アニメ「薔薇王の葬列」久川綾、大原さやか、伊藤静、鈴代紗弓がドロドロの愛憎劇に見出した中毒性と癒やしとは (2/2)

ドロドロした部分が大半を占めている作品だからこそ、ほっこりするシーンが引き立つ(大原)

──先ほどマーガレットが、ヨーク公爵を剣で刺すシーンのお話が出ましたが、彼女もヨーク軍に捕まった際、目の前で息子のエドワードが剣で刺されるという運命を辿ります。因果応報じゃないですけど、11話で描かれるそのシーンは衝撃的でした。

大原 そうですね……まさに因果応報……2話と見比べると余計にやり切れなさと運命の皮肉さを感じます。先日初回から12話まで改めて観返したんですけど、特に11話と12話がとにかく衝撃的すぎて震えました。どうしようもなくつらくてボロボロ泣いちゃった。11話はちょうど、紗弓ちゃん・天﨑(滉平)くんと私、3人一緒に収録できたんだよね?

鈴代 11話、12話と一緒に録らせていただきました。私も11話で忘れられない場面があって。戦いを前にマーガレットさんとアンちゃんが掛け合うシーンで、エドワードを逃がそうとするマーガレットさんがアンちゃんに「あの子(エドワード)の命をヨークに奪わせないで」「これは命令じゃない」と告げたあと、「エドワードの命を託します」と続けるんですよ。なんてすごいことを言っているんだろうと痺れましたし、参戦する気満々のエドワードを足止めするために、アンちゃんがロウソクの燭台で彼を殴るシーンがあるじゃないですか。やっぱり、あれができる子とできない子がいるわけで。彼女は前者で、守りたいものとか、信頼されたことがあると、それに向かって真っ直ぐに突き進む。アンちゃんはベクトルは違えど、ほかの女性の皆さんと同じ熱量を持っているんだなと感じられる、すごく印象的なシーンでした。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。ウォリック伯爵が死亡し、マーガレット王妃は「勝てる確証はなくなった」とアンに告げ、息子・エドワードの命を託す。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。ウォリック伯爵が死亡し、マーガレット王妃は「勝てる確証はなくなった」とアンに告げ、息子・エドワードの命を託す。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。父・ウォリック伯爵の死を悲しむアンだったが、マーガレット王妃から自分たちの状況を聞かされ、それどころではないことを知る。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。父・ウォリック伯爵の死を悲しむアンだったが、マーガレット王妃から自分たちの状況を聞かされ、それどころではないことを知る。

久川 アンちゃんは、ただの乙女チックな夢見る夢子ちゃんじゃないよね。確かにピュアで白くて、この中では一番純真な部分を背負ってくれているんだけど、ちゃんと潔い強さを持っている。だからこそ、このドロドロした世界をやっていけたんだと思う。ただの夢見る夢子ちゃんだったら、とっくに潰れていただろうし。私は自分が憎しみの感情ばかり追っていたから、アンちゃんや白猪の“白いの”が登場するシーンでは、ホッとさせられていました。

鈴代 まわりが強すぎる中、アンちゃんは白い部分をちょっとでも残そうとしているように感じたんです。限りなくグレーになりつつある白みたいな状態でがんばっている。そこがすごく切なくて。「がんばれ! アンちゃん!」って、応援する気持ちで観てました。

伊藤 1人ひとりのキャラクターも濃いし、成し遂げようとしていることも強烈だったりするから、アニメを観ていると息苦しくなったりするんだけど、そんな中にアンちゃんとか、ウチの娘のベスちゃんとか、オアシスみたいな子がいるのがよかったよね。

大原 基本的にドロドロした部分が大半を占めている作品だからこそ、ほっこりするシーンが引き立つのかなって。アンちゃんが白いのと再会したときに「次の晩餐に出されちゃったのかと思った」って言うシーンで見せるリチャードの笑顔もすごく好きで。ああいう笑顔はなかなかこの作品では見られない表情だったので、それを引き出したアンちゃんはすごいなって思いました。あと何より癒やされたのは、ウチのエドワードのかわいさです♡

アニメ「薔薇王の葬列」より、エドワード王太子。

アニメ「薔薇王の葬列」より、エドワード王太子。

久川 確かにかわいい!

大原 リチャードとエドワードが戦場から離れて市場を歩くシーンでは「何がほしい? なんでも買ってやるぞ」ってうれしそうに話しかけたり、リチャードの手を引っ張ってエスコートするときの「どうだ、男らしいだろ」っていうモノローグとか、もう……めちゃくちゃかわいくて! もし生まれた時代が違ったなら、制服を着て好きな子と手をつなぎながらこうやってデートを楽しみたい年齢なんだよなあって。そんな等身大な部分が垣間見えるシーンだったので、母目線でジーンとしていました。

──作中で一番、エドワードがイキイキしているシーンだなと感じていました。

伊藤 いいなあ。うちの夫のほうのエドワードは愛に生きる男だし、息子のエドワードは王になるべくして育てられたものだから、ワガママで人を見下すような子供に育ってしまったし(笑)。娘のベスは母親に似ずにいい子でしたけど。

──そんな伊藤さんが印象に残っているシーンは?

伊藤 自分の復讐心が毎回楽しすぎたので(笑)、そこかなあ。ベスが生まれて女の子だってわかったときに「は?」っていう顔をして、「もう1人産まなきゃダメね」っていう気持ちになる場面や、男の子が生まれたら生まれたで、ニコニコしながら「私の切り札」って言っちゃう場面なんかは、彼女の裏の顔が持つ、“笑っちゃうくらいの怖さ”と“清々しいまでの怖さ”が感じられると思いますし、演じていてとても面白かったです。

アニメ「薔薇王の葬列」より、エリザベス。

アニメ「薔薇王の葬列」より、エリザベス。

どう運命が転がっていくのか、目をカッと開いて観ていただけたら(鈴代)

大原 ちょっと横道に逸れてしまうかもしれないんですけど、話してもいいですか? 今初めて公の場で言うんですけど、11話のクライマックスでエドワードが、マーガレットの目の前で刺されるシーン。その一番感情がピークになるところで、実は収録の際、ピキッと腰をやりまして。

一同 えええええ!!

