コミックナタリー Power Push -「ガーリッシュ ナンバー!」

「俺ガイル」の渡 航、最新作は“だいたいいつも揉めている”声優業界ストーリー

「とにかくめんどくさい渡航」

渡さんはアニメ本編にはどのような形で関わっていますか?

クレジット上は原案・シリーズ構成・脚本です。

主な仕事は上がってきたものに対して「なーんか違うんだよなぁ……」と具体性のない難癖をつけることと、制作上何か問題が起きたときに「まーた渡航のせいか」と関係者の皆さんに言われるボトルネックになることです。このプロジェクトにおけるメインジョブはラスボスです。

これまでも「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」「クオリディア・コード」がアニメ化されましたが、それらと「ガーリッシュ ナンバー」で関わり方に違いはありますか?
アニメ「ガーリッシュ ナンバー」PVより。

そこまで大きな違いはないかと思います。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」では原作者として、とにかく言えるだけのわがままをとりあえず言ってみよう!くらいの感覚でいました。どうせ実際に折衝するのは担当編集だし!みたいな千歳並みの舐めプメンタル。どんな無茶そうでもとりあえず言ってみる、その上でできるできないの線引きがどのへんか探ってみようと。自分がプロデューサーだったら「おいおいマジかよこいつ、殴ってでも止めろよ編集……」と思うレベルですが、結果、かなりの部分を叶えていただけたので、スタッフ、委員会の皆様には感謝の念を禁じえません。アニメ制作でもシナリオ、コンテ、アフレコ等々ことあるごとに、「ここは変えたい」「ここは直したい」と、いろいろ申し上げてしまい、非常にご迷惑をおかけしてしまいました。シリーズを通してですが、本当にスタッフの皆さま、委員会の皆さまがお話を聞いてくださる現場で、実現不可能なことであってもその代替案であったりだとか、現状のほうがアニメ的には良いのではないかということを話していただける現場だったかなと。特にシリーズ構成の菅さんや及川監督にはたくさん話を聞いていただけて、本読みでもアフレコでもぎりぎりまで頑張っていただきました。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続」で、「原作からカットをしたくない」と一番おっしゃっていたのが及川監督だったくらいで、非常に幸せなアニメだったと思います。「俺ガイル」は最初のメディアミックス企画だったドラマCDからして、キャスティングやキャラソンの提案等、100%こちらの希望が通るちょっとおかしな現場でした。なので、そうした経緯やご一緒した時間の積み重ねも、渡航のアニメに対する関わり方に影響しているのかなと思います。

アニメ「ガーリッシュ ナンバー」PVより。

「クオリディア・コード」は原作回り、お話づくりに関しては頼れる仲間がいたので、そこは頼っていこうという感じのスタンスでした。ことあるごとに「俺たちは仲間だろ! ドン!」って言ってた。脚本チームについては、一緒に何かを作ろうという話をかなり以前からしていて、全体の話の流れ、アニメになった際のシリーズ構成、設定、ギミック等は決めていたので、原案という部分では中枢にいたかなと思います。アニメに関しては監督はじめスタッフの皆様にかなり助けていただいたというか、非常に多くのアイデアやご意見、ご提案、アニメーションへと変換するに際してのアレンジ等もいただいたので、専門的な分野やお任せすべき部分はお任せしていこうというスタンスが強かったかなと思います。そうした中で最もわがままを言わせていただいたのは、キャスティングとアフレコ周りでしょうか。これに関しては全力で我を通させていただきました。

「ガーリッシュ ナンバー」は田中Pが「俺ガイル」でご一緒した経緯もあってか、「とにかくめんどくさい渡航」という印象があるのか、プロデューサー陣もスタッフ陣もすごく熱心にいろいろ聞いてくださっている実感があります。ほぼ介護。その期待に応えなきゃ!と今回も七面倒くさいことをたくさん言っています。そのたびに「まーたわたりんが何か言ってんのか」みたいな顔をされるぞ! お互い慣れたものです。

すべてに共通して、とにかくめんどくさくて迷惑をかけるという関わり方をしていますが、「ガーリッシュ ナンバー」は過去最高(2年ぶり3回目)くらいに、我儘を言っていると思います。原案やシナリオ、コンテやキャラデザ等アニメ周り、アフレコや音楽等の音響関係等々、ある意味ゆりかごから墓場まで。このタイトルと心中するレベル。

アフレコは楽しそうだけど、ガラスのこっち側は……

アニメ化を進行するにあたって、アニメ制作会社やそのほか関係者の反応はいかがでしたか?

お会いして「ガーリッシュ」の話題になると、皆さん「……ああ、アレ面白そうですね」と苦笑いして距離を取ろうとします

アニメ制作ものや、声優もののアニメは過去にもいくつかありました。それらと「ガーリッシュ ナンバー」の違いは?
アニメ「ガーリッシュ ナンバー」PVより。

「ガーリッシュ ナンバー」は、本当にアニメ制作もの・声優ものなのか? なんか皆が期待していたものと違うんだが? と疑問を覚えてしまうところが最大の違いでしょうか。

ジャンル的に近い作品以外で、特に参考にしたアニメ作品はありますか?

