先生にメッセージがあればお願いします。
メッセージですか……。「ドラマの新太で大丈夫でしたか? もし違ったら本当にすみません」と伝えてください。
──メッセージ確かにお預かりしました。本日はありがとうございました。
「未来日記」DVD / Blu-ray 2012年10月5日発売
岡田将生 (おかだまさき)
1989年8月15日東京都生まれ、AB型。スカウトがきっかけで芸能活動を開始し、2007年、映画「天然コケッコー」で主演・夏帆の相手役に抜擢されブレイク。以降テレビドラマ「生徒諸君!」「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」「オトメン(乙男)~夏~」映画「宇宙兄弟」とマンガ原作の作品でメインキャストを多く務めてきた。2010年には第34回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を、「悪人」「告白」の2作品で受賞。
えすのサカエ
2001年、「鉄道天使」で第11回エース&ネクスト新人漫画賞奨励賞を受賞。2006年に月刊少年エース(角川書店)にて連載開始した「未来日記」は、シリーズ全14巻、累計400万部の大ヒットに。アニメ、ゲーム、ドラマと多メディア展開もなされた。目下、月刊少年エースで「ビッグオーダー」を連載中。