大原 完全に動けなくなる最悪の状況ではなかったんですが、そのギリギリ一歩手前の、プチギックリ腰みたいになってしまって(笑)。でもそれを正直にスタッフさんに伝えたらいい流れだった収録を止めてしまうし、紗弓ちゃんと天﨑くんにも気を使わせるし、ロビーには次のグループも待機しているし(笑)。何より一番いいシーンで気持ちが乗っていたので、もう必死になって脂汗をかきながらマイク前にいました。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。ランカスター家の王太子・エドワードは、最後までその誇りを忘れず立ち向かうが、ヨーク家の次男・ジョージに刺されてしまう。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。ランカスター家の王太子・エドワードは、最後までその誇りを忘れず立ち向かうが、ヨーク家の次男・ジョージに刺されてしまう。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。自身の目の前で息子・エドワードを殺されてしまったマーガレット王妃。

アニメ「薔薇王の葬列」第11話より。自身の目の前で息子・エドワードを殺されてしまったマーガレット王妃。

鈴代 ぜんっぜん、気が付かなかったです!

久川 役者やのう。

伊藤 裏話まですごい(笑)。

大原 収録の後、ポーカーフェイスを必死に装って皆さんにご挨拶をしつつ、ゆっくりゆっくり移動して(笑)エレベーターで下まで降りるなり、即タクシーと一番近くの整体を予約して。そういう意味でも一生忘れられない、思い入れのあるシーンとなりました(笑)。コロナ禍でしたが、ウチのエドワードとアンちゃんと3人できちんと掛け合えたのは、すごく幸せだったなって思います。

鈴代 私は生で大原さんのお芝居を拝見させていただけたのが、本当に貴重でありがたかったです。

──4月からいよいよアニメ「薔薇王の葬列」の第2クールが始まりますが、楽しみにしているファンの皆さまにひと言ずつお願いします。

伊藤 第2クールはこれまで以上の人と人との絡み合いや、恐ろしい展開が待っていますので(笑)、そこは覚悟していただいて。最後まで楽しんでいただけたらなと思います。

鈴代 史実をもとにしたシェイクスピアの作品が原案なので、終わりはある程度見えているんですよね。それでも「どうか、明るい未来が訪れますように」と祈りながら、原作を読んだりアニメを観たりしてしまう自分がいます。終わりに向かってどう運命が転がっていくのか、ぜひ皆さんにも目をカッと開いて観ていただけたらと思います。

久川 石田(彰)さん演じるリッチモンド、甲斐田(裕子)さん演じるジェーンといった新たなキャラクターも登場します。さらに感情が交差し、ますまず目が離せない展開になっていきますので、ぜひ楽しんでいただけたら。

大原 残念ながらマーガレットは第1クールで離れてしまうんですが、第2クールではイチファン、イチ視聴者として、皆さんと同じ気持ちで観るのをとても楽しみにしています。この作品は、なかなかほかでは味わえない、こちらの魂に強く訴えてくるものが多い作品かと思いますので、ぜひコミックスと合わせて、リチャードの運命と生き様を見届けていただきたいですね。

アニメ「薔薇王の葬列」より、リチャード。

アニメ「薔薇王の葬列」より、リチャード。

プロフィール

久川綾(ヒサカワアヤ)

11月12日生まれ、大阪府出身。青二プロダクション所属。主な出演作に、「カードキャプターさくら」(ケルベロス役)、「十二国記」(中嶋陽子役)、「少女革命ウテナ」(薫幹役)、「ハートキャッチプリキュア!」(月影ゆり/キュアムーンライト役)などがある。特技は飼い主に対するしつけ、モラル向上のアドバイス(愛玩動物飼養管理士二級)、介護のアドバイス(動物介護士)。

大原さやか(オオハラサヤカ)

12月6日生まれ、神奈川県出身。東京俳優生活協同組合所属。主な出演作に「ARIA」シリーズ(アリシア・フローレンス役)、「xxxHOLiC」(壱原侑子役)、「Fate/Zero」(アイリスフィール・フォン・アインツベルン役)、「夏雪ランデブー」(島尾六花役)、「美少女戦士セーラームーンCrystal」(海王みちる/セーラーネプチューン役)、「FAIRY TAIL」(エルザ・スカーレット役)などがある。特技はチェロ演奏。

伊藤静(イトウシズカ)

12月5日生まれ、東京都出身。賢プロダクション所属。主な出演作に「D.Gray-man」(リナリー・リー役)、「ハヤテのごとく!」(桂ヒナギク役)、「アマガミSS」(森島はるか役)、「オオカミさんと7人の仲間たち」(大神涼子役)、「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」(九条櫻子役)、「美少女戦士セーラームーンCrystal」(愛野美奈子/セーラーヴィーナス役)、「極主夫道」(美久役)などがある。特技は歌、スキューバダイビング。

鈴代紗弓(スズシロサユミ)

2月4日生まれ、 神奈川県出身。アーツビジョン所属。主な出演作に「精霊幻想記」(クリスティーナ=ベルトラム役)、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」(白銀圭役)、「ハイスコアガール」(大野晶役)、「モンスター娘のお医者さん」(イリィ役)、「ぼくたちは勉強ができない」(武元うるか役)などがある。特技はダンス(チア・ヒップホップ・ジャズ)。