僕は浮気する張本人なので、常に心が痛いです(塚本)
──役作りで苦労したこと、大変だったところはありましたか。
塚本 僕は浮気する張本人なので、もう常に心が痛いです(笑)。塚本高史自身と純平は180度違う人間なんですよ。不倫や浮気っていう部分だけじゃなく、鈍感なところや、変に優しさを出してしまう部分とかも全然違う。演じていて「なんなんだよお前」って思うところがいっぱいありますし。でも自分と真逆の、ある意味自分を消せる役だからこそ、演じていて楽しいとも思いますけどね。
──自分と真逆のキャラを演じる難しさもありますよね。
塚本 僕には実際に妻子がいますし、不倫や浮気の経験もないので、想像するしかないんですが、大事な家族がありながら里奈のところに行ってしまった純平の気持ちについては、かなり考えましたね。里奈に惹かれつつ、それでいて一番大事なのは杏寿と家族で、そこに戻りたいと思う純平の強い気持ちも嘘じゃないと思うし。その純平の相反する感情を見せるのは難しいなと。まあ、観る人はイライラすると思うんで、そこは「純平、そっち行くな!」と思いながら観てもらったら楽しめるんじゃないかな。
山田 僕が演じる黒井は、純平さん杏寿さん夫妻の心の隙間に入り込んで、杏寿さんを誘惑する男で。まずは「どんな男だったら、傷ついている女性の心に自然に入れるのかな」と研究しました。だって黒井って、杏寿さんと会って3回目でホテルに行くんですよ(苦笑)。しかも杏寿さんって固いというか、ちゃんと旦那さんを愛していて家庭や仕事もあるしっかりした人じゃないですか。いくら弱っているときとは言え、そんな人を会って3回でどうやってホテルに連れて行くのかなと。
塚本 まあ詐欺師だよね。
山田 (笑)。でもやっぱり「この人だったらついて行ってもいいかも」って思わせたいじゃないですか、ドラマを観てくれる人にも。ドラマの主人公を誘惑するということは、ドラマを観ている人も誘惑しなきゃいけないなと思うので。渡さんのようなサイコパスというか、押し付けて束縛するんじゃなくて、相手の女性が自然と「この人といたら楽しいな」と思えるような人間なら、隙間に入っていけるのかなと思って。だから黒井は軽くて明るい雰囲気を出していこうと思って演じてます。
──「サイコパス」と言われてますが、中村さんが演じた渡の役作りは大変だったのでは。
中村 井筒渡は、プライドが高く束縛しいの亭主関白。モラハラ、パワハラ、DV、サイコパスと枕詞がすごく多い歴戦の戦国武将みたいな役で(笑)。女性を締め付けて罵倒するという欲望みたいなものが、自分の中にはまったくない感情なので、なぜ渡はこうなってしまったんだろうな、とまず思ったんですよね。井筒家の夫婦は、ある意味もう崩壊しているところから始まっていて、作中でも以前はどんな夫婦だったのかとか、どんな関係を築いてきたかも描かれていない。でも最初から「こいつはやばいやつだから」と決めつけて演じるのはつまらないなと思って。どうして渡はこんな人間になったのか、なぜこの夫婦はこんなに傾いているのか。渡が小さい頃に見てきた景色だったり、家庭の影響だったりと、彼のバックボーンを僕なりに想像して。だから宣伝文句として、サイコパスだなんだっていうのはあったりしますけど、生まれながらのモンスターとして演じる気はないですし、そんなやつ見てても面白くないだろうし。いろんなものを抱えて吐き出した結果が、ああいう行動や言葉になってしまうのかなと思って演じています。あと気をつけているのは、浮気された被害者みたいには見られないようにしようと思っていて。それに僕の役が被害者になってしまったら、話を引っ掻き回す役が1人減っちゃうので。まあ、だんだんただの小物になっていきますけどね(笑)。それも演じがいがあります。
何が悲しくて自分の誕生日の次の日に嫁の浮気を観なきゃいけないのか(中村)
──ドラマの撮影中のエピソードがあれば教えてください。
塚本 昨年末から撮影が始まったんですけど、ちょうどクリスマスの日に浮気するシーンの撮影をしまして。酷いですよね、スケジュールを調整した人の悪意を感じますよ(笑)。
中村 僕は12月24日が誕生日なんですけど、25日のまさに31歳になって最初の撮影が、「嫁が知らない男と裸で抱き合ってるところを見る」っていうね……(笑)。何が悲しくて自分の誕生日の次の日に、嫁の浮気を観なきゃいけないのかと。
山田 それ現場でスタッフさんと話してたんですよ。もし自分が渡さんの立場で、まりかさんと純平さんのベッドシーンを目撃することになったらどうしようって。で、逆に何をしたら相手にダメージを与えられるだろうかって話になって。いきなりベッドに入ってきたらすごく怖いんじゃないかって(笑)。
中村 それ、まったく同じことを現場でも塚本くんとしゃべってたよ。渡が無言で脱ぎだしたら怖いねって(笑)。
──もしご自身がそんな浮気現場を見てしまったらどうしますか?
