「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2025」男性・女性・異世界部門賞の受賞作、計6作品を担当編集者が全力プレゼン (2/3)

女性部門賞

「いつか死ぬなら絵を売ってから」
ぱらり
秋田書店

「いつか死ぬなら絵を売ってから」

「いつか死ぬなら絵を売ってから」

ネカフェ暮らしの清掃員・一希の趣味は、絵を描くこと。日々暇を見ては小さなノートに1本のペンのみで、頭に浮かんだものを描いている。そんなある日、一希の絵を熱心に覗き込む男がいた。嵐山透という名のその男は、一希の絵を高値で買い取りたいと言ってきて……。絵を描く青年と絵を売る青年を軸に、アートとお金の関係が描かれる。

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担当編集者・山本侑里氏(プリンセス・ボニータ編集部)コメント

Q. 受賞した感想をお聞かせください。

本当にうれしかったですね。「いつか死ぬなら絵を売ってから」は、ぱらり先生がとても丁寧に作っているマンガで、現在刊行されるマンガの中でも、最も面白い作品の1つだと思っております。なので、こうして素晴らしい賞をいただけるのは光栄なことですし、「ですよね! 皆さん!」と、投票くださった皆さんに握手して回りたいくらいです。数ある作品の中から、1つの作品を手に取ってもらうのは大変なことです。「いつか死ぬなら絵を売ってから」は今回女性部門受賞作に選んでいただけたことで「面白さ」の太鼓判を押してもらえたわけですから、未読の方に手に取ってもらえるチャンスが増えたことにもなります。これは、ありがたいことです。たくさんの方に読んでもらいたいので!
また、先生にはお電話でお伝えさせていただいたのですが心から喜ばれているのがお電話口から伝わってきました。ネームをいただくたびに「面白かったです」と、お伝えしておりますが、やはり担当以外からの評価というのは、大きなメッセージになると言いますか、すごく背中を押されることだと思います。

Q. 「いつか死ぬなら絵を売ってから」の推しポイントはどんなところでしょうか。

このマンガの見どころは「絵の価値ってどう決まっているの?」という、誰もが一度は疑問に思ったことがあろう、絵とお金の関係を描いている点です。絵がうまくなりたい主人公ががんばるという話ではなく、完成した絵にどう価値をつけるのか、という部分に焦点を当てている。一希の画家としての成長はもちろん描かれますが、修業的なものはほとんどありません。ほかのアートをテーマにした作品ではあまり見たことがなかったので、とても新鮮に感じています。一希にとっては自分が趣味で描いた絵が、透に見いだされたことで初めて価値が生まれた。逆にいえば、透が見つけてくれなかったら、彼の絵はただの紙切れでしかなかったのかもしれない。例えば美術展に行って展示されている作品を見ながら、2人のようなやり取りがあったのかな?と想像するのも楽しいです。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第1話より。
「いつか死ぬなら絵を売ってから」第1話より。
「いつか死ぬなら絵を売ってから」第1話より。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第1話より。

あとはキャラクター同士の掛け合いだと思います。主人公である一希とそのパトロンとなる透。置かれた環境や境遇もすべて違う2人が、ぶつかりあいながらも、わかりあっていく。わかりあったつもりがすれ違っている。2人の関係がどうなっていくのか、目が離せません。また、そういったエピソードに関しては、先生は特にエモーショナルな描き方をされていて……グッときます。「ぱらり先生ってすごい……」と思う瞬間でもありますね。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第1話より。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第1話より。

Q. 制作時の裏話や先生との印象的な思い出を教えてください。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」は、先生が秋田書店のWeb持ち込みサイトにご投稿いただいたのがきっかけです。もともと先生の過去作品は読んだことがあり、気になって、投稿ネームを拝見したんです。そしたら、これまでに読んだことがないマンガだった。「絶対この世に出すべき作品だ」と、すぐに先生に連絡をしました。月刊ミステリーボニータで連載することができてよかったです!

Q. ぜひ読んでほしいというエピソードや話数、シーンはどこでしょうか?

難しいですね……。「全部!」と言いたいところではあるのですが、3巻~4巻の一希の作品展デビュー編でしょうか。施設への来場者はたくさんいるのに一希の絵を見る人が少ないのはなぜか、というミステリー要素もあったり、ぱらり先生ならではの不均衡への憤りの描き方に痺れますし、誰に売るのが一番一希の絵の価値が上がるのかという透の手腕の見せ所など、このマンガの面白さがギュッと詰まっていると思います。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第12話より。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第12話より。

あとは、湿度高めのトリックスター・凪森くんが関わるエピソードです。彼は登場シーンでだいたい花を背負っているので、そこにもご注目いただけるとさらに楽しめるのではないかなと思います。
また、毎話面白いを更新している作品ですので、どうか続刊にもご注目ください。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第12話より。

「いつか死ぬなら絵を売ってから」第12話より。

「運命の人に出会う話」
あなしん
講談社

「運命の人に出会う話」

「運命の人に出会う話」

運命の人と出会うべく人生で初めてクラブを訪れた女子大学生・優貴は、1人の無愛想な金髪の青年・伊織と出会う。最初はその無愛想さに怖さを感じていたが、交流を重ねるにつれ伊織の人としての温かさに気づいていき……。高校時代の初恋の相手も登場し、優貴の運命は錯綜する。

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担当編集者・T橋氏(講談社女性コミック編集部)コメント

Q. 受賞した感想をお聞かせください。

このたびは、栄誉ある賞に選んでいただきありがとうございます! あなしん先生にお伝えした時は、「まさか!」と驚かれながらも、「うれしいです!」と大変喜んでいらっしゃいました。

Q. 「運命の人に出会う話」の推しポイントはどんなところでしょうか。

出会いは運命っぽくないかもしれないけれど、「誠実にお互いを想い続けて時間を積み重ねる、そんな相手に出会えることもまた運命だよね」ということが感じられる優貴と伊織のやりとりに、毎回ネームをいただくたび、キュン&ジーンとしています。

「運命の人に出会う話」第20話より。

「運命の人に出会う話」第20話より。

5年越しに再会した初恋の人が告白してきたり、いつも心配してくれる明るい男友達がいてくれたり、ミステリアスなお兄さんが登場したり、今作でも様々なイケメン「あなしん男子」が堪能できるのも大注目ポイントです!

「運命の人に出会う話」第4話より。

「運命の人に出会う話」第4話より。

Q. 制作時の裏話や先生との印象的な思い出を教えてください。

この作品は、もともとあなしん先生がSNSに載せようとしていたものを前担当が「ぜひデザートに載せさせてください!」とお願いして、雑誌用に描き直してもらったものなんです。そこからキャラクターやストーリーを大きく膨らませていってくださり、本当に感謝しています。

Q. ぜひ読んでほしいというエピソードや話数、シーンはどこでしょうか?

20話の「多幸感」です! 普段クールな伊織くんの嫉妬キスにドキドキしたかと思いきや、2問目でお答えしたこれぞ「運命の人に出会う話」というシーンもあり、最後は主要キャラ全員大集合のグランピングに突入する!という、サブタイトル通りの盛りだくさんで楽しい回になっています。ぜひご覧ください!

「運命の人に出会う話」第20話より。

「運命の人に出会う話」第20話より。

「運命の人に出会う話」第20話より。
「運命の人に出会う話」第20話より。

「運命の人に出会う話」第20話より。