「『響け! ユーフォニアム』みたいな作画にして」って言って、苦笑されました。

「ガーリッシュ ナンバー」はQP:flapperさんの絵柄がひとつの武器だと思いますが、アニメのキャラクターデザインに関して、制作サイドにどのようなリクエストをしましたか?

私自身は正直絵心もないので、「これは可愛い」「こっちのほうが可愛い」「なんか可愛い」「可愛い」みたいなことしか申し上げることができませんでした。ですので、QP:flapper神のお言葉に従おう、というのが私のスタンスでした。

メインキャスト5人(千本木彩花、本渡楓、石川由依、鈴木絵理、大西沙織)がフレッシュな印象です。キャスティングの狙いは?

前日譚が存在するとはいえ、ほとんど大部分がオリジナルで一から作り上げていく作品なので、やはり一緒に作っていける方たちにお願いしたいという思いはありました。扱うテーマがテーマだけに、リアリティや生っぽさ、それっぽさというか、フレッシュであったり業界に馴染み始めてきたころだからこそ、出てくるパーソナルな部分は大事にしていきたいと考えていました。

実際、オーディションをやって最終的に決まった際には、皆さん、若手でありながらすでに歴とした実績、将来性をお持ちの方たちで、こちらの狙いとキャラクター性に対する芝居や声がうまくマッチするベストキャスティングになったかと思います。

アフレコに参加されて、また現在できているアニメを見て、現場の空気はいかがですか?
アニメ「ガーリッシュ ナンバー」PVより。

アフレコブースの中は大変和気藹々としていて、非常に楽しそうだなと思います。

ガラスのこっち側、コントロールルームは、作中のシーンやセリフがアニメ制作・製作にまつわる事柄に触れるたびに、「……辛い」とか「あるんだよなぁ」みたいな独り言が聞こえてきます。辛いです。

アニメに関しては、ご覧になるとどなたも「絵、可愛いですね!」とだいたい絵についての話に終始し、物語についてはあまり口にしないあたり、察するものがあります。

現場にはいつもアットホームな雰囲気があり、いつも明るく笑顔の絶えない、風通しの良い、誰もが夢に向かって生き生きと活躍できる空気があると思います

渡さんは作中曲もプロデュースされているとのことですが、どんなナンバーでしょうか?

プロデュースというほど何かをしているわけではないのですが、どの曲も非常にご機嫌なナンバーだなと思います。3徹してる深夜4時とかに、あがってきていたデモを確認すると、本当に泣けるんですよ。「今日も頑張ろう」とそう思えるようなナンバーです。

気が早い話で恐縮ですが、アニメが終わったあと、「ガーリッシュ ナンバー」のその後の展開は考えられていますか?

……やっぱり、ハリウッドですかねぇ。

テレビアニメ「ガーリッシュ ナンバー」

「ガーリッシュ ナンバー」

TBS

10月6日より毎週木曜日26:28~

チューリップテレビ

10月8日より毎週土曜日25:53~

サンテレビ

10月7日より毎週金曜日24:00~

BS-TBS

10月8日より毎週土曜日25:30~

スタッフ
  • 原作:Project GN
  • 原案・シリーズ構成:渡航
  • キャラクター原案:QP:flapper
  • 監督:井畑翔太
  • キャラクターデザイン:木野下澄江
  • 美術監督:峯田佳実
  • デザインワークス:石川雅一
  • LO監修:益田賢治
  • 色彩設計:林由稀
  • 撮影監督:伊藤康行
  • 編集:小島俊彦
  • アニメーション制作:ディオメディア
キャスト
  • 烏丸千歳:千本木彩花
  • 久我山八重:本渡楓
  • 片倉京:石川由依
  • 苑生百花:鈴木絵理
  • 柴崎万葉:大西沙織
  • 九頭P:中井和哉
  • 烏丸悟浄:梅原裕一郎
  • 十和田AP:江口拓也
  • 難波社長:堀内賢雄

「刃牙道(8)」

オープニングテーマ
「Bloom」

2016年11月16日発売
1296円 / GNCA-0444
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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「刃牙道(8)」

エンディングテーマ
「今は短し夢見よ乙女」

2016年11月30日発売
1296円 / GNCA-0445
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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歌唱:ガーリッシュ ナンバー(烏丸千歳、久我山八重、片倉京、苑生百花、柴崎万葉)

コミック
堂本裕貴、渡航、QP:flapper 「ガーリッシュ ナンバー」1巻 / 発売中 / KADOKAWA
コミック「ガーリッシュ ナンバー」1巻
コミック 616円
Kindle版 570円
小説
堂本裕貴、渡航、QP:flapper 「ガーリッシュ ナンバー」1巻 / 発売中 / KADOKAWA
小説「ガーリッシュ ナンバー」1巻
ソフトカバー 972円
Kindle版 900円
渡航(ワタリワタル)

千葉県出身、1987年1月24日生まれ。ライトノベル作家。2009年5月に「あやかしがたり」でデビュー、2011年に発表した「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のほか、同業のさがら総、橘公司とのユニット・Speakeasyによる「クオリディア・コード」もアニメ化された。

QP:flapper(キューピーフラッパー)

イラストレーターの小原トメ太、さくら小春によるユニット。ソーシャルゲーム「ガールフレンド(仮)」などのキャラクターデザイン、アニメ「天体のメソッド」「レガリア The Three Sacred Stars」 などのキャラクター原案を担当した。