「ホタルの嫁入り」2.5次元俳優・橋本祥平、愛が重い殺し屋を完全再現

「プロミス・シンデレラ」の橘オレコによる最新作として、マンガワンで連載中の「ホタルの嫁入り」。明治時代を舞台に、余命わずかの令嬢・紗都子と、異常な愛を持つ殺し屋の進平が織りなす命をかけた結婚物語だ。SNSでは「進平の愛が重すぎる!」などと話題を呼んでおり、1巻は発売から1週間で緊急重版が決定した。

「ホタルの嫁入り」の2巻発売を記念し、コミックナタリーでは俳優の橋本祥平にインタビュー。ミュージカル「薄桜鬼」や舞台「刀剣乱舞」といった和風の作品に数々出演し、自ら原案を手がけるほどマンガ好きでもある橋本は「ホタルの嫁入り」をどう読んだのか。進平をイメージした和装での写真もたっぷり撮り下ろしたので、とくとご覧あれ。

取材・文 / ちゃんめい衣装・着付協力 / 典雅きもの学院新宿教室ヘアメイク / 車谷結撮影 / 斎藤大嗣

「ホタルの嫁入り」

時は明治時代。家名にも美貌にも恵まれるが、余命わずかと宣言されている伯爵令嬢・桐ヶ谷紗都子の夢は、家の利益になる結婚をすることだけだった。そんな中、突如謎の悪党たちに命を狙われた紗都子は、その場を生き延びるため、殺し屋の後藤進平に「私と結婚してください」と提案する。その場限りの嘘だったはずが、進平はとんでもなく愛が重い男で……。

「ホタルの嫁入り」より。

「ホタルの嫁入り」より。

橘オレコ直伝、進平になりきるコツ

──舞台で和服は着慣れているかと思いますが、進平をイメージしたお着物はいかがでしたか?

こういう着流し(羽織を着ずに、着物に帯を結ぶだけのスタイルのこと)は久々に着たのですごくうれしかったですし、やっぱり和装の撮影は心躍るものがありますね。今回は殺し屋という役どころ的に、その喜びはあまり表に出しすぎちゃいけないと思いつつ、楽しく撮影させていただきました。

橋本祥平

橋本祥平

──いろいろな表情、立ち姿を披露していただきましたが、進平らしさを出すのに意識したポイントを教えてください。

首の傾け具合と言いますか、進平くんのあまり気張っていない、脱力しているような佇まいが印象的だったので、立ち姿はこの雰囲気を意識しました。あと、実は撮影前に作者の橘オレコ先生から「とにかく死んだ目をしてくだされば……」というアドバイスを担当編集者さん伝いでいただきまして。だから、とりあえず目を重点的に意識しようと。

出会ったばかりの紗都子と進平。

出会ったばかりの紗都子と進平。

──死んだ目はかなり難しいオーダーだったのではないでしょうか(笑)。

そうですね。でも、僕自身もたまに死んだ目をしているときがあるんですよ。特に、朝から晩までずっと仕事をしている日とか、最後のほうになると1点をずっと見つめていることがあるらしくて(笑)。自分では気づいていないんですけど、周囲の人から「死んでるよ、目」って言われるんです。だから、あの感覚か!ってすぐに理解しました。

──髪型や着こなしの再現度も見事でした。

着付け師やヘアメイクの方、カメラマンの皆さんからどうすればカッコよくなるのかをいろいろと指示いただいたので、自分だけじゃなく全員で1つの作品を作り上げた感覚ですね。見た目以外は自分次第なので、いいプレッシャーの中で撮影させていただきました。

橋本祥平

橋本祥平

残酷だけど美しい、目を奪われた口付けシーン

──ここからは「ホタルの嫁入り」の魅力をお伺いしていければと思いますが、その前に橋本さんのマンガ遍歴を少しだけ教えてください。

初めて読んだマンガは「浦安鉄筋家族」です。出会いは、幼少期に親戚の家に家族みんなで遊びに行ったとき。僕は4人姉弟なんですけど、僕以外みんな女性なんですよ。しかも親戚の子供たちもみんな女性。その中にポツンと男の僕がいて、遊ぶにしても馴染めないなあと思っていたら、親戚の家にあった「浦安鉄筋家族」を見つけたんです。読んでみたら、もう声に出して笑っちゃうくらい面白くって。初めて読んだマンガにして、マンガに目覚めた瞬間です(笑)。そのあとは、王道の少年誌に行きましたね。

──そんな橋本さんが「ホタルの嫁入り」を読んでみて、どんな感想を抱きましたか?

ジャンルとしては少女マンガになると思いますが、刀で人を斬るシーンとか意外と残酷な面もあって、なんだか想像していた少女マンガと違う!と驚きました。戦闘シーンがあるから、少年誌を通ってきた僕でもすごく読みやすいというか。紗都子さんと進平くんの恋愛模様はもちろんですが、そもそも誰が紗都子さんの誘拐事件を仕向けたのかというサスペンス要素も入っているので、考察していく楽しさがあるマンガだと思いました。

──恋愛にアクションにサスペンス、どのジャンルのマンガ好きも楽しめそうですね。

しかも、とにかく絵がきれい。って、絵心がない僕に言われても……って感じかもしれませんが(笑)。絵のきれいさは、読者を作品に没入させる1つの武器なのかなと思います。

──絵のきれいさで、特に心を奪われたシーンはありますか?

