南マキ画業20周年インタビュー|「美容系YouTuberの話を描きたい!」気が付いたらメイクブラシ200本越え 「S・A」「声優かっ!」の南マキの新たな挑戦

2001年にデビューした南マキが、今年で画業20周年を迎えた。2003年に花とゆめ(白泉社)で連載を開始し、アニメ化もされた「S・A」、高校の“声優科”を舞台にした「声優かっ!」、元お嬢様と天才パティシエを描いた「こももコンフィズリー」、クイズに焦点を当てた「ピンポンラッシュ!」など、これまでさまざまな題材に取り組んできた南。現在はLINEマンガで、化粧品のマーケティングを学ぶ女子大生と美容系人気YouTuberの成長物語「Get Ready?」を連載している。20年の間、ひたむきにマンガを描き続けていた南に、これまでの作品への思いや最新作「Get Ready?」の裏話などをじっくりと聞いた。

取材・文 / 佐藤希

南マキ画業20周年年表

2001

「デイ・ドリーム・ビリーバー」
第25回アテナ新人大賞の佳作受賞作品。ザ花とゆめ2001年8/1月号
「彼方の青」
ザ花とゆめ2001年10/1号

2002

「はんぶんポテト」
ザ花とゆめ2002年1/1号
「S-ピープル」
ザ花とゆめ2002年8/1号

2003

「うそつきなシンデレラ」
ザ花とゆめ2003年2/1号
「シアワセ食卓」
「シアワセ食卓」
花とゆめ2003年7号
「S・A」
全17巻
「S・A」
南の初連載作品にして、代表作。超金持ちエリート校・白選館高校の特別クラスを舞台に、大工棟梁の娘・光と彼女のライバル・彗の関係を描く学園ラブストーリー。2008年にはTVアニメ化された。ザ花とゆめ2003年4/1日号~2004年4/1日号、花とゆめ2004年8号~花とゆめ2009年8号
「食の都」
花とゆめ2003年16号

2004

「雪、あたたか。」
ザ花とゆめ2004年2/1号
「キミはガールフレンド」
「キミはガールフレンド」
超天邪鬼かつ高飛車のため、いつもうっかりひどいことを口走ってしまう杉菜初音と、“乙女同好会”部長・小金沢桐重の関係を描くラブコメディ。女友達がほしいと願っていた初音が、男ながら誰よりも女らしい桐重に惹かれていくさまを描く。花とゆめ2004年1号、6号、ザ花とゆめ2004年8/1日号、12/1号

2005

「毎日が宝物」
ザ花とゆめ2005年8/1号

2007

「バツサン」
花とゆめ2007年24号

2008

「S・A」がTVアニメ化
2008年4月より全12話で放送。光役を後藤巴子、彗役を福山潤が担当し、宮尾佳和が監督を務めた。

2009

「アネ☆モネ生花店
―南マキ傑作短編集」
「アネ☆モネ生花店―南マキ傑作短編集」
南による初の短編集。小柄で童顔な女子高生・佐伯モネと、生花店次男・姉崎蓮(通称:アネ君)の恋を描く表題作「アネ☆モネ生花店」を含む読み切り4編が収録された。
「声優かっ!」
全12巻
「声優かっ!」
「S・A」のTVアニメ化により、南が声優という職業に興味を抱いたことから生まれた作品。声優志望の主人公・木野姫が「可愛い声を出そうとするとダミ声になってしまう」という弱点を抱えながらも奮闘するさまが描かれた。花とゆめ2009年14号~2013年5号

2013

「こももコンフィズリー」
全5巻
「こももコンフィズリー」
家が没落し「元」お嬢様となってしまった主人公・胡桃(こもも)と、昔は使用人の息子として彼女にこき使われていたが天才パティシエとして成功した捺(なつ)による主従逆転スイーツコメディ。花とゆめ2013年12号~2015年1号
「ハルの雨」
ザ花とゆめ2013年6/1号

2014

「トワイライトアワー」
ザ花とゆめ2014年6/1号

2015

「恋は人の外」
全3巻
「恋は人の外」
腕っぷしの強い女子・津雲小夜と、彼女と10年前に契約を結んだ化け物・陽による妖ロマンス。南にとって初めてのファンタジー作品だ。花とゆめ2015年20号~2016年17号
「トリとメガネと椎名さん」
ザ花とゆめ2015年3/1号

2016

「飴宮さんとムチ」
別冊花とゆめ2016年11月号

2017

「ピンポンラッシュ!」
全4巻
「ピンポンラッシュ!」
別冊花とゆめでの移籍連載。クイズエリートたちが集う学園に豪華な学食目当てで入学した、食いしん坊な女子・陽(ひな)を主人公とする、クイズ×大食いのラブコメディだ。別冊花とゆめ2017年4月号~2018年7月号

2019

「おしゃピクしませんか?」
全2巻
「おしゃピクしませんか?」
メロディで発表されたピクニック漫画。女子小学生から主婦まで幅広い年代の女子4人が、「おしゃれなピクニック(=おしゃピク)」を通じて熱い友情を育んでいく。メロディ2019年2月号~2020年8月号
「Get Ready?」
「Get Ready?」
LINEマンガで連載中の最新作。大学で化粧品のマーケティングの勉強をしている涼と、美容系人気ユーチューバーのイチカがタッグを組み、配信を通じてメイクの楽しさを伝えていく物語だ。LINEマンガ2019年7月21日~

南マキインタビュー

念願が叶ったうれしさがすごかった

──画業20周年、おめでとうございます! 20年間マンガを描き続けてきたご感想をお願いいたします。

あっという間でした……! 20年も続けることができてよかったなと思います。このままずっとマンガを描き続けられるようがんばります。

──この20年間で最も思い出深いことはなんでしょうか?

