ギャップって、萌えの根源(島崎)
──ヒロイン単体で見たときは、どのような部分にかわいさを感じていらっしゃいますか?
島崎 さっき男女のコントラストの話をしましたけど、それって個人個人にもありますよね。二面性というか、強さの中の弱さ、逆に弱さの中の強さみたいなもの。
にいち ギャップ萌えみたいなものですよね。
島崎 そうですね、ギャップとも呼ばれるもの。そういう葛藤というか二面性のコントラストがあって、それがふっと切り替わったとき、より読者の印象に残るキャラになると思うんです。
にいち 「放課後コラージュノート」の最初のエピソードとか、まさにギャップ萌えですよね。完璧な先輩が、2人のときだけ、ポンコツっていうのは。
島崎 ギャップって、萌えの根源なんじゃないでしょうか。ある人が、その人らしいことだけをしてても印象に残らないと思うんですよ。何かその人らしくないことをしたときに、印象に残る。1人の人間の中の、矛盾しているようだけれど共存しているところというか。そういう感じで捉えています。
にいち 私も好きですね、ギャップ。普段見せない表情とか、自分だけしか知らないようなところをパートナーに知ってもらうのって、特別なことですよね。そういう秘密を共有することって、日常からのギャップでもあって。
島崎 秘密の共有は、日常からのギャップ。なるほど、今言われてハッとしました。
にいち 私も自分で言ってハッとしました(笑)。ギャップつながりで言うと、私、ジト目フェチなんですよ。好きな人に対して“不満である”って表明できるのって、相手をちゃんと信頼してるからですよね。普段の2人の距離感が崩れないってわかってるからこそ、普段と違う一面を見せることができるっていう。
島崎 ジト目いいですよね。かわいいと思います。「夏色の君へ」の中では、「四年目記念日」のあの子が特に好きなんです。あの子もジト目というか、いきなり不機嫌な顔で出てくるじゃないですか。まずあれにノックアウトされたうえで、それが最後にパッとかわいくなるのがすごいですよね、破壊力が。
──島崎先生は何かフェチを感じるものはありますか?
島崎 読んでいるときも描いているときもなんですけど、特定の何かというよりは、その都度触れているものに引き込まれてしまいますね。特にほかの人の作品を読んでいるときは、その作品の作者の方が表現したい萌えとかフェチが必ずあるわけじゃないですか。そこに自分がお邪魔させてもらっている感じですね。
物語じゃなくて、世界を作りたい(にいち)
──おふたりのキャラクターへの思いをお聞きしてきたのですが、そのこだわりのルーツにはどのような作品があるのか気になります。何か昔からお好きなマンガはありますか?
にいち 私はマンガというよりもゲームですね。もっと限定的にいうと「FF9(ファイナルファンタジーIX)」です。
島崎 お、私も「FF9」大好きです。「FF」シリーズの中で一番好きかもしれないです。つい先日も、iOSで出たリメイク版をひとしきりプレイしたばかりでした。私の場合、好きな作品はたくさんありますけど、バイブルと呼べるのは天野こずえ先生の「ARIA」ですね。にいちさんは「ARIA」は読まれたことは?
にいち 実はまだ……。
島崎 「FF9」がお好きなら、「ARIA」もきっとお好きだと思うので、ぜひおすすめしたいですね。「FF9」はどんなところがお好きなんですか?
にいち 私が「FF9」で好きなのは、物語もいいけど、最も惹かれるのは世界観です。例えば、街の住人1人ひとりに名前が付いていて、メインストーリーとまったく関係ないところで、そのキャラだけの人生を進んでいる。そういう世界観に惹かれました。
島崎 なるほど。「ARIA」も舞台となるネオ・ヴェネツィアっていう街があって、そこでの暮らしが描かれていて、すごく生活感がある話なんです。
にいち いいですね、気になります。ただ私、好きな作品に出会うと数日間ふぬけになっちゃうんですよ(笑)。気持ちを持っていかれちゃうというか。
島崎 キャラにせよ舞台にせよ、「生きてるな」って感じる作品だと、心に残りますよね。
にいち ええ。どのキャラクターにも、やっぱりその瞬間に至るまで過ごしてきた人生があるわけじゃないですか。絵を描くときも、それを踏まえたうえである一瞬を切り取っているつもりなんです。だから先ほど、「一枚絵にもドラマがある」ってお褒めいただいて、すごくうれしかった(笑)。そういう世界を描けるようになりたいなと思っています。
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作家が読者に導かれるSNS時代
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恋に不器用な女子と彼女のナイトを自認するもその本心に気付かない鈍感男子、身長差が気になって素直になれない同級生、無口系ツンデレ彼女にKOされる彼氏など、青春ド真ん中の胸キュンストーリーが詰まった作品集。著者がTwitterに「#放課後コラージュノート」のハッシュタグで投稿した内容を清書し、描き下ろしエピソードを加えて単行本化された。
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著者がSNSに投稿したマンガから人気に火がつき、各所で話題を呼んでいる「少女アラカルト」シリーズの第2弾。多くのメディアに取り上げられた「ひまわりと石畳」、22万以上の“いいね”が付いた「10年前の君と、10年後の君のお話。」など、Twitterやpixivで公開されたショートストーリーを中心に、描き下ろしのプロローグとエピローグも収めた短編集。巻末にはイラストギャラリーも用意されている。
- 島崎無印(シマザキムジルシ)
- マンガ家。代表作に「怪獣の飼育委員」「オークは望まない」など。現在はツイ4にて「乙女男子に恋する乙女」を連載中。
- にいち
- 個人サークル「木漏れ陽ぱれっと」としてコミケなどのイベントを中心に活動するイラストレーター。SNSで発表したマンガをまとめた短編集「彼女の季節 少女アラカルト」(KADOKAWA)が、自身初の単行本。