コミックナタリー Power Push - アサウラ / イラスト柴乃櫂人「ベン・トー」
半額弁当を手に入れるためだけに戦うシリアスギャグ イラストレーター柴乃櫂人と原作者アサウラに直撃
槍水仙は当初黒髪の設定だった
──柴乃さんがイラストを担当することになった経緯を伺いたいのですが。
アサウラ 先輩に勧められてですね。もちろん僕も柴乃さんのことは元々知ってはいたんですけど。ちょうどその頃柴乃さんは「ルミナスアーク」というゲームのキャラデザをやってらしてお忙しい中だったんですが、ダメ元でお願いしてみようと。
柴乃 それで、3、4カ月くらい待っていただけたら手が空くので、ということで引き受けまして。
──アサウラさんの熱烈なラブコールだったわけですね。柴乃さんのイラストにピンときた点はどういうところだったんでしょう。
アサウラ 色の塗り方がまず好きだったんです。厚塗りで、筆の感じが伝わってくるような。
──なるほど。キャラクターデザインはどうやって進めていったんでしょうか。
柴乃 最初は僕のほうがゲームとの掛け持ちで忙しかったので、打ち合わせをする時間もなく。テキストでアサウラくんから設定を頂いて、それをもとにデザインするという感じです。
──槍水の髪の色、当初の設定では黒だったとお聞きしたのですが。
アサウラ あれはなんというか、ちょっとした事故というか(笑)。黒髪という設定で書いて、入稿直前までいってたんですけど、いざ柴乃さんからイラストが上がってきたら銀髪になっていて(笑)。
柴乃 あれは槍水の「氷結の魔女」という二つ名にイメージが引っ張られまして……。黒髪だという描写を読み飛ばしてしまっていたんですね……。
アサウラ 5巻か6巻くらいのときにやっと、実は最初は黒髪っていう設定だったことが判明したんですよね。それまでお互い、柴乃さんは銀髪だと思っていたし、僕は柴乃さんが「変えたほうがいい!」っていう熱意があったのかなと思っていたんですけど。でも結果的に黒よりも白系のほうが軽くなって、画面が重くならずに済んだのでよかったです。
──ほかにも柴乃さんが設定を変えてしまったキャラっているんでしょうか。
アサウラ 著莪が巨乳になってましたね(笑)。最初は巨乳キャラじゃなかったんですけど、イラストで見ると巨乳だったので、話数を重ねるごとに巨乳キャラにしていったという。
柴乃 いや、原作に「成長が著しく……」みたいな描写が書いてあったんですよ。
アサウラ それは中学生から高校生になったときの、普通の成長のことですから!(笑)
コマ割りもすべて初めての経験
──柴乃さんは「ベン・トー zero」が初めてのマンガ連載ということなんですが、マンガは全く描いたことがなかったんですか?
柴乃 ネームを切ったことすらなかったです。コマを割るのがもう初めてのことで。
──当然最初は手探りだと思うのですが、どういう風に描き方を勉強していったんでしょう。
柴乃 いわゆる「マンガの描き方」みたいな参考書を読みながらです。恥ずかしながら……。最初、編集部から24ページ描いてって言われたときに、どこまで描いてどう終わっていいかも全くわからなかったですね。アサウラくんにアイデアを聞いたりして。
──コミカライズってアサウラさんが脚本を書かれてるんですか?
アサウラ いや、もう柴乃さんにおまかせですね。
──え、話作りも全部柴乃さんが担当してるんですか?
柴乃 はい。こんなことしたいねっていう大筋はアサウラくんに聞いて。原作と矛盾しないように打ち合わせしながらやっていくという感じです。
アサウラ 上がってきたネームを見て、セリフは僕のほうで直して。ただネームに書いてあるセリフが長すぎて、フキダシに収まらないんですよね(笑)。それを簡略化して、かつキャラクターの口調に直すという作業をしていたので、最初は結構時間がかかりました。
柴乃 フキダシの大きさとかも、分からなかったので……。あとノドの部分にセリフを書くと、飲まれちゃって読めなくなるっていうことを学びました(笑)。
あらすじ
半額弁当争奪バトルに青春を賭けるHP(ハーフプライサー)同好会ではメンバーの白粉に元気がないことを気に掛けていた。佐藤たちは彼女を元に戻そうと奔走する一方、クリスマスに合わせるかのように「最も最強に近い狼」と呼ばれる猛者、サラマンダーが徐々に街へと近づきつつあるのを警戒していた。そんな中、槍水はHP同好会のメンバーと伝統である聖夜のパーティをしようとしていたのだが、白粉、そして佐藤も著莪と別の予定を立ててしまっていて大変なことに――!? トナカイより多忙な「狼」たちの聖夜! 庶民派シリアスギャグアクション、全国の同志へ贈るクリスマス・ギフト!
ラインナップ
「パパのいうことを聞きなさい!-空色の響き-」漫画:江尻立真 原作:松智洋 キャラクターデザイン:なかじまゆか/「ベン・トー another Ripper’s night」漫画:柴乃櫂人 原作:アサウラ/「ベン・トー△」サンカクヘッド/「カンピオーネ!」漫画:坂本次郎 原作:丈月城 キャラクターデザイン:シコルスキー/「ニーナとうさぎと魔法の戦車」漫画:薮口黒子 原作:兎月竜之介 キャラクター原案:BUNBUN/「オワ・ランデ!」漫画:ネツマイカ 原作:神秋昌史 キャラクター原案:イチリ/「雪原(ゆき)のネストーレ」高畠エナガ/「1月のプリュヴィオーズ」星屑七号/「すくーる!すくーぷ?」Tiv/「現場☆レポート」小川ハリ
特別付録
ドラマCD「パパのいうことを聞きなさい!」「ニーナとうさぎと魔法の戦車」
アサウラ(あさうら)
1984年生まれ。北海道出身。東京都在住。大学在学中に第5回スーパーダッシュ小説新人賞大賞を「黄色い花の紅(あか)」で受賞。重厚なアクションと少女の心情描写に定評があるが、「ベン・トー」では新境地・ギャグに挑み、10代・20代を中心に圧倒的な支持を受けている。
柴乃櫂人(しばのかいと)
1981年生まれ。大阪府出身。東京都在住。イラストレーター・マンガ家。ニンテンドーDS「ルミナスアーク」(マーベラスエンターテインメント)シリーズのキャラクターデザインなどを手がけたのち、独立してフリーに。「ベン・トー」シリーズのコミカライズでマンガ家デビュー。スーパーダッシュ&ゴー!(集英社)にて「ベン・トー another Ripper's night」を連載中。