ケサパサのかわいさの秘密は“モフみ処理”!?

大西　原作を読んでみて、matoba先生のタッチをどうアニメにするのかな、難しいのではないかな？と思っていたんです。でも、第1弾のキービジュアルを見たときに、すんなり「ベルとミュリンだ！」と感じられました。

安田　僕も、第2弾のキービジュアルのキャラクターたちを見たときに、「まさに！」と思いました。

大西　みんなの取っているポーズが、「こういうキャラクターです」という象徴的なポーズを切り取っていますよね。

──キービジュアルの淡い色味も特徴的ですし、キャラクターの線もすごく柔らかくて、原作の世界観を大事にされているのが伝わってきます。

和ト湊　もともと原作を知っていたのもあって、matoba先生が表現したいものに寄り添って作れたら、とは思っていたんです。なので、matoba先生が描くカラー原稿の淡い色合いを、可能な限りアニメのほうでも取り入れてみています。

中山　パステルカラーの色味って、アニメにするのは難しいんですよ。淡くしすぎると画面の印象が薄くなっちゃうので。

和ト湊　「ベルまま。」はなんといっても“モフみ”が大事なキーワードなので、キャラクターデザインは身体のシルエットや髪を柔らかいラインで描ける方ということで、住本悦子さんにお願いしました。

──住本さんはアニメ「ユリ熊嵐」のキャラクターデザインなどを手がけている方ですね。

和ト湊　あとは影の量や付け方にも気を付けていて。立体的な影の付け方をしてしまうと、どうしても絵に重みが出てしまうので、なるべくシンプルに影を付けてますね。

安田　それと、ケサパサがすごくかわいいですよね。モフモフした質感とか。どうやって表現するのかな？と思ってたんですが。

和ト湊　ケサパサには一応“モフみ処理”っていうのを施しています。

大西・安田　“モフみ処理”!?

和ト湊　企業秘密なんですが……といってもそんなに大したことではないですけど（笑）。柔らかく見えるような処理を撮影さんにしてもらっていますね。

人物が映っていないカットにも、すごく意味がある（大西）

──「ベルまま。」の原作はワイド4コマパートとストーリーパートを組み合わせた構成になっていますが、アニメではどのように構成されるんでしょうか。

中山　原作ではどちらのパートも含めて、ストーリーや感情の流れは1話全体で繋がっていることがほとんどなので、それをアニメでは“Aパートはこういう話”という形でまとめる感じですね。

和ト湊　matoba先生も、できればテンポ感を大事にしてほしいとはおっしゃっていたので、4コマパートはナレーションやアイキャッチも使いつつ、テンポよく進むように編集で気を付けています。やっぱり4コマのアニメ化はテンポや尺のコントロールが難しくて。

中山　紙面で見ると同じ見開き2ページでも、単純に5分間のアニメの中に毎回4コマが2本収まるかといったら、そうではないんですよ。純粋なストーリーもののマンガだと、もうちょっとマンガの中での流れがアニメの時間の流れに沿った感じになるんですけど。

──4コマの場合、コマとコマとの間に省略されているものの量が、話によってぜんぜん違いますもんね。

中山　なので全話シナリオを書いてもらっているシリーズ構成の冨田頼子さんに、かなりコントロールしてもらっています。でも、監督から第1話の絵コンテをもらったときは衝撃でしたね。シナリオから想像していたより、もっとゆるふわな絵コンテが上がってきて（笑）。

大西　監督の絵コンテは、心理描写がすごく素敵なんです。ベルはそこまで感情の起伏が激しい子ではないのですが、ベルのちょっとした心の動きを、髪のなびき方や花びらの散り方で表現していて。人物が映ってないカットにも、すごく意味があるなと思います。

中山　まさに“神は細部に宿る”ですよ、この作品は。一挙手一投足まで丁寧に作っているし、足元を映す、手元を映すだけでも、ちゃんと意味のあるカットを作っていただいてるので。

──matoba先生も、アニメならではのベルのヒールを使った演出がすごくかわいい、とおっしゃっていました。

和ト湊　ベルのヒールの演出に関しては、matoba先生とお話をしたときに、すごくヒールがお好きなんだなっていうのが伝わってきたんですね。「ベルまま。」のキャラも、ベルであればモフモフしたものが大好きとか、みんな強いこだわりや好きなものを持っていて、であればmatoba先生のそういうこだわりも、クローズアップしたいなと自然に思ったんです。詳しかったわけではないので、いろいろ勉強したような覚えがあります。

大西　ヒールの勉強ですか？

和ト湊　ヒールを履いているときの歩き方や、立ち居振る舞いとかですね。あとは先生からも、原作のモチーフになっている資料をいくつかお貸しいただきました。悪魔についても先生にいろいろ質問させてもらったんですが、たくさん答えが返ってきて勉強になりましたね。