「川越ボーイズ・シング」連載第3回|中西南央×金子誠がキャラクターから感じた“気持ちに正直になること”の大切さ (2/3)

“キャラクターが合唱をしている”ことを演じる難しさ

──劇中歌のレコーディングはすでに終えられているとのことですが、いかがでしたか?

中西 もうほんとに……全部すごかったなって思う。

金子 あはははは!(笑)

中西 衝撃的だったんですけど、アメリカにいる作曲家の方とZoomをつないでレコーディングをしたんです。

金子 英語楽曲のディレクションをしていただいたYUKI KANESAKAさんですね。

中西 レコーディングブースに入ったのがそもそも初めてだったので、さらにアメリカとZoomをつないでって、もう驚いてしまって。曲もおしゃれだし、おしゃれが乱立しているところに来てしまった……って。

金子 毎回いろんな要素が入った楽曲で、それぞれ新鮮だったので、そういう意味では楽しみにしていたんですけど……いかんせん英語が難しかったです。英語の歌詞の隣に日本語訳も書いてくださったので、歌詞の意味や気持ちなどは絶対にブレないように維持しながら、英語の発音も気にしつつ、というのが苦労したところですね。

中西 金子さんや皆さんは、難しい曲をキャラクターとして歌うっていう、最上級に難しいことをしているのがすごくて。僕はまだ全力でバーン!って歌うしかできなくて。

金子 でも、春男先生による、アニメの中でのITくんの歌唱力の評価は「なしオブザなし」なんですよ。中西さん自身はものすごく歌唱力があるので、そこをしっかりITくんとして歌唱されていて、これも難しいことだと思います。“キャラクターがクワイアをしている”ことを演じないといけないので。

中西 ITはみんなで歌うのが初めてなので、自分がすでに持ってる「クワイアってこういうものだよね」っていうイメージと、ITが持ってるクワイアのイメージをすり合わせるのが難しかったです。

左からだんぼっちこと出井天使、えいちゃんこと矢沢ひろし、IT。

左からだんぼっちこと出井天使、えいちゃんこと矢沢ひろし、IT。

金子 あと、私は普段通りに歌うとビブラートっぽいものを入れちゃうんですけど、それをやめてほしいと言われて。

中西 同じこと言われました! ビブラートが入ると、みんなと合わなくなっちゃうんですよね。

金子 それをやらずに、まっすぐ変わらない音で出すのが難しいところでした。あとはエンディングが、私の中では一番難しかった。

中西 難しかった!

金子 僕はエンディングが最後に収録した曲だったんですよね。曲の収録の前に本編の収録は終えていたので、そういう意味でも集大成的な感じで思い入れがあって。これも全部英語詞だったんですけど、今までで一番難しくて(笑)。

左から中西南央、金子誠。

左から中西南央、金子誠。

中西 いや、すごかったですよ……! 本当にレベルが高くて。

金子 そういう意味では私の中での集大成の1曲ですね。クワイアというよりもキャラクターとして歌ったので、すごく気持ちが入ったなと思います。

──さまざまな苦労を経て、仕上がった音源を聴かれたときのご感想は。

中西 すごかった!

金子 衝撃的でしたね。「部員なんだな」って思いました。なかなかみんなで一緒に現場に入れなかった分、部員であるということが曲として具体的に感じられたのがうれしかった。

金子誠

金子誠

中西 特に、今後出てくる曲でめちゃめちゃいいのがあるんですけど……まだ言えないので!

金子 今後出てくるのでお楽しみに。それとエンディングは毎週、ぜひチェックしてほしいです。

中西 聴いてほしい! がんばりました!

鎧がはがれたITくんの今後に注目を!

──ここからは放送されたばかりの2話について聞かせてください。2話はITとオトメの初登場回であり、自分の本当の気持ちを押し込めていた2人が一歩を踏み出した回でした。

中西 作品全体を通して、どのキャラクターもめちゃめちゃ変化があるんです。1回だけじゃなくていろんな展開や、変わっていく部分があって。でも収録のときはもらった台本以降のことは知らない状態だったので、「本当はどういう子なんだろう」っていうことをすごく考えました。ITはすごく自分を作ってる、鎧をいっぱい着てる子なので、本当は何を考えているのか、その考えっていうのは何から来ているのかをけっこう考えて……心理学の本とか読んだり(笑)。

金子 ははは(笑)。でもわかる。

中西 特にITは最初に登場した時点でストレスが限界に達してるところがあって。えいちゃんを一方的に意識して、フラストレーションが溜まってて、最初から自分で自分がわからなくなっちゃってる子なんだなって。

左からえいちゃん、IT。

左からえいちゃん、IT。

金子 確かに、2話だけだとITくんの地の部分が見えてこないんだよね。ようやく垣間見えたくらいで、まだ掴みどころがない。

中西 ずっと目の前で盾を構えてる状態だから、人のことを見てるようで見てないんです。だけど2話のみんなとのやりとりを経て、最後の最後で鎧をひっぺがされて、やっと相手が見えてきた。

──中西さん自身は、人と壁を作るタイプではなさそうに見えますね。

中西 僕は引っ越しばかりしてて、学校の切れ目で友達が全員いなくなるっていう環境を繰り返したので、壁を作ることのデメリットは知ってるんです。でも根がめちゃめちゃ人見知りなので、開こうとしてはいるんですが……。

金子 理想と現実は違うもんね。

中西 っていうのがあって、閉じようとする気持ちはわかるというか。僕、尾崎豊を聴いて泣いたりするんですけど、泣いて感傷に浸っている自分をちょっと痛いなー!って思うときがあって(笑)。でもその痛さはITも持ってるなって思います。

金子 通じるものがあるんだね。今後のITくんは相当注目していただきたいです。ムードメーカーというか、雰囲気をいろいろ作り出してくれるキャラで、そこが魅力的だなって思いますね。

中西 アクセルを踏む勇気だけはあるんですよね(笑)。

金子 そうそう、加速は速いんだよね(笑)。

IT

IT

──最後に披露されたITの「いつかのアイムソーリー」も衝撃的でした。

金子 あれはすごかったですね(笑)。どんな気持ちで歌ったんですか?

中西 アイラブユーでしたよ! 恋っぽいこと歌ってますけど、あれはみんなに対する思いですね。「本当の僕を好きになってほしい!」っていう気持ち。「この人となら友達になれるかも」っていう感覚がないと、本当の自分を好きになってほしいっていう気持ちにはなれないから、2話の最後は鎧がべろっとはがれた瞬間ですね。僕は歌の中では「いつかのアイムソーリー」のレコーディングが一番の難関だったので、これを超えたらあとはもう、無敵マリオ状態でした(笑)。