「センセイ君主」は忠犬ハチ公みたいな私と、担当さんとの関係性です

──「センセイ君主」は、「ヒロイン失格」の弘光のお兄さんにあたる弘光先生と、生徒のあゆはの恋物語です。先生もの、というのはどこから発想されたのでしょう。

「ヒロイン失格」のときに担当してくださっていた編集さんとの関係性をいつか描きたいなと思っていて。その担当さんの前では、さきほど言ったように、忠犬ハチ公みたいに、もしシッポがあったらいつも振っているような状態で（笑）。めちゃくちゃ育てていただきました。この関係性を少女マンガに落とし込むとしたら、先生ものかなと。

──では弘光先生は編集さんがモデルなんですね。

そうです。担当さんのキャラをカッコいい！と思っていたので。モデルにしていいですか？って聞いたら「別にいいけど。でも俺を描くなら、これくらい知っておきなよ」って哲学書みたいな難しい本を渡されました（笑）。

──すごい！ 弘光先生すぎますね（笑）。こういう人にいじわるされたい、と思って読んでいます。

私もいじわるされるのは大好きなので。あ、いじわるするのも大好きなので、今の担当さんには逆にいじわるしてます（笑）。今の担当さんといると、自分の中のはとり部分とか、弘光先生部分がめっちゃ出てきてしまうので。おかげで弘光先生の気持ちもわかるようになりました。

──モデルがいると、読者の方にもリアルに魅力が伝わるところはあるのでは？

それが……1巻くらいまでは伝わらなかったようで、弘光先生、嫌われてたんですよ（笑）。実際モデルになった担当さんを私も最初は苦手だったので。でも中身を知ったら、男女問わずみんな好きになる、という。私がだんだん担当さんに心を開いていく気持ちの動きと同じように、読者さんもだんだん好きになってくださったみたいです。

──読者にだんだん愛されていくキャラクターって、すごくいいですね。

はい。でも最初は、嫌われていたことに悩んで、（河原）和音さんと（椎名）軽穂さんに相談しに行ったんですよ。「この連載で何を描いたらいいかわからなくなってきました」と。そうしたら軽穂さんが「原点に戻ったら？ もも子ちゃんは、カッコいい担当さんが描きたい、って言ってたじゃない」と言ってくださって。そうだ、まだまだこれからだ、カッコいいところを知ってもらうまで諦めないぞ！と思えました。

──今は大人気なのでは？

だいぶ好きになっていただきました。最初は弟（「ヒロイン失格」の弘光）のほうが好き、という方も多かったんですが、とんとんくらいまで来たと思います。やっぱり先生がちゃんとあゆはを好きになって、かわいいところを描けるようになってからですかね。最新の別マ10月号では、弘光先生の前から描きたいと思っていた部分をやっとこ出せたので、ぜひ読んでください！

自分がダメなヒロインを描くことでお返ししたい

──今回ブックパスのキャンペーンでマーガレット、別冊マーガレットの作品がたくさん読み放題になるので、幸田先生のお好きな作品や影響を受けた作品についても教えてください。

やっぱり、いくえみ（綾）先生の影響は大きいですね。「I LOVE HER」「ハニバニ！」「オススメボーイフレンド」……誰かの日常を見ているみたいなリアルさがすごくカッコいい、と思いました。「I LOVE HER」の中に出てくる「先生は先生っていう生き物だと思ってた」っていうセリフが好きで。すごいリアル！と。先生でしかなかった人が、しんちゃんという1人の男に見えた、ということですよね。こういうリアリティのあるマンガが描ける人になりたいと思いました。その頃はまだノートに遊びで描いているくらいだったんですけど。投稿時代にはもう、がっつり影響を受けてましたね。

──ほかにはどんな作品を読んでいらっしゃいましたか。

「花より男子」も大好きです！ 学校でみんなで読んでいました。F4が、もう、カッコいいーー！（絶叫） ほんっとうに、カッコいい！ 全員……いや、美作さん以外全員に恋しました。美作さんはお母さんキャラなのでちょっと嘘かな、と思って言い直しました（笑）。西門さんは、それこそ賢いチャラ男のカッコよさですよね。花沢類がニューヨークまで行って捨てられたシーンも好きだし……道明寺が雨の中でつくしとやりとりするシーンのセリフも大好きです！ 初めて自分で買ったマーガレットコミックスは「隣りのタカシちゃん。」。それまではどこか、少女マンガの主人公に共感しきれないというか「すごいなあ、このヒロインたちは。こんなにいい子だから、こんなカッコいい人に好かれるんだなあ」みたいな気持ちがあったんですが、紗希ちゃんには本当に共感できて。けっこう悪どいこととか平気で考えるし（笑）、読んでいてスカッとして。タカシちゃんがまたカッコよくて……。投稿するようになって、本誌を買いはじめたときに「ラブ★コン」に出会ったんですが、めっちゃ面白い！と思いました。それこそ、共感できる主人公ですよね。ダメだし、自分に甘いところがあったりして（笑）。等身大の主人公。なんだか救われた気がしたんですよ。ダメでもいいんだな、と。その時の救われた経験を、自分がダメなヒロインを描くことで、お返しできていたらいいなあと思います。

──今の別マ連載作では何がお好きですか？

「俺物語!!」「青空エール」は、今一番楽しみに読んでいます。「俺物語!!」はスナ（砂川くん）が大好きで……別マ男子の中で今一番好きです。別マ7月号で、スナが初めて本音を言うシーンがあるんですが、ギャー!!ってなりました。スナの人間らしいところ初めて出た！みたいな。「青空エール」の水島くんも大好きです！ 和音さんの描くクールな男子が大好きなんですよ。最初女の子みたいだったのに、あんなに大きく、カッコよくなって……ずっと水島くんを追ってきたので。水島くんも、今月号で弱みを見せたんですよ！ 思わず和音さんにメールを送ってしまいました。和音さんの作品は、「高校デビュー」もそうでしたが、いつも1話目から面白いんですよね。私もそういう作品が描けるようになりたいなと思っています。

──すごい熱量でオススメしてくださってありがとうございます！

好きなものに対してのプレゼンは、ハンパないんです！ 作者さんがここでキュンとさせたいんだろうな……っていうところにめっちゃホイホイついていって、すぐキャー！ってなっちゃうんですよ。でも、そろそろ玄人目線が欲しいです（笑）。