「ホタルの嫁入り」2.5次元俳優・橋本祥平、愛が重い殺し屋を完全再現 (2/3)

苦労人の2人はどうしたら幸せになれるのか

──ヒロインの紗都子についてはどんなキャラクターと捉えましたか?

紗都子さんは頭もよくて気品もあって、恵まれた女性に見えますが、読み進めていくとそれは全部自分の努力によって培われてきたものだとわかる。なので、決して鼻につくことなく、自然と感情移入できてしまうキャラクターだと思いました。あと、彼女は心臓の病気を患っていて、いつまで生きられるのかわからない。常に死と隣り合わせの状態だからこそ、生に対する執着心というか、強い心がある。その姿を見ていると、僕もすごく励まされます。

──そんな紗都子の魅力が溢れているシーンを挙げるとするならば?

悪党から逃げてきた先の天女島で、桐ヶ谷家の外に1人で出たことのない紗都子さんが自分の無力さに打ちひしがれるこのシーン。絶望しながらも、そこからすぐに立ち上がって、自分の得意な舞いを披露して周囲を魅了していく。この逞しさには驚かされましたし、やっぱり生きる時間が限られている彼女だからこその強さなのかなと思いました。

見知らぬ土地で1人にさせられそうになり、道ゆく人に助けを求める紗都子。誰からもその声を聞いてもらえないが、土壇場で勇敢さを見せる。

見知らぬ土地で1人にさせられそうになり、道ゆく人に助けを求める紗都子。誰からもその声を聞いてもらえないが、土壇場で勇敢さを見せる。

──紗都子と進平はお似合いだなと思いつつ、互いの置かれた環境や身分の違いなど、一筋縄ではいかないところに歯痒さを感じます。橋本さんは、どうしたらこの2人は幸せになれると思いますか?

紗都子さんと進平くんが本当の愛に目覚めたとき、幸せになれるのかなと思うんですが……。でも一番重要なのは、進平くんが刀を捨てることじゃないですか? 彼にどんな過去があって、どんな思いで刀を握っているのかはまだわかりませんが、刀を捨てて初めて人として真っ当に生きたときに幸せになれるのかなと。でもなあ、進平くんにとっては刀が生きる意味なのかもしれない。難しいですね。

橋本祥平

橋本祥平

紗都子を連れ去ったのは?事件の黒幕を予想

──2巻が発売されてますます盛り上がりを見せる「ホタルの嫁入り」ですが、そもそもは紗都子が街に出た際に何者かに連れ去られ、島へと隔離されてしまったところからすべてが始まりました。作中では「計画的犯行の匂いがする」と言われているシーンがありますが、現段階で橋本さんが怪しいと思う人物はいらっしゃいますか?

シンプルに考えたら継母と継妹ですよね。いや、もう逆にそうであってくれ!と思いながら読んでいます。もしも黒幕が紗都子さんのお父さんだったらどうするよ?って(笑)。一見すると、優しい雰囲気のお父さんですが、意外と腹の底では何を考えているかわからないから疑っています。あとは、付き人として一緒に行動をしていた康太郎。実は紗都子さんのことが好きで、あえて誘拐させて自分が助けることで惚れさせようとしているのかな……と思ってしまったり。

──どれもなかなかつらい展開ですね(笑)。

そうなんですよ! 第3の刺客みたいな存在が今後登場するかもしれないですし、もう予測できないですね。「ホタルの嫁入り」って、お父さんらしき人物が紗都子さんからの手紙を読んでいて、手に蛍が止まっている……というシーンから始まるじゃないですか。これってもしかして、紗都子さんが蛍になって帰ってきたということかなとも思ったり。あるいは、このお父さんだと思っていた人が年老いた進平くんっていう可能性もありますし。もう、いろいろと想像が膨らみます。

冒頭、紗都子らしき人物からの手紙を読んで涙を流す老年男性。
冒頭、紗都子らしき人物からの手紙を読んで涙を流す老年男性。

冒頭、紗都子らしき人物からの手紙を読んで涙を流す老年男性。

──紗都子、進平以外で注目しているキャラクターはいますか?

康太郎です。先ほど、怪しいとか言ってしまいましたが(笑)、紗都子さんが誘拐された後に屋敷で拷問を受けている康太郎が「連れ戻します…!!」って言ったときの顔は嘘じゃないと思うんです。すごくカッコいいですし、進平くんと対峙したときはどんなふうになるのかな?と楽しみです。

紗都子のお付きの青年・康太郎。

紗都子のお付きの青年・康太郎。

──最後に、「ホタルの嫁入り」を未読の方にオススメするとしたらなんと伝えますか?

紗都子さんと進平くんの2人を通して、恋愛だけではなく、生と死など人の内側について深く考えさせられるマンガです。繰り返しになりますが、進平くんの派手な戦闘シーンは少年誌を通ってきた自分が読んでも手に汗握るほどの迫力がありますし、サスペンス要素もあるので考察する楽しさもあります。一度読んだらどんどん没頭していくマンガなので、未読の方はぜひこの機会に読んでみてほしいです。

橋本祥平

橋本祥平

プロフィール

橋本祥平(ハシモトショウヘイ)

1993年生まれ、神奈川県出身。2013年に「陽炎ペイン」で舞台デビューし、2016年の歌劇「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」で初主演を務めた。近年の代表作には「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー‼︎』」西谷夕役、「舞台『刀剣乱舞』」太鼓鐘貞宗役、「あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ」月永レオ役、舞台「KING OF PRISM」一条シン役、ミュージカル「封神演義-目覚めの刻-」太公望役、「機動戦士ガンダム00 -破壊による再生-」刹那・F・セイエイ役、「ミュージカル『薄桜鬼 真改』斎藤一 篇」斎藤一役、舞台「幽☆遊☆白書」飛影役などがある。12月から2024年1月にかけて、九井一役で出演する舞台「『東京リベンジャーズ』-聖夜決戦編-」の公演を控えている。