「NOMAD メガロボクス2」|“百獣の王”が語る、アスリートの挫折と復活 武井壮インタビュー

僕も一歩間違えればギアレス・ソーですよ

──ブランディングの話が出ましたが、「メガロボクス」1作目で最初は無名だったジョーが、業界トップの勇利と戦うために、トーナメントまでの短期間で知名度を上げるために取った作戦が、ギアを使わずにメガロボクスに挑んだことなんですよ。リングネームも「ギアレス・ジョー」にして、「1人だけ生身だぞ」って話題になるという。それもブランディングですよね。

武井壮

なるほど、いいですね。人と同じ道を行かない、ニュースバリューを持たせるっていうのがブランディングですから。

──そんなジョーが「メガロボクス2」で復活するにはどういうブランディングをすればいいと思いますか?

まずTikTokでバズるとか、それぐらいから入ってみてもいいですよね(笑)。ハンドボール日本代表キャプテンの土井レミイ杏利選手みたいな。土井選手も1回、僕のところに来て「有名になるにはどうすればいいですか」みたいな話をしたことがあります。そのとき彼は「TikTokで勝負賭けます」と話していて、そこからがんばった結果、フォロワー200万人になってますから。すごいですよねえ。

──ジョーのTikTok、いいですね。1回チャンピオンになったんだから知名度はあるし、ギャップもあって面白そうです(笑)。

「NOMAD メガロボクス2」より。

「あれ!? ギアレス・ジョー、すっごいポップになったじゃん! かわいいー!」って。ギアにもなんかお花とか描いて、衣装もかわいくして、はやりの曲もつけて。そういうふうにやったら企業案件もくると思いますよ。

──引退後の長州力さんみたいな路線で(笑)。

それか、恥を忍んで昔の名前を使う。

──今はジョーの名前を捨てて「ノマド」と名乗ってるぐらいですが、堂々と「昔は有名だった」と言ったほうがいいと。

知名度と自分の人脈を使って、プロデューサーとして最先端の企業とタッグを組んで世界最高のギアを開発するかですね。そして「自分がこのギアを着けて、もう一度世界を獲ります」っていうストーリーをYouTubeで配信していくのもありじゃないかなと思います。

──なるほど……とはいえ、そんな生き方を、おそらくこの不器用なジョーはしないのではないかと。

そうやって、「おそらくしないだろう」って思われてるからこそ効き目があるんじゃないですか、と僕は思うんですけど。うちの事務所に入れって言いたいですね。僕だって不器用ですよ。39歳までほぼ無職って、完全に不器用じゃないですか(笑)。

──そうですね(笑)。

一流企業からお声がけいただいたこともあったし、大学の先生の話もあったし。プロスポーツ選手からも「トレーナーになってくれ」とオファーをいただいたこともありましたが、「人を輝かせるためだけに仕事したくない」って断ってしまって……。今のマネージャーと出会って、中居さんの番組に出られたから今があるけど、本当は不器用ですよ。一歩間違えれば落ちぶれてギアレス・ソーになっていた可能性も全然ある(笑)。

「NOMAD メガロボクス2」より。

──ギアレス・ソーとして酒場でクダを巻いていたかもしれない(笑)。

だからジョーと似てる部分はあると思うんですけど、僕はプライドを捨てられるんですよね。ジョーは強さだけを求めていた自分を愛しているから、今の暮らしが受け入れられないわけじゃないですか。僕は「体力だけじゃなくて、知識とか全部混ぜて戦うことができるから今の世界では強い」って考えられるんですね。心の持ちようを変化させて、そこにプライドを持てるようになったのを覚えてます。だから彼もプライドを捨てるわけでなく、戦い方を変えればいい。実際、体力は落ちてるわけですよね。ボディを打たれて「ガフッ」ってなってたシーンもあったし。今の彼が、何を伸ばして勝利に結びつけるのかは、僕も参考にしたいです。

一度でも「あの頃は楽しかった」という話をしたことがある人へ

──その貪欲さ、さすがです。ここからジョーが試合に出るのか、違う形で戦うのかはわかりませんが、楽しみですよね。さて「メガロボクス2」のキャッチコピーは「もう一度、夢を生きる」というものです。武井さんもある意味、人に夢を与える立場だと思うんですが、そういう存在として気を付けていることはありますか。

武井壮

成長し続けることで「毎日が自分史上最高」の自分で生きるというのをテーマにしているので、そのために毎日1時間以内でフィジカルのトレーニングをすること、そして1時間は新しい技術の習得をして、もう1時間は知らないことやうろ覚えなことを学ぶ。芸能の修業を始めてから10何年も、これはほぼ欠かしてないですね。夢が叶わない一番の原因って、自分が変わらないことですから。アスリートの後輩で「現状をなんとかしたいんです」って僕のところに相談に来て、1年後にまた来る人間っていっぱいいるんです。そこで「俺が言ってることやった?」「この1年で何か身につけたものってある?」って聞くと「いや、ちょっと……そんなにはやってないです」みたいな子が多い。

──耳が痛い読者も多いと思います。

毎日アップデートしていけば、たとえ夢が叶わなくても、どこかにはたどり着くっていうか、誰かには必要にされる人間になると思いますよ。

──フィジカル面だけじゃなくて、技術と知識も毎日学ばれてるっていうのがすごいですね。

タレントの仕事ってアウトプットですから、僕みたいに毎日テレビに出ていたらすぐ空っぽになるんですよ。「あいつまた同じ話してるな」って思われて終わりなので。

──では最初に言われていた、とにかくマンガをたくさん読むっていうのはそういう意味合いもあるんですね。

そうですね。ステイホーム中にアニメもたくさん観たし。「鬼滅の刃」はもちろん、「僕のヒーローアカデミア」も2日で観ました。もちろん単純にアニメやマンガが好きなんですけどね。僕の知識ってマンガから得てるものも多いし、やっぱりモチベーションを保つためのカンフル剤になるし。人の人生を一気見できるじゃないですか。一度折れて再起して成長して達成するみたいな。例えば十種競技なら「デカスロン」っていう名作があるし、スポーツ以外にもあらゆるジャンルがあるのがすごいですよね。

──「メガロボクス2」も、再起を目指す人は観るといいかもしれませんね。

「NOMAD メガロボクス2」より。

一度落ちぶれた人が、輝いた自分を取り戻すストーリーになるのだとしたら、そうですよね。アスリートで「現役時代の俺はよかったな」という思いをしたこがもある人は観たほうがいいですよ。

──それに「あの頃はよかった」って思うのは、アスリートだけではないなと。

そうですね。「今が一番楽しい」って言えるようになりたい人はこういうアニメを観て、這い上がるストーリーを自分に投影して「見とけよ、俺もやってやるわ」っていう気持ちになれればいいですよね。最近「あの頃は楽しかった」っていう話を一度でもしたことがある人にぜひオススメしたいです。

武井壮

2021年4月30日更新