コミックナタリー Power Push - 近藤聡乃「A子さんの恋人」
日米で揺れる、優柔不断な恋の行方は?ひねくれた大人の無責任シティロマンス
もうちょっと2人の仲を進展させてあげたい
──リャンハとシャトーという主人公と、読者の距離感が不思議な作品だと感じました。言葉を極力少なくする見せ方が、そう感じる一端なのかもしれません。
そうですねえ。たぶん、主人公の2人に読者の方はあまり感情移入できないと思います。私もしてないですし。
──2人の考えていることがわからないし、関係性もどうなっていくのかわからない。サスペンスは「不安」とか「ハラハラ」って意味のある言葉なので、謎だらけで先を知りたい気持ちが読者をサスペンスフルな状態にさせるのかなと。
意図的にやっていたわけではないのですが、なんとなくカッコよくまとまった!
──あはは(笑)。ところで、「殺し愛」には「ラブサスペンス」というキャッチフレーズが付いていますが。
付けられてしまいました(笑)。
──ラブとサスペンスだと、どちらに比重を置いていますか?
どうなんでしょうね。あまりイチャイチャを前提にはしてなかったです。
──“殺し愛”ですからね。リャンハの猛烈アタックに対して、シャトーはすごくクールですし。
サスペンスに寄らせたい気持ちはあります。でも2人のやり取りを描いているときのほうがネームの進みがいい。それと、もうちょっと進展させてあげたいとは思わなくもないです(笑)。
活動のベースがpixivだったという気持ちがすごく強い
──最後に、「殺し愛」がデビュー作ということでFeさんご自身のことをお伺いできればと思うのですが。どんなマンガを読んで育ちましたか?
ジャンプっ子でしたね。すごく小さい頃からジャンプを読んでいて、「アウターゾーン」(光原伸)が載ってたのを覚えています。あと「HUNTER×HUNTER」(冨樫義博)が大好きで。最近は青年誌を読むことが多くて、最初に言った「デストロ246」や、「賭ケグルイ」(河本ほむら原作、尚村透作画)……知らず知らずのうちに女の子がかわいいマンガを読んでますね。
──マンガ好きなのが伝わってきます。子供の頃からマンガ家になりたかったんですか?
憧れていたし、マンガ家ってすごいという思いはずっと持っていました。ただ、私の世代だとマンガを描いて出版社に投稿して賞を取って、それでマンガ家になるというのが王道の流れだと思うので、投稿していない自分がマンガ家になれたのは不思議というか、正直まだちょっと疑っています……。
──もうすぐ2巻が出るのに(笑)。担当さんからの話を受けて、商業連載してみようと決意したのはどういう気持ちからでしょう?
まさか自分がpixivに投稿したマンガを読んでそんなふうに誘ってくれる人がいるんだと思うと、やってみたいという気持ちが勝りました。それにやっぱりマンガ家は憧れの職業でしたし。
──pixivではまだ「殺し愛小話」が公開されていますね。商業化したら消す場合もあると思うんですが。
活動のベースがpixivだったという気持ちがすごく強くて。あと読者からいただけたコメントが残ってたほうが、私がうれしい(笑)。雑誌で連載している「殺し愛」とは結構設定も変わってきちゃっているので、別物として読んでほしいんですけど、pixivで読んでた人が連載版も楽しんでくれるといいなって。
──いまだにpixivにもメッセージを投稿していらっしゃいますね。
月に1度くらいは投稿しないと忘れ去られそうと思って。覚えてて! 生きてるよ! 忘れないで構ってあげてー!っていう(笑)。
──コミックジーンで描いてるよー!って(笑)。
pixivにアップできてないけど連載してるよー!って。やっぱりpixivでずっと読んでくれてた人のおかげで、連載させてもらえるようになったと思っているので。がんばってやれるところまでやるので、「殺し愛」を見かけたらパラっとでも読んでもらえるとうれしいです。
殺し屋と殺し屋。歪な背徳関係の行方は……。
クールな女性殺し屋と、彼女をストーキングする最強の男性殺し屋。歪んだ関係は意外な発展を見せる。pixiv閲覧数540万突破の愛と狂気の殺し屋×殺し屋サスペンス。
Fe(エフイー)
2012年よりpixivで「殺し愛小話」シリーズを発表し、1万以上“ブックマーク”されたオリジナル作品に付くタグ「創作男女10000users」を獲得する人気を博す。同作を商業作品として仕切り直し、月刊コミックジーン2015年11月号(KADOKAWA)にてデビューを飾った。