TVアニメ「この世界は不完全すぎる」が、7月5日よりアニメイズムB2枠にて放送中。ABEMAにて見逃し無料放送・独占見放題配信も行われている。左藤真通の同名マンガを原作とするこの作品は、王道のファンタジー作品のような雰囲気で幕を開けるが、第1話後半にどんでん返しが待っており、その斬新かつ一筋縄ではいかない設定で視聴者を引き付ける。
コミックナタリーでは主人公・ハガ役の石川界人と、彼の冒険に同行することになる少女・ニコラ役の矢野妃菜喜にインタビューを実施。放送開始までは、第1話で明かされる設定のネタバレをしないよう、イベント出演の際にも大いに気を使っていたという2人だが、ここでは第3話までのエピソードを踏まえ、作品やキャラクターの魅力を聞いた。
また後半では、放送前に行われた「先行上映会&スペシャルトークショー」の模様もレポート。当日参加できなかった人も、大盛況だったイベントの雰囲気を味わってほしい。
取材・文 / 鈴木俊介撮影 / ヨシダヤスシ(P1)、島本絵梨佳(P2)
1話後半で一気に引き込まれる!
──オンエアが始まった後ということで、放送済みのエピソードの内容にも触れつつお話を伺わせてください。異世界ファンタジーのような雰囲気で物語が展開されますが、第1話のラストでここが実はゲームの世界だということが明かされます。視聴者の皆さんも驚かれたと思うのですが、おふたりはいかがでしたか?
矢野妃菜喜 驚きました! オーディションのときに原作マンガを読ませていただいたんですが、最初は「なんだか珍しいタイプの異世界ものだな」と思っていたんです。異世界ものってたくさんありますけど、この作品には読んでいて不思議な違和感があって。それが、本当にアニメの第1話の流れと同じような感じで、「ゲームの世界だったんだ!」ということを知って、ようやくその違和感の正体がわかったというか。「なるほど!」「だから『この世界は不完全すぎる』ってタイトルなんだ!」って、一気に引き込まれましたね。
石川界人 僕はX(旧Twitter)で原作の広告を見かけたことがあり、以前からこの作品のことは知っていました。そういう広告って、「衝撃的な展開がありますよ」というところを抽出して載せていますよね。だから「何かあるんだろうな」と身構えつつ(笑)、マンガを読み始めたんですが、ただ、読み始めても最初のほうではまったく違和感の正体に気づかなくて。ヒロインが燃えて死んでしまうという演出をされたときに、「これはいったいどういう話なんだろう?」と強烈に興味を惹かれた覚えがあります。
──舞台はゲームの中で、しかも未完成なゲームなので不完全。あらゆるところに“バグ”があり、主人公のハガは“デバッガー”としてそれを調査・報告するという役回りです。
石川 ゲームの制作過程にデバッグという作業があるのは、一般知識としては知っていましたが、それをどういうふうにドラマとして描いていくんだろう?というのが気になりますよね。
矢野 私も、デバッグをマンガやアニメの世界に落とし込んで……というのは見たことがなかったので、新しいなって思いました。
──ちなみにおふたりは、ゲームはよくやられるんでしょうか?
