南マキ画業20周年インタビュー|「美容系YouTuberの話を描きたい!」気が付いたらメイクブラシ200本越え 「S・A」「声優かっ!」の南マキの新たな挑戦

皆さんそれぞれにドラマがあって楽しかった

──南先生は主に花とゆめ、ザ花とゆめで作品を発表されてきましたが、2017年には別冊花とゆめで「ピンポンラッシュ!」、2019年にはメロディで「おしゃピクしませんか?」を連載されています。雑誌によってカラーや読者層が変わってくるかと思いますが、この2誌に移籍された際はどういうお気持ちでしたか?

自分は器用ではないので「こういう雑誌だから、テイストに合わせなきゃ」と思って描くと絶対失敗すると思い、あまりスタンスを変えずに描いていました。登場人物の年齢が上がっても、やっていることは大きくは変わっていないです。花とゆめを出たとき、ちょっと作風の選択肢が増えた気がしましたが、自分はそこまで器用ではなかったので、よりそう思いました。

「Get Ready?」のカラーイラスト。

──最新作「Get Ready?」はLINEマンガでの連載ですね。コスメ好きの大学生・涼と、美容系YouTuber・イチカのお話ですが、どういうきっかけで生まれた物語なんでしょうか?

2015年くらいから「真面目にコスメを勉強しよう……」と思い立って、YouTubeで美容系YouTuberさんの映像を観まくっていたらだんだん楽しくなってきたんです。気が付けばお気に入りYouTuberさんや手持ちのコスメも増えて、コスメ雑誌やサイトを漁るような状態になっていて、新作のお話をいただいたとき「美容系YouTuberの話を描きたい!」と強く思いました。あと男装、女装という萌えもあるのでとても描いていて楽しいです。

──単行本の第1巻は2020年4月に発売されましたね。コロナ禍の巣ごもり需要もあって美容系配信者に注目する視聴者がとても増えた時期でした。

そうでしたね。でも作中ではあまりコロナ禍を意識してはいないので、作中のキャラはほぼマスクをしていません。コスメやメイクって楽しいし誰でもやってみるといいと思うよ!とか、何かに興味あるのって楽しいよね!とか、何か少しでも共感してもらえたらうれしいなという気持ちで描いています。

──メイクの方法や実在のコスメがたくさん登場するので、読んでいて非常に勉強になります。配信を行うシーンも描写がとても詳細なのですが、配信のやり方などは取材をされたんでしょうか?

コスメのゼミがある大学に取材させていただきました。学生さんがコスメに興味を持ったきっかけなどを聞けて、皆さんそれぞれにドラマがあって楽しかったです! 美容系YouTuberさんや配信者さんにものすごく取材させていただきたいのですが、今はコロナ禍で難しい部分もあるので、いつか取材できたらいいなと担当さんにめっちゃお願いしています。

──なるほど。コスメやメイク法はどう勉強されたんでしょうか。

「Get Ready?」第2話より。

メイクの方法はほぼYouTubeで日本から海外までのいろんな美容系YouTuberさんをチェックして、自分でもやってみて「これはいいな!」と思った方法を描いています。いろいろ買っては試してみたので私の所持コスメとブラシの数がすごいことになっています。所持してるブラシを数えたら200本を超えていました。

──200本……! 確かにすごい数ですね、南先生が集められた資料をいつか拝見してみたいです。8月19日には最新5巻が発売されます。5巻でアピールしたいポイントや、今後の展開で注目してほしいことを教えてください。

5巻はたくさんの新キャラ美容系YouTuberが出てきますので、女子たちがワイワイしている様子を楽しんでいただけたらうれしいです。今後は私の作品で多分一番ヘイトを集めているキャラクター・多和田颯真の動向とイチカの成長を観ていただけるとうれしいです!(笑)。

現代ではないものを描いてみたいという憧れ

──光や姫、涼など、南先生の描かれるヒロインは間違ったことには毅然と立ち向かう男気を内包した女の子が多いように感じました。南先生の理想のヒロイン像はどういう女の子でしょうか?

「S・A」のカラーイラスト。

私のヒロインは、ヒーローよりヒーローな気がしてならず、時々「あれ、このヒーロー……ヒロインっぽくないか……?」と我に返ることがあります。理想のヒロイン像は映画「バーフバリ」シリーズのデーヴァセーナです! めっちゃしびれるヒロインです!

──デーヴァセーナは美しくて気高く、腕っぷしも強いという姫でしたね。光に通じる部分もあるような気がします。ちなみに、南先生が女の子を描くうえでこだわっているポイントはどこですか?

どんな些細なことでもいいから、必ず主人公の「目的」を作ることです。何かを目指してたり、何もない子が成長していく姿が好きなので。

──なるほど。物語の舞台設定についてもお話を伺いたいのですが「S・A」の白選館高等学校、「声優かっ!」のヒイラギ学園高等学校、「ピンポンラッシュ!」の智慧学園など、南先生の作品では学校自体に特徴がある高校が登場します。南先生がもし、自分の理想を詰め込んだ高校を作れるとしたらどんな学校にしたいですか?

学食が豪華とか、制服が数パターンかあってチョイスが楽しい、とかでしょうか。でも描くとしたらファンタジーっぽい世界観の学校を描いてみたいかもしれないです。理想なので、それを活かしたものが描けるかは別なのですが、制服を思い切り1900年代のフランスっぽいレースを使ったものにしたり……!

──すごく素敵です! もしその学校を舞台にした新たな物語を描くとしたら、どんなキャラクターを登場させたいかもお聞きしたいです。

思い切り西洋風の人が多い中に、1人だけ日本人形みたいな子がいるとか。周りからは思い切り異物扱いを受けているけど、本人は目指すものがあるので、そんな外野にはまったく目も向けず成長していくとか……いつもの感じですね!

──先ほどの「主人公の成長する姿が好き」というお話につながってきますね。ぜひ読んでみたいです! 南先生はこの20年間でラブコメやファンタジーなどいろんなテイストの作品に挑戦されてきましたが、作家として今後挑戦したいことはなんでしょうか?

「こももコンフィズリー」第1話より、捺が自分の店を構えるパサージュ。

現代ではないものを描いてみたいという憧れがあるのと、「こももコンフィズリー」で描いたようなパサージュ(※)が出るマンガをもう1回描きたいな……と思っています。読み切りか何かで一度恋愛に特化した話も描いてみたいけれど、うまく描ける自信がないです……!

※フランス語で「通り抜け」という意味。アーケードで覆われた通路に店が並ぶ商店街。

──いえいえ、南先生の恋愛マンガまた読みたいです! それでは最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

ここまで読んでくださってありがとうございます! 皆さまが楽しんでいただけるマンガをこれからも描き続けていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします!

南マキ(ミナミマキ)
南マキ
2000年に「デイ・ドリーム・ビリーバー」で第25回白泉社アテナ新人大賞の佳作を受賞。2001年、ザ花とゆめ(白泉社)に掲載された「彼方の青」でデビューを飾った。2003年から2009年までザ花とゆめおよび花とゆめ(白泉社)で連載した「S・A(スペシャル・エー)」は、2008年にTVアニメ化。そのほか「声優かっ!」「こももコンフィズリー」などを花とゆめで連載。2017年に別冊花とゆめで「ピンポンラッシュ!」、2019年にメロディ(ともに白泉社)で「おしゃピクしませんか?」と活躍の場を移して作品を発表。現在はLINEマンガで「Get Ready?」を連載中。