じっと天井を見続けるコマに共感

（前作の）「僕の小規模な失敗」は高校生の、進路に悩んでた頃に読みました。自分がマンガ家を目指してたってこともあるんですけど、福満さんに感情移入してしまって。じっと天井を見続けるコマとか、すごく気持ちがわかります。

あまり信じてもらえないかもしれないけど、私と福満さん、考え方がすごく似てるの。私、根暗すぎて一番底までいっちゃって、逆に明るく生きるしかないって思って真反対に変わったんです。学校では明るい女の子でいたけど、本当は自分以外の人がすごく輝いてるように見えてた。だから「これは私の本当の気持ちをわかってくれる作品だ」って思って読んでました。

卑屈な部分を大っぴらに描ける強さってカッコいいと思うんです。自分だったらいい子ぶりっこして描けないと思うので。あと続編の「（僕の小規模な）生活」も好きですね。正直、巻数が進むにつれて奥さんや子供もできて「リア充じゃん！」って思っちゃうんですけど（笑）、「失敗」からの流れで読んでいくと、「がんばればリア充になれるのかもしれない」っていう希望も与えてくれる、すばらしい作品だと思います。

夢を追いかけるか、現実を見るか

これも高校生の頃です。上京前に、福島の田舎で受験勉強しながら読んでました。大学に入ったら川辺沿いにアパート借りて、ちょっとロマンスがあって……みたいなのにすごく憧れが（笑）。種田くんが、ほんとにカッコよくて！ 私は高校を出たらアニメ関係の学校とか声優学校に行きたかったんですけど、学校の先生から「ちゃんと普通の大学に行ってください」って強く言われて。夢を追いかけるか、現実を見るかっていうところで揺れてたから、すごく共感しました。

あとリアルな東京の地名が出てくるマンガって大好きなので、すごくときめきました。聖地巡礼するの好きなんです。「ソラニン」の舞台にも行きましたよ！ 和泉多摩川と登戸の間にある橋で、マンガと同じ角度で写真撮ってきました。

オタクだっていう自我を芽生えさせた

中学に入った頃、ネット上の“あるある本”みたいなのを読むのがすごい楽しかったんです。それと同じで、「改蔵」って時事ネタやあるある話が多いから、これを読んでおけば流行から遅れないだろうって思って読んでました。誰もわからないような小ネタやパロディを「あー、わかる！」って思えるのも楽しくて。自分はそこまでオタクじゃないと思ってたんですけど、この作品がきっかけで一気にインターネットにハマりましたね。自分はオタクなんだっていう自我を芽生えさせてくれたのが「改蔵」でした。

この頃のサンデーでは「改蔵」が一番のお気に入りだったんですけど、マガジンだったら（赤松健の）「ラブひな」。赤松先生のブログ見て、久米田先生との関係を知るのも楽しかったです！ マンガ家同士の関係ってすごい萌えちゃいます。