塚本 僕は許してしまうと思います。プロセスはわかんないけど、最終的には許すとしか言えない。きれいな言い方をしますと、僕は妻がいないと何もできないので。最終的には「しょうがねーな」ってなっちゃうんじゃないかな。心入れ替えてがんばれと。やってしまったことをいつまでも怒っててもしょうがないですし。
山田 僕も最終的には許しちゃうのかなあ。ある程度悲しんだら、お酒飲みつつゆっくり話し合いをして。でもさっきも言いましたけど、僕、ちょっと渡さんっぽいところあるんですよ。ダメージを与えたいというか、相手にも自分と同じくらい傷ついてほしいなって。
塚本 それで一緒のベッドに入るの?
山田 (笑)。いやまあ、もしそういうときがきたら川の字になって寝るのもいいかなと。修羅場を楽しい方向に持っていけるかもしれないし。
塚本 いや楽しくはないでしょう(笑)。こっちも「入る?」とも言えないし。ダメージは与えられるかもしれないけど。
中村 僕はもし自分が女性で杏寿の立場だったら、できる限りの権利と養育費と慰謝料をもらって「あとは弁護士を通してください」って言います(笑)。でも男としてはどうなんだろう。なんていうか、恋愛や結婚って「男の責任」って思ってたほうが健康的な気がしてて。
塚本 たしかにね。でもそれ、渡とは全然逆の考え方だね。
中村 そりゃめっちゃ演技してますもん(笑)。まあ渡はだいぶ曲がってるかもしれないけど、それも愛ゆえなんですよね。それぐらい、里奈への思いは強いってことで。
塚本 まあね、愛情が悪いほうにいき過ぎてるけど。
中村 ドラマに出てくる男の中で、唯一叫ぶ人ですからね。そんな疲れることをするっていうのは、何かしらの強いエネルギーが必要なんですよ。
塚本 究極だよね、不倫とか浮気とかって。いろんな夫婦の形があるように、いろんな浮気と不倫の形があるんだよ。
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僕も渡さんの気持ち、なんとなくわかる(山田)
- こやまゆかり・草壁エリザ
「ホリデイラブ~夫婦間恋愛~⑥」 - 発売中 / 講談社 / DeNA
浮気の状況説明の食い違いに納得せず、純平と里奈を執拗に追及し続ける渡。その陰湿な責めに耐えきれなくなった杏寿は、彼が望む“真実”を話すよう純平に促した。過ちを認め「真剣につきあっていた」という純平の言葉に、喜びを隠せない里奈だったが、2人が別れずやり直すことを知ると、杏寿の“一夜の過ち”を暴露してしまう。さらに軋む2組の夫婦、その先にあるのは……。
- ドラマ「ホリデイラブ」
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放送日程
- テレビ朝日系列にて毎週金曜23時15分放送
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スタッフ
- 原作:「ホリデイラブ~夫婦間恋愛~」(こやまゆかり・草壁エリザ/DeNA「マンガボックス」連載)
- 脚本:渡辺千穂
- ゼネラルプロデューサー:大川武宏(テレビ朝日)
- プロデューサー:飯田爽(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)
- 演出:松田礼人(ドリマックス・テレビジョン)
- 制作:テレビ朝日、MMJ
キャスト
- 高森杏寿:仲里依紗
- 高森純平:塚本高史
- 井筒渡:中村倫也
- 井筒里奈:松本まりか
- 黒井由伸:山田裕貴
- 小泉駿:飯島寛騎
- 一ノ瀬真人:岡田龍太郎
- 坂口麗華:壇蜜
- 春田龍馬:平岡祐太
- ほか
- 塚本高史(ツカモトタカシ)
- 1982年10月27日生まれ、東京都出身。サンミュージックプロダクション所属。ドラマ「職員室」で俳優デビュー。映画「バトル・ロワイアル」、ドラマ「木更津キャッツアイ」、映画「タイヨウのうた」などに出演。待機作には、映画「輪違屋糸里~京女たちの幕末~」などがある。
- 中村倫也(ナカムラトモヤ)
- 1986年12月24日生まれ、東京都出身。トップコート所属。2005年に映画「七人の弔」で俳優デビュー。映画「星ガ丘ワンダーランド」、舞台「ライチ☆光クラブ」、映画「3月のライオン」、映画「伊藤くん A to E」などに出演。待機作には、映画「孤狼の血」、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」などがある。
- 山田裕貴(ヤマダユウキ)
- 1990年9月18日生まれ、愛知県出身。ワタナベエンターテインメント所属。2011年に特撮ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。「闇金ドッグス」シリーズ、映画「ストロボ・エッジ」、「青空エール」、「闇金ウシジマくんPart3」、「HiGH&LOW」シリーズなどに出演。公開待機作に、映画「となりの怪物くん」、映画「あの頃、君を追いかけた」などがある。