南にとって初の単行本となった「S・A」1巻。

初めてコミックスが出たときです。念願が叶ったうれしさがすごかったですし、本屋さんに行って売ってるのを確認したりしました。母も喜んでくれたようで某書店の私のコミックスを買い占め、我が家に大量のコミックスが……!

──お母様もさぞうれしかったんでしょうね(笑)。ご家族の声援ももちろんですが、この20年でファンからもたくさんの応援メッセージが寄せられてきたことと思います。印象に残っている読者からの反響や感想は何かありますか?

選べないほどありがたく印象に残ったメッセージがたくさんありますが、あえて選ぶとしたら「S・A」を描いているときに当時高校生だった方から「ファンレターに毎回2枚ずつラーメントランプを入れて、52枚揃うまでお手紙出し続けます!」と書いてあり、実際2枚のラーメントランプが入っていました。

──えっ、ラーメンの写真入りトランプが?

ええ。そのトランプが52枚全部私の元に揃って「すごい! 本当に全部揃った……!」と感動したのが、印象に残った応援メッセージの1つです。

──それはすごい……! その方も今回のインタビューを読んでくださったらいいですね。作品のお話に移る前に、南先生ご自身について伺ってまいります。まず、マンガ家を志したきっかけを教えていただけますか?

もともとマンガを描くのが好きで。小学生の頃は誰に読ませるわけでもなくこっそりノートにマンガを描いていたのですが、高校のとき小さい紙に絵本タッチのラブコメ本を作って友人に読ませてみたら、あっという間にクラスのみんなに読んでもらって「続きを!」と楽しんでもらったのがとても楽しくて。それをきっかけに、人に読んでもらえるマンガを描きたいなと強く思うようになりました。

──デビューを目指して本格的に描き始めたのは、いつ頃からだったんでしょう。

本格的に描いたのは高校3年のときです。白泉社ではない出版社さんに投稿して箸にも棒にもかからない結果で落ち込んだ思い出があります……。内容は明らかに背伸びした、恋愛全振りマンガでした。そのときは“友人を楽しませる”マンガと“マンガを描くために描いた”マンガを描いていましたが、クラスメイトを楽しませるための、その場の勢いだけのギャグ満載なマンガを描くのが楽しかったです。

──子供の頃から憧れている、もしくは影響を受けた作家の方はいらっしゃいますか?

憧れた作家さんはたくさんいます。くらもちふさこ先生の描くクールな男の人がカッコよくて、それを目指して男の子キャラを描くのですがどうにも私には難しいです……。恋愛の要素は荻原規子先生の小説からとても影響を受けています。ストーリーが恋愛全振りではないけど、すごくときめくところがある、というバランスが私としては理想的でした!

──なるほど。絵柄について、ご自身で特徴的だと感じている点はどこでしょうか? 執筆の際にこだわっている部分も伺いたいです。

特徴は自分では思いつかないですし、全然満足していないので日々勉強したいなと思っています。執筆のときに気を付けているのは、デッサンや基本ができていないので、まずラフを描いて、人物の全裸下描き、そして洋服を着ている下描きと、3段階の下絵を描いたのち、なるべくペン入れは細かく丁寧になるように心がけています。ざっと描くと下手さが目立ってしまうので……!

「デイ・ドリーム・ビリーバー」の扉ページ。

──ものすごく慎重に進めていらっしゃるんですね。南先生は2000年に「デイ・ドリーム・ビリーバー」で第25回白泉社アテナ新人大賞の佳作を受賞されました。投稿先に白泉社を選ばれたのはなぜだったんでしょうか。

恋愛全振りではないちょうどよいバランスの素敵な作品がたくさんあって、自分もそういったものが描きたいなと思っていたので白泉社さんに投稿しました!

──デビュー前は花とゆめ、もしくは白泉社発行のマンガ雑誌を読まれていたんでしょうか?

私はコミックス派かつ別冊マーガレット派で、実は白泉社さん発行の雑誌は買ったことがなかったんです……。白泉社さんでめちゃくちゃ好きなマンガは、ひかわきょうこ先生の「彼方から」と星野架名先生の「妙子シリーズ」です。毎度のことながら、恋愛と別の部分のバランスがすごく好みだったのです。イザークがカッコよかった……私には描けないキャラクターだと思っています。