アニメ「ハクメイとミコチ|「背景に手描きの温もりを」原作者×監督×背景美術チームがこだわり語る座談会 松田利冴&下地紫野の“ハクミコさがし”も!

2018年1月より放送中のテレビアニメ「ハクメイとミコチ」。同作は緑深き森で暮らす、身長9センチメートルの女の子・ハクメイとミコチの日常を描く物語だ。樫木祐人がハルタ(KADOKAWA)で連載している原作マンガは背景の描き込みが緻密なことでも知られ、アニメ化が発表された際にはファンから特に背景美術への関心が集中。アニメーション制作を「クズの本懐」「がっこうぐらし!」のLerche(ラルケ)、背景美術をアニメやゲームの背景美術に定評のある職人集団・草薙(くさなぎ)が担当することがわかると、期待の声があがった。

コミックナタリーでは、そんなアニメ「ハクメイとミコチ」を支えるスタッフたちの座談会をセッティング。2月初旬、原作者の樫木祐人と安藤正臣監督、そして草薙の美術統括・須江信人、美術監督の栗林大貴に集まってもらい、アニメ制作の貴重な裏話を語ってもらった。さらにアニメでハクメイ役を務める松田利冴と、ミコチ役を演じる下地紫野の2人と一緒に、身長9センチメートルの世界を体験する企画“ハクミコさがし”を敢行。秋の気配が残る12月の代々木公園で、写真撮影にチャレンジしてもらっている。

取材・文 / 小松良介(P1~2)、鈴木俊介(P3) 撮影 / 新妻和久(P3)

あらすじ
ハクメイとミコチ

そこは私たちの知らない、小さな世界──。

ハクメイとミコチは、身長わずか9センチメートルの女の子。緑深き森にある大楠の洞に家をつくって、のんびりと暮らしている。近くには山間の街・マキナタ、足を延ばせば港町・アラビなど、この世界では彼女たちと同じ小さな人々や動物、昆虫たちが息づいて、独自の社会を築いている。

彼女たちの生活はいつも賑やか。伝説のトンビを求めて森を探し回ったり、街の収穫祭を歌で盛り上げたり……。吟遊詩人のコンジュや研究者のセン、ハクメイの同業者でニホンイタチの鰯谷(いわしだに)など、陽気で愛嬌のある仲間たちに囲まれながら、素朴で豊かなスローライフを楽しんでいる。

でも、人生は楽なことばかりではない。自然の中には危険がいっぱいだし、社会に出れば仕事につまずいて落ち込む日もある。一筋縄ではいかないこともあるけれど、彼女たちはいつも元気に顔を上げて、毎日を大切に生きていく。

そんなハクメイとミコチの愛らしくて愉快な暮らしを、ちょっと覗いてみませんか?

人物紹介
ハクメイ
ハクメイ(CV:松田利冴)
天真爛漫で竹を割ったような性格。ミコチと同居人になる前は各地をさすらう旅人だった。手先が器用で大工や修理屋を営んでいる。
ハクメイ
ミコチ(CV:下地紫野)
ハクメイとは対照的に家庭的でインドアな性格。手製の保存食や雑貨を卸して生計を立てている。マキナタでは嫁候補No.1の人気ぶり。
ハクメイ
コンジュ(CV:悠木碧)
マキナタの蜂蜜館に住む吟遊詩人。収穫祭の歌姫コンテスト以来、ミコチをライバル視していたが、和解して友人に。大雑把でがさつ。
ハクメイ
セン(CV:安済知佳)
マキナタの東の沼に住む学徒。生命を研究対象としており、特殊なランプで生物の骨を動かすことができる。静けさを好むマイペースな性格。
スタッフ座談会 原作者・樫木祐人×監督・安藤正臣×美術統括・須江信人(草薙)×美術監督・栗林大貴(草薙)

「ハクメイとミコチ」の世界感は「FF9」のガイアがベース?

──今回はアニメ「ハクメイとミコチ」のスタッフ座談会ということで、原作者の樫木さん、監督の安藤さん、そして草薙から美術統括の須江さんと美術監督の栗林さんにお越しいただきました。トークに入る前に、美術チームのおふたりの仕事内容を教えていただけますか?

