カトウコトノ原作によるテレビアニメ「将国のアルタイル」が、7月7日よりMBS、TBSほかにてスタートする。同作は月刊少年シリウス(講談社)で2007年より連載されているファンタジー戦記。将軍(パシャ)たちが治める草原と砂漠の国・トルキエ将国を舞台に、史上最年少で将軍になった少年マフムートが、国家間の陰謀や策略に挑む姿を描いていく。
コミックナタリーではアニメ化を記念し、主人公・マフムート役の村瀬歩、トルキエ将国の軍事と行政を司る“十三人の将軍(パシャ)”の1人・ザガノス役を演じる古川慎による対談を実施。それぞれが演じるキャラクターについてはもちろん、役への向き合い方や芝居のアプローチの仕方といった、役者としての話題にも花が咲いた。
取材・文 / 熊瀬哲子 撮影 / 佐藤友昭
マフムートとザガノス、2人の関係
──村瀬さんが演じる主人公のマフムートは戦争を防ぐために奔走する、国家の史上最年少将軍……つまり天才少年です。村瀬さんご自身はマフムートをどのようなキャラだと思っていますか?
村瀬歩 マフムートは17歳という年齢のわりにいろんなことができてモチベーションも非常に高いんですけど、頭がいいんだなと思う反面、情によって動かされる部分もあるので、善悪の判断のつけ方が子供っぽいなと思います。「大人と子供が同居している少年」という印象で、そういうどちらの要素も持っているからこそ、揺れ動く心の機微や苦悩は大事に捉えていかないと、と感じています。あとは演じるうえで、原作でも顔立ちが美麗だという話がよく出ているのでそこに合ったお芝居も意識していますね。
古川慎 カトウ(コトノ)先生の描くキャラクターには色気がありますよね。
村瀬 流し目が美しかったりとか、男性キャラクターにもすごく色気を感じます。
──アニメの第1話を観させていただいて、おふたりの演技にもその色気を感じて、イメージ通りだなと思いました。
村瀬 わあ、本当ですか。ありがとうございます。
古川 ありがたいです。僕が演じるザガノスって、最初は「本当に味方なのだろうか? 今後、主人公に害をなす存在になっていくのではないだろうか?」と疑ってしまうほど、すごくミステリアスな雰囲気を持ったキャラクターなんです。でも原作を読み進めていくうちに、強い覚悟を持って将軍(パシャ)を務めている人物なんだとわかってきました。冷徹な部分もあるけど、自分の持っている信念は絶対に曲げないんです。
村瀬 マフムートとザガノスはたぶん人としては合わないんだけど、お互いに国のことをすごく考えているからこそ成立している関係なんじゃないかな。
古川 パーソナルな部分で通じ合うことは絶対にない。ただ、お互いが持っている信念や目的、叶えたい願いのようなものは、2人の間でクロスするところがあるのではないかと思います。アニメの第1話で、マフムートの意見に対してザガノスが「子供か君は?」と切り捨てるシーンがあるんですが、これは僕の勝手な想像なんですけど、ずっと昔、ザガノス自身もマフムートと同じ考えを持っていたんじゃないかと思うんです。そういったところで、自分とどこかしら似た部分を感じたのではないかと。だからこそ、ザガノスはマフムートに目をかけていく。利害関係にあるようで、そうとは言い切れない何かも2人の間にはあるのかなと思いました。
遠いからこそ、ザガノスの心情を理解する(古川)
──アフレコ現場での様子も教えてください。先日、古川さんが別のインタビューで「演じる役によって現場でのテンションが左右される」といったお話をされているのを拝見しました。
古川 僕は演じている役に入り込むタイプなので、フランクな役を演じているときと、ザガノスのように冷徹な役を演じるときは、それに合わせて自分の中のスイッチを切り替えているところはありますね。なのでほかの現場と比べたら、おしゃべりじゃないかもしれません(笑)。村瀬さんはあまり変わらないですよね。
村瀬 僕は基本的に、演じるキャラクターでテンションが変わることはないですね。どこの現場でも同じ感じです。でもなんとなく感じているのは、シリアスな作品だったり、キャラクターがたくさん死ぬ現場ほど、みんな休憩中に楽しそうにしゃべるなって(笑)。たぶん反動もあると思うんですけど、いつどのキャラが死ぬかわからないという現場ほど、逆にみんなの結束力が強まるのかもしれないです。
──古川さんが言う「役に入り込む」というのはどういう感覚なんでしょう。
古川 僕の場合、例えば……自分の演じているキャラクターが敵対している相手のことは嫌いになります。
村瀬 あはは(笑)。気持ちがキャラクターに入っちゃうんだ。マフムートのことは嫌いじゃない?
