ナタリー PowerPush - 坂道のアポロン

菅野よう子、小玉ユキ、渡辺信一郎 現場では聞けなかった質問交換会

文化祭が前半の目的地

──小玉先生って、ストーリーを作るときに描きたいシーンをバーっと描いてから、それをどんどん膨らませていくって、何かのインタビューでおっしゃってましたよね。その描きたいシーンは最終回までで全部消化できましたか?

薫がまり子にピアノを弾いてとねだられるシーン。(c)小玉ユキ/小学館フラワーコミックスα

そうですね。文化祭までのシーンの、いろんな場面場面を一枚絵で描いてました。ダブルデートのシーン、軽くセッションしてるシーン、いとこのまり子にピアノ弾いてってねだられてるシーン、千太郎がケンカしてるシーン、あと薫がそのケンカに飛び込んでちょっとやらかすシーンとか……。それをつなげていく、という感じです。

──パズルみたいに。

はい。それで、5巻の文化祭が終わってからは、それまでに出来てきた人間関係をどう整理するか。整理というか、折り返すというか。

「坂道のアポロン」前半の山場となる文化祭のシーン。(c)小玉ユキ/小学館フラワーコミックスα

──文化祭が折り返し地点なんですね。

そうですね。やっぱりそこに向けて描いていたところがあるので。そこが前半の目的地でした。

「このマン」は何かの間違いだと思ってた

──つい先日、小学館漫画賞を受賞されましたが、2巻のときに「このマンガがすごい!2009」でオンナ編1位を取られたときとは、また違う感慨だったんでしょうか。

「このマンガがすごい!2009」(宝島社)

「このマン」のときは、実感が湧かなさ過ぎて、心の底から「何かの間違いじゃ」としか思わなかったんですよ。まあ、人から「間違いじゃない?」って言われると傷つくんですけど(笑)、でも自分ではそう思ってて。たぶんまだ2巻までしか描いてないっていうのもあっただろうし、世の中には面白いマンガがいっぱいあるのに、とか。とにかく全然受け入れられなかったです。まったく無名だったこのマンガに票を入れて下さった方々にはすごく感謝してますし、光栄なことだとは思ってたんですけど、当時の自分は「ありがとうございます」って思ってても手に力が入ってないみたいな感じで、うまく消化できていなかったんです。

──そんな心境だったんですね。

で、それが過ぎると今度はマンガランキングとかマンガ特集みたいなものに全然載らなくなって、やっぱりあれは幻だったんだって思うようになって。そのときはもう怖くて、ランキング本とか絶対見れなかったんですよ。表紙に「今注目のマンガ」みたいな文字が見えると全力で逃げまわってました。だからもう、地味な作品だし、もうマイペースに最終回を迎えるぞっていう気持ちだったので、小学館漫画賞も寝耳に水でしたね。

──注目されてないって思ってたけど、本当は見られてたってことですよね。

本当にありがたすぎるお話で。アニメも渡辺監督のお名前を先に伺って、作品を拝見したんですけど「こんなすごいアニメ作った人が、私の作品を……?」とありがたすぎる感じで。冷や汗ダラダラで打ち合わせに行ったんですけど、挨拶したらすごく気さくな人で安心しました(笑)。

──アニメに関して何か注文したことはあるんでしょうか。

ほとんどないですね。あったとしても、絵に関してとか、すごく細かいことだけです。音楽に関してはもう言わなくても分かってくださっています。最初のセッションの見学に行ったときも、私の頭の中で鳴ってた音がそのまま鳴ってるからびっくりしちゃって。アニメでの、本当に生の音が聴こえてしまうっていう驚きと、それをキャラクターが実際に叩いてるように見えるっていうのは、マンガでは絶対できない……なんでこんなことになったんだって、信じられない気持ちですよ。

原作よりもさらに悪さが際立っているという山岡。(c)小玉ユキ/小学館フラワーコミックスα

──アニメで特に楽しみなシーンってありますか?