須江信人 はい。私が務める美術統括は、アニメの作画をするうえで背景をどういうふうにするのか、監督と話し合いながらデザインを設計していくのが仕事です。いわゆる下準備ですね。いざ作画が始まったら現場の指揮は栗林にバトンタッチして、自分は次の回の作業を進めます。今はちょうど第11話の美術設定を用意しているところですね。

「ハクメイとミコチ」には、背景が見どころとなるシーンが多い。
「ハクメイとミコチ」には、背景が見どころとなるシーンが多い。
「ハクメイとミコチ」には、背景が見どころとなるシーンが多い。

栗林大貴 僕ら美術スタッフは須江が作った美術設定に色を付けて、アニメの素材として仕上げていきます。美術監督はできあがった画をチェックしていくのが主な仕事です。今は第8話ぐらいをやっていますが……。

──栗林さんは、なんだか今にも声が消え入りそうですが……。

安藤正臣 今が一番修羅場なんですよ。さっきもここへ着く途中で倒れるんじゃないかと(笑)。

栗林 監督こそ日に日に弱られてるじゃないですか(笑)。放送が始まってからはそれでもどこか元気そうに感じますが。

安藤 SNSや周囲の反響を糧にがんばっているんですよ。

──アニメ化決定を伝えたニュース記事でも、アニメ化されることはもちろんですが、背景美術を草薙さんが担当されることについても反響がありました(参照:「ハクメイとミコチ」TVアニメ化、身長9cmのこびとの女の子描く)。

樫木祐人 今回のアニメに草薙さんが参加されるというお話を聞いたときは、うれしかったです。僕がまだ背景を全然うまく描けない頃、草薙さんの手がけた背景がすごくお手本になったので。

安藤 そこは具体的に作品名を言っちゃっていいんじゃないですか?

樫木 いいんですか?「FF9(ファイナルファンタジーⅨ)」です。

須江 おー、懐かしいですね。僕も制作に携わってました。

──当時を知る方がここに。

須江 「FF」シリーズに関わることになったのは「7」からでしたね。PlayStationが登場した当時って、圧倒的にデザイナーが足りない時代だったんです。僕らもゲームが好きだったから、「これはビジネスチャンスだ」と感じていて。そんな折、うちの社長が週刊ファミ通(現KADOKAWA)に掲載されていたスクウェアの求人募集を見つけて、会社の名前で応募したんですよ。

一同 (笑)。

須江 そしたら「すぐに来てほしい」と呼ばれて、いわゆる3Dのプリレンダに使う絵のデザインを描き起こすことになったんです。スクウェアさん、現在のスクウェア・エニックスさんとはそこからのお付き合いになります。

ハクメイたちの頭身は、ゲームからの影響も。

安藤 なるほど。こうして我々は「FF」シリーズを遊んで育ち、樫木さんは「9」の影響を受けてマキナタを作ったわけですね。

樫木 (FF9からは)キャラクターのデフォルメ具合などにも影響を受けましたね。

手描きによる“温もり”を背景で表現する

──樫木さんは、アニメになったご自身の作品をご覧になっていかがでしたか?

樫木 シナリオ制作段階からアフレコまで、アニメができあがっていく様を間近で見るという貴重な経験をさせていただきましたが、最後はもう完全に客目線というか、すごいなあという気持ちでいっぱいでした。自分は絵を描くとき、立体ではなくシルエットで描いてしまいがちなので、奥行き感のあるアニメを見ると、やっぱり違うなあって。

安藤 ありがとうございます。自分はとにかく、原作の雰囲気をいかにアニメに落とし込めるかが仕事だと思っていたので、そう言っていただけるとうれしいですね。

──原作の雰囲気を表現するために意識されたのはどんな部分ですか?

フリーハンド感を残すことで、全体的に柔らかな印象に。

安藤 やっぱり、できるだけ手描きによる温もりを大切にすることでしょうね。

栗林 具体的には、定規で引いたような直線を使わないようにしたり、テーブルの角も直角にならないようつぶしたりして、丸みを帯びた手描き感を残してます。それによって、色を乗せたときの全体的な柔らかさを感じてもらえたら、と。

須江 それこそ冒頭で話題にあがった「FF9」でも行っていた作業ですね。当時も街道の石畳などは、3DCGで作った石のソリッドなカタチをひとつずつ潰しながら、全部デフォルメを利かせて組み上げていましたから。

──CGを使いながらも、手描きの質感を表現していく。

樫木 それでいうと、マンガでも3Dモデルを活用しているんですよ。そのまま使うと違和感が出てしまうので、あくまで立体物を描くときに、パースラインの代わりとして使用しているだけですが。

