「バクテン!!」土屋神葉(双葉翔太郎役)&石川界人(美里良夜役)|アオ高男子新体操部とともに、新しい扉を開けよう!

4月8日よりフジテレビ「ノイタミナ」枠ほかにて放送中のアニメ「バクテン!!」は、男子新体操に魅了された少年・双葉翔太郎が高校入学を機に新体操部に入部し、個性的なチームメイトたちと力を合わせて競技に打ち込む姿を描く青春群像劇だ。コミックナタリーでは双葉翔太郎役を務める土屋神葉と、双葉の同級生でジュニア大会準優勝の実績を持つ1年生エース・美里良夜を演じる石川界人の2人にインタビューを実施。作品やキャラクターの魅力についてはもちろん、アフレコでの裏話なども語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 武田真由子

双葉と一緒に男子新体操の扉を叩いた2人

──「バクテン!!」という作品の企画を最初に知ったときの印象を教えてください。

土屋神葉

土屋神葉 オリジナル作品ということもあって、オーディションのときはまだ作品の全容を把握していなかったんです。ただ、打ち込めるものを見つけて成長していく双葉というキャラクターには、自分を重ね合わせられるところがあるな、と感じました。スタジオオーディションは界人さんと一緒に掛け合いでやらせてもらったのですが、そういう形でのオーディションが初めてだったので、すごく楽しかったです。

石川界人 僕が一足先に美里役に決まっていたので、何人かの双葉候補の方と掛け合いでやらせてもらったんです。

土屋 これは余談なんですけど……そのオーディションが始まる直前に僕がトイレに行きたくなっちゃって(笑)。「でも、もう始まっちゃうし行けないや」と思っていたら、界人さんが「あ、俺もトイレ行きたいんで」みたいに気を利かせてくれたんです。そのおかげで、すごくスッキリした気持ちで臨めました(笑)。

──(笑)。石川さんはこの作品について、最初にどんなことを感じました?

石川 男子の新体操って、たぶん皆さんあまりなじみがないと思うんですよ。そこにフォーカスを合わせてアニメ化するという発想がまず新鮮でしたし、「そういうマイナーなスポーツを部活でやっている高校生たちは、どういう気持ちで競技と向き合ってるんだろう?」という興味が湧きました。なので、この作品にはぜひ関わりたいなと思ったのが最初ですね。

──男子新体操という競技自体はご存じでした?

石川 いや、知らなかったです。

土屋 僕は幼い頃に「タンブリング」というドラマ(2010年にTBS系で放送された、男子新体操を描くTVドラマ)を観ていたので、そういう競技があるんだということは知っていました。でも、それ以降あまり触れる機会がなくて……なので男子新体操のことは、実質ほとんど何も知らない状態でしたね。

──土屋さん演じる双葉翔太郎も、それまでまったく知らなかった男子新体操の世界へ飛び込んでいくキャラクターですよね。

土屋 そうですね、「男子の新体操なんてあるんだ?」というところから物語が始まるので。そういう意味では、自分の気持ちをそのまま乗せやすい部分もあったかなと思います。

石川 そもそも声優って、なじみのない競技どころか、なじみのない世界を演じることも多い仕事ですからね。なじみのないことばかりと言ってもいいくらい。なので今回も、特別な覚悟だったり気負いのようなものはそこまでありませんでした。

「神葉くんの声だったら、どう転んだって双葉になる」

──ではキャラクターについて伺います。キャラクターデザイン原案をマンガ家のろびこ先生が手がけていますが、代表作「となりの怪物くん」が土屋太鳳さん主演で実写映画化されていて、土屋家にご縁のある方ですよね。

土屋 そうですね。原作とキャラデザでちょっと違いはありますけど、同じ作家さんの関わった作品を姉弟で演じられるというのはすごくうれしいです。

──役が決まったとき、それぞれどんなキャラクターだと感じましたか?

