コミックタタン|「CITY HUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常」えすとえむインタビュー / 海坊主(シティーハンター)トリビュートイラスト タタン作家たちが無骨な彼を自分色にメイクアーップ♡

海坊主はまず私の話を聞け

──どのエピソードもすごく自然で違和感がないですが、原作のあるスピンオフということで話作りに苦労することはありますか?

海坊主の店を訪れる客のラフ。「CITY HUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常」の各エピソードは、客の悩みを聞いた海坊主がそれを解決するという内容になっている。

海坊主に関しては本当に動かしやすいです。表情のバリエーションは少ないんですけど、原作でもそこから語られること、読み取れることが多いキャラクターで、何を考えているかわからない部分は多少あるにしても、喜怒哀楽に関してはハッキリしているので描きづらさはない。ただ、海坊主って多くを語らないので、話を転がす際にどれだけ少ないセリフでバシッと決めるかというのは考えるところです。説明できないし、彼らしいセリフでバシッと短い言葉でどうまとめようかという部分は、時間を使って考えていますね。

──えすとえむさんは原作付きの作品とか、スピンオフというのは初めてですよね。やっぱりオリジナルの作品を描くのと原作付きでは全然違いますか?

違いますね。自分の作品では、自分の世界観とか自分の思っていることを伝えるのを第一に考えるんですけど、今回スピンオフをやってまず「読者さんが何を求めているのかな?」っていうのを考えるようになりました。これだけ長く続いている人気シリーズですし、キャラクターの認知度も高いので、そのイメージを損なってはいけないし、そこで気分を害される人がいたら嫌だな、と。海坊主が好きな人の心にうまくフィットさせられるものってどんなものだろうなって思いながら描いています。第1話が公開されるときは、ファンに怒られやしないかってドキドキでした。

──連載媒体がコミックタタンという女性向けサイトということで意識している点はありますか?

この作品では美樹との関係性というのを各所にちりばめていて、そこはやっぱり女性ファン向けかなと思ってます。ただ、もちろんそういうのが好きな男性ファンもいるので、女性にだけ向けてるという意味ではありません。表には決して出さないけど、海坊主は美樹への愛がめちゃくちゃ深いじゃないですか。それをここで見せられるといいかなって思ってます。美樹もそういう海坊主の愛情をわかって暮らしていますよね。

「CITY HUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常」第4話より、とある事情でホストクラブに行くことになった美樹を海坊主が迎えに行くシーン。彼女が心配でたまらない海坊主に対して「逆にあなたがキャバクラ潜入ってことになったらどんな感じかしら」と、余裕の美樹。

──美樹の安心しきってる感もいいですよね。

海坊主は不器用ですもんね。ほかの女の人に手を出すとか、ちょっと想像もできない(笑)。

──実際、海坊主のようなパートナーって女性としてどう思いますか?

美樹との関係は憧れるというか、素敵だと思うんですが、海坊主って勝手に先回りして考えるじゃないですか。「お前のことを思って」って勝手に別れを告げてしまうし、相手の気持ちを慮っているようで何もわかっていない、みたいなところ、困りますよね(笑)。

──体験談みたいですね(笑)。

体験談ではないけど「シティーハンター」を読みながら「絶対イヤだな」と思ったので(笑)。美樹に対してに限らず、情をかけた人を、よかれと思って突き放して自分は去るというところがある。それが一種の美学なんだと思いますけど、「ちょっと待て」となる(笑)。「まず(私の気持ちを)聞け」と。

──LINEとか既読スルーしそうですよね。

あー(笑)。LINEは絶対できなそう。かたくなにアカウントとか作ってくれなそう。電話で済むだろうって。

海坊主は、トトロみたいな存在

──今後、海坊主を使って描いてみたい話や場面はありますか?

新宿という舞台はあるんですけど、新宿を出た海坊主もちょっと描いてみたいですね。別の街、別の国というのを描けたら面白いかなと。

──六本木あたりだと違和感がなさすぎますよね。浅草とか?

浅草いいですね(笑)。ちょっと遠足的な、お散歩的な話もあっていいんじゃないかと思っています。

──ディズニーランドとかもいいですね。

「CITY HUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常」カット

ああ、もう絵面が強い(笑)。耳を着けただけで面白い。海坊主ってキャラが強いから何やらせても面白くなりますね。

──ちなみに、このインタビューが載る「コミックタタン特集」ではタタン作家の方々にも海坊主のトリビュートイラストを描いてもらっています。

(イラストを見ながら)あー、かわいいかわいい! やっぱりどれも佇まいがかわいいんですよね。何をやらせてもちょっとギャップがあってかわいくなるし、面白くなる。存在がもうファンタジーで、でもちょっと本当にいてほしい。トトロみたいな存在ですね(笑)。

──何をやらせても面白い海坊主が今後どうなっていくのか、楽しみですね。

自分でも描くのが楽しみです。かなり自由にやらせていただいていますが、ちゃんと北条先生にご承認いただいていますので、私が暴走してもちゃんとストップはかかるはず。ファンの方々も安心して読んでいただけたらと。


2019年2月7日更新