進平くんと紗都子さんが2人で蛍を見るシーンです。特に2巻に登場する、進平くんが紗都子さんの部屋に蛍を放つところが大好きです。あと忘れられないのが、2人が初めて口付けをするシーン。進平くんに斬られた人たちが周りにたくさん倒れている中、血溜まりに2人の姿が反射してるんです。状況としては残酷ですけど、とても素敵な表現ですし、美しいなあと。こんなふうに、隅々まで見入ってしまうくらいの魅力がありますよね。

幼い頃は今以上に体が弱く、一度体調を崩すとしばらく外に出してもらえなかったと言う紗都子。それを聞いて、進平は「どこにいたって俺が紗都子を自由にしてあげる」と蛍を部屋に放つ。

幼い頃は今以上に体が弱く、一度体調を崩すとしばらく外に出してもらえなかったと言う紗都子。それを聞いて、進平は「どこにいたって俺が紗都子を自由にしてあげる」と蛍を部屋に放つ。

結婚の契りとして口づけする紗都子と進平。

結婚の契りとして口づけする紗都子と進平。

剣術経験者から見る、進平の太刀筋は

──橋本さんは、進平をどのようなキャラクターと捉えましたか?

進平くんは、最初はなんだか“ヤバい人”という印象が強いですが、読み進めていくと意外とかわいいところもある。このギャップがすごく楽しいキャラクターだなと思いました。例えば、冒頭で牢獄に閉じ込められた紗都子を悪党から助けるシーン。高い建物から飛び降りて逃げるんですが、このときのポヤーンとした表情とかすごく好きです。こんな表情もするんだ!って(笑)。あとは、とにかく愛が重い! 進平くんを見ていると、愛と狂気って紙一重なのかもしれないと考えさせられます。愛が重いゆえの狂気までも隠さずに見せてくれるからこそ、ある意味、進平くんって裏表がない人なのかなと。手術痕を気にする紗都子に、俺の傷と比べたら大したことないよって言うシーンも最高ですよね。純粋にそう思っての発言でしょうし、彼の優しさが伝わるシーンだと感じます。だからこそ、彼の生い立ちや刀を握った理由がすごく気になりますね。

勢いで結婚の約束をしてしまい、罪悪感を持つ紗都子。それに対し、進平は結婚に対して前のめりで、裏切ったら何をしでかすかわからないような言動を見せる。
勢いで結婚の約束をしてしまい、罪悪感を持つ紗都子。それに対し、進平は結婚に対して前のめりで、裏切ったら何をしでかすかわからないような言動を見せる。

勢いで結婚の約束をしてしまい、罪悪感を持つ紗都子。それに対し、進平は結婚に対して前のめりで、裏切ったら何をしでかすかわからないような言動を見せる。

──橋本さんは舞台で剣術を披露されることもありますが、進平の太刀筋についてはどんな印象を受けましたか?

進平くんが紗都子さんを助けるシーンで描かれている、この1刀目の太刀筋。足を大きく開いて斬るというスタイルはすごく好きです。着流しの場合、あえて脚を見せないようにして斬るという型もありますが、僕も「薄桜鬼」で斎藤一を演じたときは足をガッツリ開いて斬っていたので。それに進平くんは、乱暴に見えて意外と太刀筋に繊細な表情があるんですよね。例えば、この刀を細かく返すような剣術とか。動と静が混じっている印象です。

橋本祥平が言及した、足を大きく開いて相手を斬る進平。

橋本祥平が言及した、足を大きく開いて相手を斬る進平。

橋本祥平が言及した、進平の繊細な太刀筋。

橋本祥平が言及した、進平の繊細な太刀筋。

──目のつけどころがさすがです。やはり着物でのお芝居って、裾捌きまで気を使わなくてはならないので大変そうですね。

そうですね。だから少しでも着慣れるために、家での普段着を着流しにしようと意気込んだことがありまして。でも縁側がある家とかだったら雰囲気も出そうですけど、自分の家だとしっくりこないし3日と続かないだろうなと思ってやめたんです(笑)。「薄桜鬼」をやってたときは舞台上でも楽屋でもずっと着流しだったんですが、いつの間にか楽屋では上下ジャージに戻ってしまって。それでも、長い時間まとっていると立ち回りや剣の捌き方が自然と身になっているというか、いつの間にか癖づいてると感じる瞬間がありますね。

橋本祥平

橋本祥平

──いつかもし「ホタルの嫁入り」が舞台化されて、橋本さんが進平役に選ばれたらどんなふうに演じたいですか?

やっぱり進平くんの二面性はしっかりと表現したいです。進平くん自身は本心で言っているのかもしれないけれど、傍から見たら腹の底が知れない……そう思われがちなキャラクターだと感じたので、この“腹の底が知れない”感を大切にして演じたいと思います。