「GANTZ」だからこそ成立した3DCG表現

──「GANTZ」はこれまでアニメ、実写でそれぞれ映像化されていますが、今回の3DCG映画はより原作に近い雰囲気を持っていると感じました。

奥　正直僕は3DCG映画に対してあまりいい印象を持っていなかったんですよ。でも最初に「こういう感じにしたい」というPVを作ってもらってからは、「あっ、こんなことができるんだ」と思って、「これは絶対形にしてください」と激推ししていました。僕が頭の中で描いていた理想形が、そのまま映像化されている感じがあって。

──理想形というのは？

奥　僕が描いた原作の絵に近い形で3DCGに落とし込んでもらえたということですね。これまでにもマンガを原作にした3DCG映画ってたくさんあったと思うんですけど、大体が原作の絵柄を3DCGに落とし込むのに結構アレンジを加えているじゃないですか。ただ今回の場合は僕の絵に近いんですが、リアルな人間にも見えるっていう絶妙なバランスを取ってくださって。マンガのキャラクターが実写に近い形で飛び出してきたという感じがします。

志磨　奥先生のマンガがもともとグラフィック的というか、CGっぽさがあるのが大きいと思うんです。普通の2次元的なマンガを同じように原作の絵に近づけたうえで、人間っぽく見せて3DCG化するっていうのは、なかなか成立しないのではないかと。

奥　原作に近い形のグラフィックで映画化される作品ってほとんどないと思うので、「GANTZ」がこういった企画の題材に選ばれたっていうのは運がいいですし、すごくうれしかったですね。

──ネットでPVを観た方もおっしゃっていますし、僕も実際に映画を拝見して思ったのですが、女の子がすごくかわいいですよね。

志磨　うんうん。そこですよね（笑）。

奥　ヒロインの山咲杏がすごくかわいらしいんです。モーションアクターの方に演じていただいた顔の表情をそのまま取り込んでいるんですけど、加藤を見つめる表情が本当に自然で。あんな微妙な表情のニュアンスを出せた3DCGってあんまりないんじゃないのかなって思うくらい、僕は気に入っています。

志磨　あと冒頭でお歯黒が走ってきてこっちを見るシーンはむちゃくちゃ怖かったです。3DCGっていう作風と妖怪のおどろおどろしさがバッチリハマっていました。あの感じを実写で出すのは難しいんじゃないかな。

ファン目線で作る志磨遼平なりのトリビュート

──志磨さんに主題歌のオファーが来たのはいつごろなんでしょう。

志磨　去年の夏か秋くらい……、もしかしたらもっと早かったかもしれないな。「大阪編を3DCGで映画化するんですが、曲を作ってもらえませんか」とお話をいただいて。2つ返事で「やります！」とお答えしまして、すぐにできあがりましたね。

奥　僕は気に入って何度も聴いていますよ。映画の最後に流れるんですが、作品がすごく締まった感じがします。疾走感があってカッコいいし、サビもすごくキャッチーで盛り上がる。「ああ、すごくいい曲を作ってもらってうれしいな」と思っていました。

志磨　ありがとうございます。もともと「疾走感がほしい」「ヘビーな感じで」くらいのリクエストを、スタッフの方にオファーをいただいたときにもらっていたんですが、僕も「GANTZ」の大阪編と聞いて、「そういうものが似合うだろう」と同じようなイメージをいただいていたので、思い悩むことがなかったんです。

奥　しかも歌詞も大阪編というか「GANTZ」に合わせて書いていただいているじゃないですか。

──確かに主題歌の「人間ビデオ」には「じゃんじゃんじゃかじゃか」「ギゼンシャ星人」など、「GANTZ」を彷彿とさせるワードが盛り込まれていますね。曲を書き下ろして提供するというだけではなく、ここまで楽曲の雰囲気を「GANTZ」に寄せたのは、何か理由が？

志磨　自然な流れだったんですよね。やっぱりマンガファンとして、好きな作品が映像化されるってときにまず考えるのは、「なるべく残念な形にはならないでほしい」ってことじゃないですか。だから僕も「GANTZ」の映画だったらこういう音楽が付いていてほしいっていうのを、考えるところから始めて。その中で「こういう音楽をやってきた」「こういう癖がある」みたいな自分のストーリーを一切取り除きたいと思ったんです。原作ファンとして見たら、そういうのって全部不純物ですから。純粋に僕が「GANTZ」を読んで感動したものだけで、音楽を構成したいなと思ったんです。

──「GANTZ」から受けたインスピレーションを、そのまま形にすると。

志磨　そうですね。「大阪編」って聞いたときにまず思い出したのが、道頓堀から妖怪星人たちがわらわらと出て来る原作のシーンだったんです。そこに「じゃんじゃん」とか「ショキショキ」とかって、擬音がたくさん描かれていて、それがすごくヒントになりましたね。「これをそのまま具現化するだけだ」って。以前主題歌を手がけることを発表した際に、コメントも出させていただいたんですが、「GANTZ」への僕なりのトリビュートなんです（参照：「GANTZ:O」主題歌はドレスコーズの書き下ろし曲、イントロ聴ける特報も）。

「GANTZ」の着想は「必殺仕事人」から

──奥先生は他ジャンルの作品からインスピレーションを受けることはありますか。

奥　映画とかドラマからっていうのはありますね。「GANTZ」はもともと、「『必殺仕事人』をSFにしてみたら」という着想から始まっていますし。

志磨　仕事中に音楽を流したりはされるんですか。

奥　しますよ。作画をするときは音楽を流して、ネームを描くときはテレビをつけています。

志磨　えっ、ネームを描くときにテレビをつけるんですか。音は消して？

奥　いや、音も消さないで笑ったりしながらネームを描いています。逆に音がないと安心できないんですよね。

──志磨さんは曲を書かれる際は静かな場所が多いですか？

志磨　そうですね。外出中にできたりすると効率がいいんでしょうけど、BGMが流れているような場所だと、鼻歌でメロディーに歌詞を乗せているときに、つられてしまってテンポがわからなくなったりしてしまうので、家でやっています。気付いたら寝てるっていうことが多いんですけど（笑）。