実写化困難と言われていたドラマ「ガンニバル」、原作の大ファンであるかまいたち・山内健司はどう観た? (2/2)

昔の実写化と今の実写化は全然違う

──そもそも「マンガを実写化する」ということ自体に否定的な方も少なからずいると思うんですけど、山内さんはいかがですか?

僕らが高校生とか大学生くらいの頃のマンガの実写化って、「やっぱマンガのほうがすごいやん」というものが多かったんですよね。でも、近年は実写化のクオリティがすごく上がっているなと思います。たぶん、「どういうところに否定的な声が上がるのか」をわかったうえで作っているからじゃないかと思うんですけど、最近のものは以前とは全然違いますね。

──好きなマンガ作品が実写化されると聞いても、特に不安を感じたりはしない?

シンプルに「すごいなあ」と思うくらいですね。「絶対にマンガでしか表現できないだろう」と思っていた作品の実写化でも、最近は本当にしっかり面白く作られるんで。「あの作品も実写化できちゃうんだ?」と驚くことのほうが多いです。

──今回「ガンニバル」の実写化をご覧になっても、不満に思う点などはなかったですか?

不満どころか、期待を超えてきてますね。キャストの皆さんが原作のキャラクターに似すぎていて、それがまず面白いですよ(笑)。「ようこんなに似てる人見つけてきたな」っていう。特にさぶ役の中村梅雀さんとか後藤銀役の倍賞美津子さんとかは、あまりにもぴったりすぎて……これ、キャスティング会議は大盛り上がりしたやろなあ。「そうやんな! この人やんな!」って全員が一致して決まったんじゃないかというくらい、ぴったりな方々が演じていますね。

ドラマ「ガンニバル」第2話より。

ドラマ「ガンニバル」第2話より。

ドラマ「ガンニバル」第2話より。

ドラマ「ガンニバル」第2話より。

──確かにそうですね。それこそ“あの人”にしても、予告編の映像が原作の画そのまますぎて個人的にも驚かされました。

それと、ドラマの第1話がマンガではあまり描かれなかった狩野(阿川の着任以前に供花村に駐在していた警察官)のところから始まってるんですけど、「狩野ってたぶんこんなんだったんだろうな」と腑に落ちましたし。第1話のあのシーンで一気に「おお、すごそうすごそう!」ってなったんで。

──昔と今の実写化では、何が違うんだと思いますか?

僕が思うに、マンガでやれることと実写でやれることの線引きがハッキリしてきたんじゃないですかね。「マンガではこう表現してるけど、実写だったらこう表現したほうが映える」みたいに、いい意味で切り捨てられるようになってきたんじゃないかと思います。たぶん昔は、逆にマンガに忠実にやろうとしすぎていたのかもしれない。あるいは最初から全然違うほうに行っていたか、その両パターンあったと思うんですけど。

ドラマ「ガンニバル」第1話より。

ドラマ「ガンニバル」第1話より。

ドラマ「ガンニバル」第2話より。

ドラマ「ガンニバル」第2話より。

──なるほど。原作へのリスペクトがありすぎるパターンとなさすぎるパターンの両極端しかなかったのが、最近はちょうどいい塩梅に落とし込むノウハウが確立してきていると。

そうですね。僕が見る限りでは、というだけの話ですけど。

マンガもお笑いも“導入”が大事

──ちなみに普段、マンガを読む際に「お笑いに生かしたい」ということを考えたりはしますか?

最初のスタートダッシュというか、切り口にはめっちゃ注目しますね。いろんなマンガがある中で「もう新しい切り口ないやろ」と思っているところに「あ、確かにその切り口はなかったね」と思わせるマンガがやっぱり売れてるんで。導入をじっくり描くマンガって、今はなかなか読んでもらえないんですよ。最初の、第1話の入りである程度目新しさのある角度を見せておかないと、なかなか読者が付いてこない。それはお笑いにも同じことが言えるんで、そういう意味でマンガの第1話の入りとかはめっちゃ見ますね。めっちゃ参考になるんで。

──具体的なアイデアの元を探すのではなく、ものの見方や考え方、見せ方の部分を参考にするわけですね。

そうですね。特に「M-1グランプリ」や「キングオブコント」が始まってから、より意識するようになった部分です。「最初が大事」っていうのは。

かまいたち・山内健司

かまいたち・山内健司

──導入のインパクトで惹きつけるという意味では、素人考えですけどいわゆる“キャラ漫才”が真っ先に連想されます。山内さんが以前やられていた中国人キャラなどは、そういう意図で作ったもの?

いや、あれは全然。あの頃は「エンタの神様」全盛期で「お笑いといえばキャラ」みたいな風潮があったんで、「何かキャラを作ったほうがいいんじゃないか」ということでやったもので。きちんと考えて導入を作るようになったのは、やっぱり「M-1」「KOC」以降ですね。

──導入にこだわって、その工夫がうまくいった手ごたえのあるネタというと、例えばどういうものがありますか?

設定を利用して惹きつけるという意味で言うと、まあコントはそういうものが多いんですけど……「嘘やんかー」って言う警察署長のネタとかは特にそうですね。よくある刑事ドラマの設定で入って、違うほうにずらしていくっていう。まずマンガやドラマの王道パターンを導入として使わせてもらって、そこから自分たちのオリジナルのほうへ持っていくケースは多い気がします。コントの場合は特に。

──ありがとうございます。では最後に、読者に向けて「ガンニバル」のオススメポイントを教えてください。

まず原作については、“見たことのないマンガ”を読みたい人にオススメです。僕は本当にいろんなマンガを読んでいますけど、「ガンニバル」はそれまで見たことがないタイプのマンガだったんで。ありきたりな設定とかに飽きている人にはぜひ読んでみてほしい、唯一無二のマンガだと思います。そんな尖りまくった伝説的なマンガを実写化した今回のドラマについては、コアなファンの人も納得するくらいのクオリティになっているんで、みんな拍手喝采なんじゃないかなと。センセーショナルすぎるドラマが始まったな、と思います。

──どういうタイプの人に特にオススメ、とかはありますか?

サスペンスやホラータッチの映画、ドラマが好きな方。期待を裏切らないハラハラドキドキを味わえますし、それに加えて胸が締めつけられるようなストーリーにもなっているので、ぜひ観ていただきたいです。

──かまいたちファンには薦められますか?

「これが山内の言っていたマンガなんだ」って納得してもらえると思いますね。

かまいたち・山内健司

かまいたち・山内健司

プロフィール

山内健司(ヤマウチケンジ)

1981年1月17日、島根県生まれ。2004年5月にお笑いコンビ「かまいたち」を結成。2007年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞、「第33回ABCお笑いグランプリ」「第42回NHK上方漫才コンテスト」「歌ネタ王決定戦2016」「キングオブコント2017」優勝、「第54回上方漫才大賞」奨励賞など受賞歴多数。