もう全部すぎて1シーンに絞れない……。全体的に原作のエピソードをすごく大事にして下さってるんですけど、ところどころ監督オリジナルのアレンジが加わっているので、そのあたりが楽しみです。あ、それと山岡! 山岡が楽しみです! 原作よりも悪さが際立って、輝いてるんですよ。注目です(笑)。

オンエア情報

初回放送:2012年4月12日(木)25:10~
以降毎週木曜24:45~フジテレビ「ノイタミナ」にて放送。ほか各局でもオンエア。

原作:「坂道のアポロン」小玉ユキ(小学館「月刊flowers」連載)

監督:渡辺信一郎
脚本:加藤綾子・柿原優子
キャラクターデザイン:結城信輝
総作画監督:山下喜光
音楽:菅野よう子
アニメーション制作:MAPPA/手塚プロダクション

アニメ『坂道のアポロン』オリジナル・サウンドトラック 2012年4月25日発売 3059円(税込) / EPICレコードジャパン

本年、第57回小学館漫画賞一般向け部門を受賞したマンガ「坂道のアポロン」を、アニメ業界随一の音楽通で知られる渡辺信一郎監督が渾身のTVアニメ化!さらに、映像音楽業界で第一線を走り続ける菅野よう子が作品の音楽をトータルプロデュース!ジャズの名曲と共に、60年代のどこまでも純粋で眩しい青春がよみがえる!

収録楽曲

1. KIDS ON THE SLOPE / 2. Chick‘s Diner / 3. Moanin‘ / 4. Bag‘s Groove / 5. Blowin' The Blues Away / 6. Satin Doll / 7. YURIKA / 8. Rosario / 9. Curandelo / 10. Transparent / 11. Run / 12. But not for me / 13. My Favorite Things / 14. Equinox / 15. A Piece Of Blue / 16. Lullaby Of Birdland バードランドの子守唄 / 17. Jazz For Botton / 18. Four / 19. Easy Waltz / 20. float / 21. Milestones / 22. Apollon Blue / 23. Kaoru & Sentaro Duo in BUNKASAI(Medley "My Favorite Things ~ いつか王子様が ~ Moanin‘") / 24. Someday My Prince Will Come いつか王子様が

小玉ユキ 「坂道のアポロン」9巻 2012年4月26日発売 440円(税込) / 小学館

見逃せない本編完結!事故で妹を負傷させてしまったことをきっかけに、薫や家族の前から突然姿を消してしまった千太郎。千太郎はどこに、どんな思いで……!?

薫は喪失感から律子を傷つけてしまい、さらなる失意の中1人東京の大学へと進む。千太郎と薫は、再会できるのか?薫と律子の恋はこのまま消滅してしまうのか?鮮やかな季節の行く先は……!?

ラストまで疾走する物語をお楽しみに。美しいスペシャルページも必見!

YUKI ニューシングル「プレイボール / 坂道のメロディ」2012年5月2日発売  / EPICレコードジャパン

  • 初回生産限定盤[CD+DVD] 1500円(税込)ESCL-3895~3896
  • 通常盤 [CD]1020円(税込)ESCL-3897
CD収録曲
  1. プレイボール
  2. 坂道のメロディ
初回限定盤収録内容
  • 「プレイボール」ミュージックビデオ収録

※小玉ユキ描き下ろしイラスト ワイドキャップステッカー仕様

秦 基博 meets 坂道のアポロン ニューシングル「アルタイル」2012年5月30日発売 Ariola Japan Augusta Records

  • 初回生産限定盤[CD+DVD] 1260円(税込)AUCL-83~84
  • 通常盤 [CD] 840円(税込)/ AUCL-85 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. アルタイル
  2. アルタイル<backing track>
初回限定盤収録内容

Music Video収録DVD

初回盤/通常版共通特典

小玉ユキ先生 描き下ろし「坂道のアポロン」オリジナル・ジャケット仕様

小玉ユキ(こだまゆき)

小玉ユキ

9月26日長崎県生まれ。2000年にCUTiE comic(宝島社)にて「柘榴」でデビュー。2002年、Vanilla(講談社)にて「Beautiful Sunset」が第2回プレVanilla登竜門金の獅子賞を受賞。2004年、月刊flowers(小学館)にて「マンゴーの涙」を発表する。2007年から2012年にかけて「坂道のアポロン」を同誌に連載し、第57回小学館漫画賞一般向け部門を受賞した。