「外見至上主義」「喧嘩独学」を生み出したT.Junってどんな人? (2/2)

社会問題を解決に導けなくとも、ありのままを描くことで警鐘を鳴らせれば

──もう1つの代表作ともいえる「喧嘩独学」でも、「外見至上主義」と同じくスクールカーストがキーワードになっています。本作では配信者たちの姿が描かれるのも面白い切り口でした。

「喧嘩独学」ビジュアル

「喧嘩独学」ビジュアル

「喧嘩独学」

貧乏で力も弱い主人公・志村光太。学校ではクラスメイトに虐げられ、放課後は病気の母を支えるためにアルバイトに勤しんでいた。そんな志村はお金を稼ぐため、不良たちに噛み付くケンカ動画を配信することになり……。

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「喧嘩独学」を開始する前、少年マンガにおいてケンカをする理由について悩んだんですよ。その結果、お金を目的にケンカをする主人公・志村光太が生まれました。加えて、連載開始当時にはYouTubeが爆発的な人気を集めていたことから、お金を稼ぐ手段として動画サイト上で配信する、という要素を入れたら面白くなるだろうと。そこから「喧嘩独学」が生まれていきました。

──「喧嘩独学」を描くうえで、特に苦労していることはありますか?

「喧嘩独学」にはさまざまな武術が出てきます。それらを正しく描くことが一番難しかったですね。よりリアルに見せるためにはどうしたらいいかと考えた結果、現役のブラジリアン柔術や総合格闘技の選手にお話を伺いました。その貴重な意見をもとにしながら、「喧嘩独学」のアクション描写を描いています。

「喧嘩独学」で描かれているケンカで勝利するコツ。
「喧嘩独学」で描かれているケンカで勝利するコツ。

「喧嘩独学」で描かれているケンカで勝利するコツ。

──ルッキズムやスクールカーストなど、現代社会に通ずる問題がキーワードとなっていることが、T.Junさんの作品の特徴かと思います。T.Junさん自身はその点を意識しながら作品を描かれているのでしょうか?

はい。マンガはその時代を表す鏡ですからね。とはいえ、ある問題意識を持って「作品を通じて解決し、答えを出す」ことまではできません。ただ、我々が生きている世の中をありのまま描くことで読者の皆さんを楽しませたり、理不尽なことに対して警鐘を鳴らしたりすることはできると思うんですよ。なので、そういったことができる作品を作っていきたいですね。

──T.Junさんが描かれる物語には、数多くの魅力的なキャラクターが登場します。その中で特にお気に入りのキャラクターは誰ですか?

自分にとって子供のような存在なので、すべてのキャラクターが大好きです。でも、あえて1人選ぶとするのであれば、「外見至上主義」に登場する白窪征士ですかね。彼が登場したことで物語上どうしても描きたかったストーリーを実現できました。デザインとしても、彼の外見は僕の理想であり、憧れなんですよ。

「外見至上主義」より、白窪征士(しらくぼせいじ)。東西南北のギャング組織からなる“四大クルー”のうち、南の一姟会に所属している。かつては西のビッグディールの一員だった。

「外見至上主義」より、白窪征士(しらくぼせいじ)。東西南北のギャング組織からなる“四大クルー”のうち、南の一姟会に所属している。かつては西のビッグディールの一員だった。

5~10年前から描きたかったファンタジー作品を準備中

──さて、ここからはT.Junさんの創作についてお話を伺えればと思います。T.Junさんは「喧嘩独学」でマンガ原作者としても活躍する一方、「外見至上主義」のようにご自身で作画を担当する作品があります。T.Junさんご自身としては、お話を考えることと絵を描くことではどちらがお好きでしょうか?

正直、どっちとは決めづらいですね。僕はマンガの絵を描くことが好きなので、できることなら自分が考えた物語を自分の手で描きたいんです。でも、時間や物理的な限界があるので、僕が思いついたすべてのアイデアを自分1人で作業して作品という形にアウトプットすることは事実上不可能なんですよね。なので、ほかの素晴らしい作家さんと共同で作品を作っているんです。

──なるほど、そういう理由だったんですね。素朴な質問ですが、ご自身の絵柄や作風において、特徴のある箇所はどこだと分析されていますか?

先ほども触れましたが、僕はデビュー前にいろんな経験をしてきました。その中で、さまざまな人と出会ったことで、作品に味が加わっているように感じていますね。また、アクションものを多く連載していますから、リアルで痛快な決闘シーンが読めること。そこが僕の強みであり特徴だと感じています。

──ちなみに、T.Junさんの執筆スタイルはどのような形なのでしょうか? webtoonというと、チーム作業のイメージがあります。

僕が全体的なストーリーラインを考えてから、チームの仲間たちとコンテの会議を行って作品を完成させていきます。合わせて、サムネイルやタイトルも一緒に考えていますね。週に1回更新される関係上、週単位で作品を作るようにしています。

T.Jun

T.Jun

──これまでマンガ家として活躍されていて、つらかったことはありますか?

体力の面でたまにしんどさを感じています。また、毎週締め切りがあるので、プレッシャーがすさまじいですね。でも、webtoonはマンガ家とプラットフォーム、そして読者との“約束”によって作り上げられていると考えています。自分が締め切りを守ることで読者を楽しませることができるなら、そのプレッシャーをも乗り越えることができますね。つらさよりも幸せのほうが大きいです。

──webtoonの人気は世界中で増加しています。2014年にデビューし、第一線で活躍するT.Junさんは、どのようにwebtoonムーブメントを観測されていますか?

世界的にwebtoonの人気が高まっていることには、感謝しかありません。国内外の多くの読者が自分の作品を読んでくれるなんて、マンガ家としたら大きな幸せですからね。また、webtoonを原作としたドラマや映画、アニメ、ゲームがヒットしたことで、webtoonにIPとしての価値が生まれたことも励みになっています。

──webtoonで活躍するほかの作家さんの作品も読まれているそうですね。

はい。本当に才能にあふれる素晴らしいマンガ家さんが多いので、彼らの作品を読むと自分のモチベーションにもつながるんです。また、この人だったら自分のアイデアを具現化してくれるんじゃないか、と考えることもありますね。

──LINEマンガのYouTubeチャンネルで2022年12月に公開されたインタビューにて、「5~10年ほど前から描きたかった作品を準備している」とお話しされていました。もし可能であれば、どんなテーマの作品かお教えいただけますでしょうか?

ジャンルはファンタジーです。それ以上の詳細はまだ公開できないのですが、がんばって準備していますので、楽しみにしていただけたらうれしいです!

──楽しみにしています! では最後に、日本の読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

LINEマンガ10周年、おめでとうございます。この場を借りて、私の作品を応援してくださる日本の読者の皆さんにも感謝の気持ちを伝えたいと思います。これからも楽しく読んでいただける作品を作っていきますので、皆さんの大きな関心と応援のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございました!

プロフィール

T.Jun(テジュン)

1984年9月3日生まれ、韓国出身。2014年に「外見至上主義」でマンガ家デビューを果たす。そのほかの著作は「人生崩壊」(原作担当)と「青山ケイハウス」。また代表を務めるPTJ cartoon companyの作品として、「喧嘩独学」(ストーリー担当)と「クエスト至上主義」がある。