石川 最近はあまりしていないですね。「Apex Legends」や「Minecraft」のような、配信で人気があるゲームに没頭していた時期もあるんですが、今はあまり時間が作れていなくて。「あそこには行けるのかな? 行ってみよう」とか、「こんなことはできるのかな? やってみよう」とか、そういうチャレンジができるゲームに当時はハマりがちでした。これはお芝居でもそうなんですが、この線でやってくださいと言われていても、「こういうアプローチはどうかな?」とあえてちょっと線から外れてみて、結果いいものができればもちろんいいですし、もしダメだったとしても、そういうチャレンジをするのが僕は楽しいので。
矢野 私は割とRPGものが好きですね。据え置き機で「スプラトゥーン」とかもやるんですけど、最近は「原神」とか、スマホゲームが多いです。
──「この世界は不完全すぎる」には、ゲーム好きなら思わず“あるある”と頷いてしまうような描写も多いと思うのですが、そのあたりはいかがでしたか。
矢野 そこまで詳しくはないので、どちらかというと「デバッガーの方って普段こういうことをされてるんだ」って感じる部分が大きかったです。もちろん、現実のデバッガーの方はきっと、コントローラーやキーボードでゲームを操作しているじゃないですか? その点ハガさんたちは、体ごと壁にぐりぐり押し付けているので、実際ゲームの世界に入ったらそうやってデバッグするんだ、みたいなところが面白かったです。
石川 ゲームのことをよく知らなくても楽しめる作品なので、ゲームの世界だということにこだわらなくてもいいんじゃないかなと思います。世界の違和感を拾い集める人たちがいて、彼らがそれを追い求める先にどういう冒険が待っているのか。そこに焦点があると思いますので、この目新しい設定から生まれるドラマを楽しんでもらえたらうれしいです。
アフレコ現場では、みんなが「ニコラかわいい!」
──おふたりが演じられたキャラクターについてもお話を聞かせてください。それぞれ、どんな印象をお持ちですか。
石川 ハガは、すごく性根の優しいキャラクターなのかなと思っています。最初は、ちょっと人見知りっぽいというか、あんまり人との距離を詰めるようなタイプじゃないのかな?という人物として出てくるんですが、第1話の後半で、彼がここに至るまでに何度も同じことを繰り返していて、それこそニコラが死んでしまう場面を何度も見ていることが明かされて。すでに1つ、大きな心境の変化があったんだなと、その理由がわかるんですよね。ニコラはNPCであるわけですが、そんなニコラとの向き合い方からも、彼の性根のよさが見て取れる。それから、基本的にデバッガーはいわゆるチート能力的な力を持っていて、ゲーム内で一般プレイヤーが強いられるであろう理(ことわり)から外れた動きができるという状況にあるんですが、ハガはその能力を使わず、一般プレイヤーと同じようにプレイをすると心に決めている。すごく誠実な人物でもありますね。
──演じていて、ハガに共感できる部分はありましたか?
石川 やっぱり誠実なところですかね(笑)。
──矢野さんから見て、ハガはどんなキャラクターですか。
矢野 すごく頼もしいです! それこそお芝居の面でも、石川さんが突き抜けてくださるので、「私もそこに付いて行こう!」って気持ちで一緒にやらせていただいていました。ハガさんはすごく真面目なんですけど、真面目すぎてある意味こう、ちょっと変態的でもあるというか(笑)。
石川 ニコラが一番まともかもしれないね。
矢野 そうですね。私が演じるニコラは、すっごく純粋でまっすぐな、めちゃくちゃかわいい子なんです。最初はその純朴さをどのくらい出せばいいのか難しくて……。あまりかわいくしすぎてもニコラっぽくないなと思っていたので、そのあたりのバランス感を音響監督さんとも相談しながら演じました。
石川 ニコラの、夢を持ってひたむきになっているところ。それがほかのキャラクターとの対比になっていて、めちゃくちゃいいんですよね。アフレコ現場でも、みんなで「ニコラかわいいなあ」って言いながら収録していました。
──第3話ではそんなニコラが、テスラという別人格を覗かせます。このテスラも矢野さんが演じられていますが、テスラとの演じ分けについても聞かせてください。
矢野 テスラは、メタAIとして世界を俯瞰して見ているようなキャラクターなので、そういう雰囲気が出ればいいなと思って演じました。テスラはテスラで、めちゃくちゃごはんを食べるんですよ。その食べている姿がまたかわいいんですよね。
石川 今後仲間になるキャラクターたちも、一癖も二癖もあるキャラクターばかりなんです。彼らがパーティに加わることで、ハガとニコラの新たな一面がまた見えてくるというか、掛け合いにもメリハリが出てくるので、この先もぜひ注目してもらえたらと思います。
いろんな人間がいて、その価値観の違いが面白い
──おっしゃる通り、これから個性豊かなキャラクターがどんどん出てきますよね。
石川 僕、社長が好きです。すごく人間臭いんですよ。今後どういうふうに話が展開していくかっていうのは、ぜひオンエアを楽しみにしていてほしいんですが、個人的には注目してほしいキャラの1人です。
矢野 私はアマノですね。“フェザー”という種族で、シンプルに見た目がかわいいっていうのもありますし、彼にまつわるエピソードがいいんですよね。涙腺に来ると言いますか。
石川 この作品は毎話毎話、予想のつかない展開が待っているので、視聴前の方には言えないことが多いんですよ(笑)。強いて言うなら、今後デバッガーがいっぱい出てくるんですが、そのデバッガーたちの価値観の違いの描き方が面白い。そのあたりを楽しみにしておいてもらいたいです。
矢野 いろんな人間がいますよね。
石川 ははは(笑)。いいふわっと感だね。
矢野 “どうせゲームの中だから”って悪事に走っちゃう人もいれば、それこそハガさんみたいに、真面目に誠実にずっと1つのことを集中してやっている人もいますし、本当にいろんな人間がいるんです(笑)。すごく考えさせられる作品でもあるかなって思いますね。
石川 この作品のモンスターのデザインって特徴的だと思うんですが、最初見たときどう思いました?
