コミックナタリー Power Push - 「魔法使いの嫁」

プロデューサー・和田丈嗣（WIT STUDIO）インタビュー

アニメ化プロジェクト始動！ヤマザキコレの思いが詰まった“みんなで育てていく物語”

2人の関係性を演出する部分にこだわっています

──キャラデザの面でこだわられたポイントはありますか？

僕は「チセに色気が欲しい」とお願いしました。チセってちょっと色気がある子なんですよ。

──確かに齢は15歳の少女ですが、時折大人びた表情や仕草を感じるシーンがありますね。

マンガの中でもその表現がうまいなと思う構図がたくさんあって。そういったところをアニメでも表現できるように意識しました。今回キャラデザを担当してくれた加藤さんは「鬼灯の冷徹」もキャラデザをやってくださっていた方で。とても繊細で端正な絵を描かれるという実績があったので、僕らとしても信頼してぜひとお願いしました。

──エリアスについてはいかがでしょう。

等身が難しいんですよね。この作品はチセとエリアス2人の物語なんですけど、エリアスって結構大きくて。どうやってチセと全体とのバランスを取るかというのはすごく大変でした。それはキャラデザの加藤さんも言ってましたね。2人の距離感を考えつつも画面に収めないといけないんですけど、エリアスが結構デカくて……っていう。

──ヤマザキ先生も「2人を画面に収める構図を考えるのが難しい」と以前のインタビューでおっしゃってました（参照：「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」特集、ヤマザキコレインタビュー）。

本当にそうなんですよ。マンガでは演出的に大きさを変えているとおっしゃっていたんですけど、アニメーションの場合は嘘がつけないので。共同作業で作るから、設定として大きさを決めておかないといけない。

──読者にとっては2人の身長差萌えという部分もあったりすると思うので、大事なポイントですよね。この2人には「依存関係」みたいなところも物語のテーマのひとつにあると思います。

そうですね。PVの中でも家のシーンがいっぱい出てくると思うんですけど、今回長沼（範裕）監督は“家”というテーマを掲げていて。チセちゃんは帰ることができる“家”という居場所を見つけて、そのチセとの関係に依存しているエリアスという存在がいる。お互いがその生活の中でどう変化していくのかが、この「魔法使いの嫁」のストーリーだと思うんです。なのでやっぱり身長差についてもそうですが、2人の関係性を演出する部分にはすごくこだわりました。

作品の端々までヤマザキ先生の意図が入ってます

──ドラマCDも聴かせていただきましたが、どのキャラクターも声とすごく合っていました。

僕らがキャストを決めるときは、まず最初に作家の方から「このキャラクターはこんな感じです」というイメージを書いた文章をいただくんですよ。「◯◯さんがいいです」と具体的な声優さんの名前でもらってしまうと、それが頭に入ってしまうので「なるべくイメージを教えてください」とお願いして。そのイメージに合う声の方を監督と音響監督、スタッフで候補を挙げる。今回は最終的なオーディションにヤマザキ先生にも来ていただいてキャストを決めました。

──チセ役の種﨑敦美さんと、エリアス役の竹内良太さん、それぞれ決め手になったポイントは？

チセは周りの顔色をうかがったりだとか、心を閉じ込めて生きてきた子で。そういった繊細な演技は種﨑さんが抜群にうまかったんです。エリアスは低くて通る声というイメージをいただいていたんですが、竹内さんがピッタリでした。事前に先生から細かく声のイメージをもらっていたので、先生が抱いているイメージにどこまで近づけることができるかが僕らの課題でしたね。声色だけでなく、しゃべり方とか口癖とか、本当に細かい要素まで教えてくださったので。

──イメージを伝えてくださるヤマザキ先生にかかってるところも大きい気がします。

大きいですね。だから今回は本当にヤマザキ先生の負荷が大きくかかってしまいました。でもそれを担当編集さん含めて、作品を良くするためにと考えていただき、マッグガーデンさんには大きく協力してもらいました。「ありがとう、仲間たち」と思っています（笑）。

──それって原作ファンにとってはすごくうれしいことですよね。ドラマCDやアニメの制作に、そこまで原作者がしっかりと関わることも多くないでしょうし。

たぶんどっちかだと思いますね。完全に制作に任せるか、作者さんにもしっかり入っていただくか。WITの場合は基本的に「全部関わってほしい」という話を最初にしているんです。今回はヤマザキ先生にすごく真摯に向き合っていただいたので作品の端々までヤマザキ先生の意図を入れることができたと思っています。

──完成した映像を観るのがとても楽しみです。OAD付き単行本の発売は9月と少し先になりますが、楽しみに待っているファンの皆さんにメッセージをいただけますか。

アニメ化のプロジェクトがいよいよ始動しました。僕らとしてもヤマザキ先生と一緒に協力して、「魔法使いの嫁」の世界を忠実に描いていこうと思っているので、楽しみにしていてください。いずれはテレビアニメもぜひやりたいと思っていますので、まずはOADをよろしくお願いします。OADは劇場でイベント上映も実施されます。ぜひ、劇場にも足を運んでいただけるとうれしいです。

アニメ「魔法使いの嫁星待つひと」