「空母いぶき」|護衛艦の健闘にボロ泣き、逃げ場のない緊張感にドキドキ!“声”で秋津竜太を演じる上坂すみれが映画とボイスドラマの魅力語る

アニメ的なキャラ分類をすると、
秋津さんはクーデレに属するんだろうか?

──収録の際、映画の演者の方々のお芝居は意識されましたか?

最初は少し意識していたんですけれど、どちらかというと映画は間が大きく、重厚感のあるお芝居をされていて。それを音声で再現するのは媒体の性質として難しい部分があるのと、ボイスドラマでは会話劇として描くために「テンポ速めでお願いします」というディレクションがあったので、一度映画のことは忘れて演じました。演じるにあたりキャラクターデザインなどがあったわけでなく、自分の中で秋津さんの姿を想像するという感じだったのですが、やっぱりアニメ的なキャラ分類をすると、秋津さんはクーデレに属するんだろうか?などと考えたりして。7.5等身くらいの女性を想像しながら演じていました。

──広く言えばクーデレかもしれません(笑)。映画を観たときと演じてみたあとでは、秋津というキャラクターに印象の変化はあったのでしょうか。

秋津竜太役の西島秀俊。

原作や映画から感じたのは、秋津さんは表情が読めなくて、いろんな意味で周りを巻き込んでいくタイプの人だけれど、国民を守るという気持ちが人一倍強いんだなと思いました。そして空自のエースであり、《いぶき》の艦長でもあり。パイロットと船乗り、双方の気持ちがわかる超人的なキャラクターという印象がありましたが、それはボイスドラマの脚本でも同じでした。不測の事態に周りのキャラクターが動揺していても秋津さんはすごく冷静なんですよね。私はどちらかというと「うわっ、大変です!」「もうヤバいっすよ! 私逃げ出したいです!」みたいな小悪党キャラを演じることが多かったので(笑)、これだけ感情を抑えるお芝居を経験させていただいたのは、学ぶものが多かったです。《いぶき》の艦長はうろたえちゃいけないんだというのを、台本を持って演じながら再認識しました。

──そんな秋津も、映画では人間らしい部分が垣間見えます。

映画「空母いぶき」より。左から西島秀俊演じる秋津竜太、佐々木蔵之介演じる新波歳也。

これは本当に映画ならではの味わいですね。マンガでは秋津さんの心情が描かれるシーンは限られているんですが、映画だと新波さんとのやり取りでもそういったところが垣間見えて、それがボイスドラマにも使われていたのがうれしかったです。「あ、秋津さんも私と同じ人間なんだ」と安心しました。映画の秋津さんは、そういった内に秘めた博愛精神や、「必ず平和を手にするんだ」という強い意思が感じられるところがよかったですね。

──ちなみに今日上坂さんが身に着けられた衣裳も、映画で秋津が着ていたものなんですよね。

上坂すみれ

そうなんです。こんな本物コスプレをさせていただけるなんて……テンションが上がります。気分は秋津さんですね! このジャケットは私のサイズに合ったものを用意していただいたんですが、帽子や靴は撮影で西島さんが使われたものをそのまま貸していただいたそうで。すごい……ありがたい……(拍手)。声優やっててよかったー!って思います。最近の女性声優はいろんなことができてうれしいですね。

──すごく似合っていらっしゃいます。

なんですかね、私、こういう軍服が似合う性質があるんです……。我ながら似合うなって。ふふふふ(笑)。こんな私でも自信を持って着られます。

ゆるい「空母いぶき」を考えよう!

──そのほかにも、ボイスドラマを演じてみて、上坂さん的に楽しかったところがあればお伺いしたいです。

作中に「ミグ35」が出てくるんです。ソ連機なので敵にはなるのですが、「ああ……ミグはやっぱり丈夫で、今も現役で働いていて偉いな」と思いました(笑)。あとは、「対潜警戒を厳となせ!」とか、これは映画でもよく出てきたセリフですが、「対空戦闘用意!」とか、たくさん命令できたのが気持ちよかったですね。

──作品は至ってシリアスですが、収録の雰囲気はいかがだったんでしょう?