安藤 我々もアニメの美術設定を作る際に、樫木さんが持っているデータを参考資料とさせていただいているんです。小骨の店内とかも3Dモデルがありましたね。

コンジュやセン、イワシといった仲間たちが物語に彩りを添える。
コンジュやセン、イワシといった仲間たちが物語に彩りを添える。
コンジュやセン、イワシといった仲間たちが物語に彩りを添える。

須江 レイアウトを描き出すうえで原作のモデリングが使えると、作業的にも効率が良いんです。何より栗林の負担が減りますから。

栗林 最終的にはレタッチしたうえで手描き風に直すので、苦労することに変わりはないのですが、より正確なカタチやラインを出せるメリットは大きいですね。先生はいつも3Dモデルをパソコン上で見ながら描いているんですか?

樫木 3Dモデルとキャラクターのアタリ段階まではデジタルで。それを下書きとして原稿用紙に薄く印刷してからペン入れをアナログでやっています。

──そういえば、先日発売された副読本「ハクメイとミコチ ワールドガイド 足下の歩き方」を読んでビックリしたのですが、単行本の表紙カラーは先生の妹さんが塗られているとか。

「ハクメイとミコチ ワールドガイド 足下の歩き方」

樫木 妹のほうが、自分よりも色塗りがうまいんです(笑)。子供の頃から同じようなものを見て育ってきましたから、細かい指定を入れなくてもニュアンスを伝えるだけで、イメージ通りに仕上げてくれるんです。

──その表紙で塗られた色彩や紙のざらつきなどの質感が、アニメでも再現されていて驚きました。

栗林 気付いていただきありがとうございます(笑)。そこは仕上げの段階で、テクスチャを乗せて表現していますね。

テレビアニメ「ハクメイとミコチ」
放送情報
AT-X:毎週金曜21:00~
TOKYO MX:毎週金曜22:30~
サンテレビ:毎週金曜24:30~
KBS京都:毎週金曜25:30~
テレビ愛知:毎週金曜27:05~
TVQ九州放送:毎週月曜26:30~
BS11:毎週金曜23:00~
Amazonプライム・ビデオでも見放題独占配信
ほか
スタッフ
原作:樫木祐人(「ハクメイとミコチ」/KADOKAWA刊)
監督:安藤正臣
シリーズ構成:吉田玲子
キャラクターデザイン・プロップデザイン:岩佐とも子
総作画監督:岩佐とも子、伊藤麻由加
背景美術:草薙(KUSANAGI)
美術監督:栗林大貴
美術統括:須江信人
美術設定:須江信人、綱頭瑛子
色彩設計:南木由実
撮影監督:中川せな
編集:及川雪江(森田編集室)
音響監督:飯田里樹
音楽:Evan Call
音楽制作:Lantis
アニメーションプロデューサー:比嘉勇二
アニメーション制作:Lerche
製作:ハクメイとミコチ製作委員会
キャスト
ハクメイ:松田利冴
ミコチ:下地紫野
コンジュ:悠木碧
セン:安済知佳
イワシ:松風雅也

©樫木祐人・KADOKAWA刊/ハクメイとミコチ製作委員会

「ハクメイとミコチ」上巻
2018年4月25日発売 / KADOKAWA
収録話数:第1話~第6話
「ハクメイとミコチ」上巻

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「ハクメイとミコチ」下巻
2018年6月27日発売 / KADOKAWA
収録話数:第7話~第12話
「ハクメイとミコチ」上巻

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テレビアニメ「ハクメイとミコチ」OP主題歌

Chima「urar」
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1296円 / LACM-14705

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収録曲
  1. urar
  2. hey, Mr.July
  3. urar(Instrumental)
  4. hey, Mr.July(Instrumental)

テレビアニメ「ハクメイとミコチ」ED主題歌

「Harvest Moon Night」
2018年3月7日発売 / Lantis
「Harvest Moon Night」

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1296円 / LACM-14706

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収録曲
  1. Harvest Moon Night / ミコチ(CV:下地紫野)、コンジュ(CV:悠木碧)
  2. 水底のリズム / コンジュ(CV:悠木碧)
  3. Harvest Moon Night(Instrumental)
  4. 水底のリズム(Instrumental)
樫木祐人「ハクメイとミコチ①」
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樫木祐人「ハクメイとミコチ⑥」
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樫木祐人「ハクメイとミコチ⑥」

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