矢野 怖いというか、気味が悪いというか……いい意味でのリアル感がありますよね。第1話に出てくるホイモイドラゴンも、第一形態は「まあまあ、こういうのいるよな」って感じだったんですけど、戦闘モードに変身するときの、あのムリムリムリムリ……って中身が出てくるところとか、ちょっと気持ち悪いですよね。
石川 「ドラゴン、こんなふうにはならないでしょ!?」って思ったよね(笑)。従来の、いわゆる定説とされているようなモンスターとは印象が違って、そこも楽しめる作品ですよね。
──キモカワ、とも言えるでしょうか?
石川 キモカワかなあ?(笑)
矢野 よく見たらかわいく見えてきたかも、みたいな。でもホイモイドラゴンは、それを裏切られて「キモイ!」になった(笑)。
石川 僕はけっこう好きなんですが、モンスターによっては「これ大丈夫かな?」ってモチーフのデザインだったりもする(笑)。そのあたりも、ケラケラ笑いながら観ていただけたら面白いのかなって思います。
石川&矢野が、現実世界でバグだと思うことは……
──本作では、ハガをはじめとするデバッガーたちが、ゲームの中からログアウトできないという非常事態に置かれています。もしおふたりが、ハガたちと似たような状況に遭遇したら、どう行動しますか?
石川 デバッガーとしてですよね? ゲームですし、命がどうなるかっていうのは実際問題わからないところではありますが……。現実社会でお金をもらってやっている“仕事”ではあるので、ハガほど真面目にではないでしょうけど、ある程度働きながら出られるのを待つかなと思います。
──矢野さんはどうですか。
矢野 たぶん最初は、外に出られないかとあがくと思うんですけど、「もう無理だな」ってなったら、楽しむほうに気持ちを切り替えます。やっぱりゲームの世界でしかできないこともあると思うので、ある程度死なないようにしつつ……。それこそこの作品だと、何かに没頭してる人のほうが狂わないでいられるという部分もあるので、楽しめることを見つけて、意外と順応できそうだなと。
──使っちゃいけないと言われているデバッグモードも、この状況だったら使いますか?
矢野 使っちゃいそうです。たぶんその、使ったらどう困るかという知識もないので、使って「助けてー!」ってなる側かもしれません。
石川 僕はたぶん、仕事で最低限必要であれば使うかもな、っていう感じですね。やっぱりゲームなので、ログを取られていたりとかして、「働いてないじゃん?」っていう話になったらもらえるお金ももらえなくなりますし……。
矢野 すごく現実的。
石川 はい(笑)。現実世界とゲームの世界の両方がある世界観なので、どっちのリスクも考えちゃいますね。
──“バグ”つながりで最後に、現実世界においてバグだと感じていること、「これはおかしいだろ」って言いたいことをお聞きしてもいいでしょうか。
矢野 太らない人がいることですかね。
石川 ははは(笑)。
矢野 なんでなんですかね? もちろん、そういう方はそういう方で、太れないことを逆に気にされていたりするとは思うんですけど……。体重を気にせずいっぱい食べられるなんて、うらやましいなって思っちゃいますね。
石川 僕は30歳を越えてからの月日が経つ早さ。これは本当にバグだと思いますね。信じられないぐらい早いので、デバッグモードを使って1日の時間が延ばせるとしたら、それは延ばしてしまいたいですね。仕事もしなきゃいけないけれど、映画も観たいし、ドラマも観たいし、料理も作りたいし、飲み会も行きたい。でも時間がないと思っているうちに、1年があっという間に過ぎていく。事務所に「年末の休みを2週間くらいくれ!」って死ぬほど交渉しています(笑)。
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先行上映会&SPトークショーをレポート!