今回はキャストの皆さんが揃った状態で収録をさせていただいたんですが、現場はなぜかだんだんと妙な感じにテンションが上がってきまして。「ゆるい『空母いぶき』を考えよう!」というノリができて、「ここは空母いぶき! 今日も日本の領海を守るよ!」「新波さん、おはよう!」「秋津艦長おはようございます!」……みたいなことをやっていました(笑)。真面目なことをずっとやっていると、脳がバランスを取ろうとするんだということがわかりました。差し入れのプリンをいただきながら、割とほのぼのとした空気の現場でしたね。

──女性だらけの「空母いぶき」と聞くと、そういったほのぼのとした作品に生まれ変わるんだろうか、などと思ったりもしたのですが。

しますよね。皆さんきっと、ボイスドラマを聴いたらナレーションの時点で「真面目かよ!」ってついひとりごとを言ってしまうと思います(笑)。

──(笑)。それでは改めて映画の見どころを教えていただけますか。

上坂すみれ

映画はもう、あまねくすべての人に観ていただきたいです。人間ドラマとしても、ミリタリーとしても、エンタテインメントとしても、本当に素晴らしい作品になっています。私はマネージャーさんと一緒に試写を拝見したんですけれど、マネージャーさんが観終わったあとに「めっちゃ面白かったです! 西島さんカッコいいですね!!」という、「映画館から出てきた人に聞いた感想!」みたいな、すごく素直ないい感想を聞けて、ミリタリー好きとしてもうれしかったです。本当に皆さんカッコいいので、ミリタリーのことはわからないよっていう方でも、単純に役者さんのカッコよさで観ていただきたいところもあります。物語の作り方としても絶対置いてけぼりにされない内容になっているので、安心して観ていただきたいです。

──ボイスドラマについてはいかがですか。

かわぐちかいじ先生の初の実写化作品に、こういった形で携わることができて私としては大変光栄です。かわぐち先生のマンガを原作に女子ばかりのボイスドラマができるなんて、よもや思ってもいなかったですし、皆さんもきっと想像していなかったと思います。ハードボイルドな萌えミリという……革新的なガールズミリタリーものになっていますが(笑)、声優さんがお好きな方でも、ミリタリーアニメがお好きな方でも、「艦これ」や「ガルパン(ガールズ&パンツァー)」などがお好きな方でも楽しんでいただける作品になっていると思うので、ぜひ繰り返し聴いていただきたいです。

──ボイスドラマを聴いて映画を観たら、より作品への理解が深まりそうです。

そうですね。予習としてもぜひ楽しんでいただけたらと思います。逆に映画でさらっと言っていたことを、ボイスドラマでははっきりと言っていたりもするので。ぜひ両方コンプリートしていただけたらうれしいです。

上坂すみれ
「空母いぶき」
2019年5月24日(金)全国公開
ストーリー

20XX年12月23日未明、国籍不明の軍事勢力が日本の最南端沖で突然の発砲。日本の領土の一部が占領され、海保隊員が拘束される事件が発生した。午前6時23分、日本政府は初の航空機搭載型護衛艦・いぶきを中心とする護衛隊群を現場に向かわせる。このあと、日本はかつて経験したことのない1日を迎えることになる。

スタッフ / キャスト

監督:若松節朗

脚本:伊藤和典、長谷川康夫

原作・監修:かわぐちかいじ「空母いぶき」(小学館「ビッグコミック」連載中 / 協力:惠谷治)

出演:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、髙嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、深川麻衣、中井貴一、藤竜也、佐藤浩市ほか

ボイスドラマ「第5護衛隊群かく戦えり─女子部─(映画『空母いぶき』より)」
映画「空母いぶき」公式サイトにて5月12日(日)より配信
配信日時

第一章:2019年5月12日(日)18:00

第二章:2019年5月13日(月)18:00

第三章:2019年5月14日(火)18:00

スタッフ

原作:かわぐちかいじ「空母いぶき」(小学館「ビッグコミック」連載中 協力:惠谷治)

企画:福井晴敏

監修・演出:伊藤和典

音響監督:濱野高年

音響制作:マジックカプセル

製作:バンダイナムコアーツ

提供:映画「空母いぶき」フィルムパートナーズ

声の出演

秋津竜太:上坂すみれ

新波歳也:M・A・O

湧井継治:田村睦心

中根和久:三澤紗千香

葛城政直:小松未可子

近藤隆夫:川上千尋

山本修造:木村珠莉

浦田鉄人:駒形友梨

畑中淳:西薗雪乃

上坂すみれ(ウエサカスミレ)
上坂すみれ
ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優、アーティスト。2012年TVアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。主な出演作品は「なんでここに先生が!?」(児島加奈役)、「キャロル&チューズデイ」(アンジェラ役)、「川柳少女」(花買タオ役)、「異世界かるてっと」(シャルティア役)、「艦これ」シリーズなど。2013年4月にはシングル「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。無類のロリータファッションマニア、ソ連・ロシアマニア、ミリタリーマニア、音楽マニアであることも知られる。4月17日にはTVアニメ「なんでここに先生が!?」のオープニングテーマであり、清竜人が作詞作曲を手がけた「ボン♡キュッ♡ボンは彼のモノ♡」をリリースした。

2019年5月13日更新