石川 美里は、けっこう役幅があるなと感じました。一見クールキャラなんですけど、一口にクールキャラといってもいろんなタイプがありますよね。もともと感情の起伏が小さいのか、あるいはわざと抑えているのか。美里の場合はどうとも取れるなと思ったので難しかったんですけど、最終的には双葉のテンションに合わせることにしました。双葉がどう来るかによって、美里の感情の出し方も正解が変わってくるなと思って。

土屋 そうだったんですか。

石川 さっき、オーディションで何人かの双葉候補の方と掛け合いをやった話をしましたけど、その中で一番しっくりきたのが神葉くんとやったときのものだったんですよ。それが今の美里につながったと思います。ちょっと天然で、意識的に感情を抑えているわけではないんだけど、生い立ちとかいろんな理由である程度の起伏に収まっちゃってる感じ。だから、今後の展開次第ではどんどん明るくなっていく可能性もあるなと思ったし、ニュアンスの幅を残しておきたかったので、序盤のほうはすごく冷たい感じで平坦に平坦に演じました。この作品は成長物語でもあるから、なるべくそのギャップも出したくて。

──とはいえ、第1話でも翔太郎にさりげなく技のお手本を見せてあげたりしますし、冒頭から“意外と優しい”一面を見せるキャラクターでもありますよね。

石川 そうですね。そういう行動を取ったあとの処理の仕方が、序盤と終盤では変わってくるのかな。それは僕の技巧うんぬんを抜きにして、シナリオの表現としてもそうなっていると思います。

──土屋さんはいかがですか?

土屋 双葉に関しては、すごく前を向く力が強くて、みんなを引っ張っていけるくらいの明るさを持ち合わせたキャラクターだと思いました。彼は男子新体操と出会ったことですごくキラキラし始めるんですけど、「その前の双葉はどんな感じだったんだろう?」というところから、そこの落差を表現したいなと。ただ、けっこう苦戦しましたね。自分の中で納得というか、演じながら「双葉というキャラになじめている」と感じられるようになるまで、かなり時間がかかりました。

──ご自分で納得できるお芝居にしていくために、どんな工夫をされたんでしょうか。

土屋 自分の中では、オーディションを受けたときのお芝居が理想に近かったんです。そのときのイメージで本番のアフレコもやりたかったんですけど、どうしてもオーディションの感じでは演じられなくて……。いつの間にか、双葉翔太郎という人物を表現することよりも、オーディション時の芝居にどうやって寄せるかというところに固執している感じになってしまって。「監督もきっとオーディションのときの空気感を求めて自分を選んでくれたはずだから」とも思っていたし、ある意味すごく頑なになっていたんだと思います。そんなふうに苦戦していたら、界人さんがいろいろアドバイスをしてくださって。

石川 神葉くんとは一緒に収録することが多かったんで、「悩んでいるな」というのは横で見ていても感じました。序盤は特に。何度も同じところで声が裏返ったりしているのを見て、「裏返らない音域でやればいいのに」と思ってて(笑)。

土屋 (笑)。

石川 今「オーディションのときのイメージに固執してた」という話が出ましたけど、たぶん神葉くんの中ではそれが“かわいらしい声”のイメージだったんじゃないかと思うんです。でも、神葉くんの声って本来、いわゆる“かわいい声”ではないじゃないですか。そもそもオーディションでも、そんなにかわいい声は出してなかったし。

土屋 あ、ホントですか(笑)。

石川界人

石川 ただ、自分の中ではそれをやった感覚があったんでしょうね。その一方で、先ほども言ったように僕は僕で神葉くんのお芝居に合わせて美里のテンションを決めるつもりだったから、双葉がブレると僕も悩んでしまう部分もあり。

土屋 なるほど……。

石川 だから収録後に「帰り、ちょっと一緒に帰ろうか」と声をかけて、話をしたんです。「たぶん音域にこだわりすぎて、キャラクターの心をどう表現するかという根本から無意識に外れちゃってるかもしれないよ?」と。「神葉くんの声だったら、どう転んだって双葉になるんだから、音域の要素は無視していいと思うよ」という話をちょろっとしました。

土屋 そのおかげで、徐々に「もっと自由にやってもいいんだ」というふうに思えてきて。最終的には、本当に気持ちをぶつけて演じることができたと思います。