コミックナタリー Power Push - アサウラ / イラスト柴乃櫂人「ベン・トー」
半額弁当を手に入れるためだけに戦うシリアスギャグ イラストレーター柴乃櫂人と原作者アサウラに直撃
アニメ化を視野に入れてたら、こんな話は書いてない
──「ベン・トー」はラノベ、マンガ、そしてアニメがあるわけですが、アニメを見て感心したところはありますか?
アサウラ スーパーの店内の背景ですね。正直、スーパーってアニメーションには向かないと言われてたんです。描くものが多すぎて。背景を動かそうとすると、棚とか商品とか全部動かさないといけないんで、情報量が多くなりすぎるんですよね。例えば押井守監督も映画「イノセンス」の中でコンビニみたいなところが出てくるシーンが大変だったと語ってらっしゃって。でも「ベン・トー」ではCGを多用して、ちゃんとスーパーの店内を再現してるのがすごいですよね。
柴乃 マンガでもスーパーの背景を描くの、すごく大変でした。
アサウラ 「ベン・トー」はとにかくアニメには向かない作品なんですよ。元々1巻で終わるつもりだったので、アニメのことなんて何も考えずに書いた話ですし。セガサターンとか、ポカリスエットとか、実際にある商品を実名でバンバン出しちゃってるんで。まずアニメになるって言って各社に挨拶まわるときに、「実は(商品名)出しちゃってます」っていう事後報告から入らないといけないんで(笑)。まあありがたいことにみなさん、どちらかというと喜んでくれたのでよかったんですけど。セガさんは特に(笑)。
──カロリーメイトとかSOYJOYとか、たくさん出てきますよね。あとスーパーでがっつり「おさかな天国」が流れるシーンも印象的です。
アサウラ あれは「おさかな天国」の版権持ってるのがポニーキャニオンだったので比較的スムーズでした(笑)。最初は何かに発展するなんて、ほんとに思ってなかったので……。
──ラノベって最近はアニメ化するのが当たり前みたいになっているので、アニメ化を視野に入れてなかったというのは意外です。
アサウラ 視野に入れてたらこんな話作ってないですよ(笑)。まあ、ちょうどそういう流れが来ているときに書き始めたので、そういうのはちょっといやらしいなと思って、逆に行こうと。アニメ化やマンガ化できないように作ろうと思っていたところがあって。もうアニメ化の話を頂いたときは、みんな頭抱えたという(笑)。
──難関がいっぱいあったわけですね。スーパーの作画といい、実名がたくさん出てくることといい。ほかにはどんな苦労があったんでしょうか。
アサウラ ああ、あとアニメーションで食べ物は鬼門と言われてるんですよ。描写がしづらいのと、海外ではほぼ伝わらない絵が出てくるのと。加えて戦闘シーンも1対1ではない、乱戦ですから。しかも誰も必殺技を使わないという。
──殴り合うだけですもんね。
アサウラ そうなんです。手からビームは出ない。
柴乃 僕も最初に読んだときは必殺技でも出るのかと思ったら、全く出てこなくて。そろそろ念動力で弁当を取るキャラが出てきてもいいんじゃないかという。
アサウラ 実際、必殺技出しちゃだめですかってアニメーションのスタッフに聞かれたりもしましたし(笑)。
小説は味の描写に重点を置いている
──マンガとラノベとアニメ、3メディアで展開しているわけですが、それぞれの見所を教えていただけますか。
柴乃 やっぱりアニメ・マンガは絵で見るので入りやすいですよね。
アサウラ 小説の場合は食事シーンに重点を置いていて、味の描写をしっかりしていますね。アニメーションの場合、意外と食事シーンは1分かそこらしかないんですが。そういったところで重点の置き方が違うので、全部見ていただけたらいちばん楽しめると思います。
──アニメはもうすぐ最終回ですが、今後の野望などはありますか?
柴乃 (小声で)アニメ2期、アニメ2期……。
アサウラ アニメ2期ですね(笑)。まあアニメは一旦終わりますが、原作小説やマンガは続くので、引き続きよろしくお願いします、と。「ベン・トー」自体、回りに流されないできた作品なので(笑)、変わらず進んでいきたいですね。
あらすじ
半額弁当争奪バトルに青春を賭けるHP(ハーフプライサー)同好会ではメンバーの白粉に元気がないことを気に掛けていた。佐藤たちは彼女を元に戻そうと奔走する一方、クリスマスに合わせるかのように「最も最強に近い狼」と呼ばれる猛者、サラマンダーが徐々に街へと近づきつつあるのを警戒していた。そんな中、槍水はHP同好会のメンバーと伝統である聖夜のパーティをしようとしていたのだが、白粉、そして佐藤も著莪と別の予定を立ててしまっていて大変なことに――!? トナカイより多忙な「狼」たちの聖夜! 庶民派シリアスギャグアクション、全国の同志へ贈るクリスマス・ギフト!
ラインナップ
「パパのいうことを聞きなさい!-空色の響き-」漫画:江尻立真 原作:松智洋 キャラクターデザイン:なかじまゆか/「ベン・トー another Ripper’s night」漫画:柴乃櫂人 原作:アサウラ/「ベン・トー△」サンカクヘッド/「カンピオーネ!」漫画:坂本次郎 原作:丈月城 キャラクターデザイン:シコルスキー/「ニーナとうさぎと魔法の戦車」漫画:薮口黒子 原作:兎月竜之介 キャラクター原案:BUNBUN/「オワ・ランデ!」漫画:ネツマイカ 原作:神秋昌史 キャラクター原案:イチリ/「雪原(ゆき)のネストーレ」高畠エナガ/「1月のプリュヴィオーズ」星屑七号/「すくーる!すくーぷ?」Tiv/「現場☆レポート」小川ハリ
特別付録
ドラマCD「パパのいうことを聞きなさい!」「ニーナとうさぎと魔法の戦車」
アサウラ(あさうら)
1984年生まれ。北海道出身。東京都在住。大学在学中に第5回スーパーダッシュ小説新人賞大賞を「黄色い花の紅(あか)」で受賞。重厚なアクションと少女の心情描写に定評があるが、「ベン・トー」では新境地・ギャグに挑み、10代・20代を中心に圧倒的な支持を受けている。
柴乃櫂人(しばのかいと)
1981年生まれ。大阪府出身。東京都在住。イラストレーター・マンガ家。ニンテンドーDS「ルミナスアーク」(マーベラスエンターテインメント)シリーズのキャラクターデザインなどを手がけたのち、独立してフリーに。「ベン・トー」シリーズのコミカライズでマンガ家デビュー。スーパーダッシュ&ゴー!(集英社)にて「ベン・トー another Ripper's night」を連載中。