古川 マフムートに対してはそんなことないんですよ。ザガノスも、最初こそ「ものをわかってないパシャだ」という見方をマフムートにしていると思うんですけど、決して彼に対して敵対心を持っているわけではないので。
村瀬 原作を読んでいるとわかるんですが、ザガノスは後々、マフムートを認めていきますからね。古川くんがザガノスを理解してくれていて助かりました。そのおかげで僕、嫌われずに済んだ(笑)。
古川 僕は役に入り込むタイプだからこそ、キャラクターの心情をちゃんと理解していないと説得力のある演技ができないと思ってるんです。なので「このシーンのザガノスの心境がどうしてもわからない」と思ったところは、直接カトウ先生にお伺いして、丁寧に教えていただきました。
村瀬 アフレコ現場にはカトウ先生もいらっしゃったんですが、表面上は冷徹なザガノスが何を考えているのか、古川くんは原作を読み込んだうえで、先生に「このときはどういう心情なんですか?」って質問をしていて、めちゃくちゃ勉強熱心だなって。僕は古川くんのそういうところをすごく尊敬してます。
古川 僕自身がザガノスから遠いので、そのぐらいしないと入り込めない部分があるんですよ。ザガノスの心情をしっかり理解するところから掴んでいかないといけないんです。
村瀬 なるほどね。役に入り込むタイプだとそういうところが難しいんだ。僕も古川くんもお互いに芝居は好きなんだけど、役への入り方が全然違うのでそういう話を聞けるのはすごく新鮮ですね。
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役に入れ込みすぎないからこそ、自分の中で整理がしやすい(村瀬)
- テレビアニメ「将国のアルタイル」
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放送情報
MBS:2017年7月7日(金)より毎週金曜26:25~
TBS:2017年7月7日(金)より毎週金曜26:25~(第1話は26:27~)
BS-TBS:2017年7月8日(土)より毎週土曜24:30~スタッフ
原作:カトウコトノ(講談社「月刊少年シリウス」連載)
監督:古橋一浩
シリーズ構成:高木登
キャラクターデザイン・総作画監督:菅野利之
アニメーション制作:MAPPA
製作:将国のアルタイル製作委員会キャスト
マフムート:村瀬歩
ザガノス:古川慎
キュロス:KENN
アビリガ:諏訪部順一
スレイマン:小西克幸
カリル:緒方賢一
ルイ:津田健次郎
レレデリク:小林ゆう
グララット:櫻井孝宏
ルチオ:小野大輔
ブレガ:山路和弘
バラバン:中井和哉
バヤジット:内山昂輝
アイシェ:茅野愛衣
オルハン:島崎信長
イスマイル:岡本信彦
イブラヒム:佐藤拓也
シャラ:日笠陽子
ほか
- カトウコトノ「将国のアルタイル⑲」
- 発売中 / 講談社
“警告の鐘”をもって、ついにバルトライン帝国の喉元・城壁の町(ミュール)に刃をつきつけたザガノス軍。帝国存亡の危機ともいえるこの戦況に、皇帝に忠誠を誓った新貴族(ヘルマン)が、獅子奮迅の戦いを挑む。レレデリク率いる重騎兵4千の大軍団の増援を待ち、自ら囮となり戦場を駆ける新貴族。トルキエとバルトライン。暁が昇るとき、勝利を手にするのはいずれの陣営か!?
- 村瀬歩(ムラセアユム)
- アメリカ合衆国出身、12月14日生まれ。主な出演作は「ハイキュー!!」(日向翔陽役)、「D.Gray-man HALLOW」(アレン・ウォーカー役)、「怪盗ジョーカー」(ジョーカー役)など。
- 古川慎(フルカワマコト)
- 熊本県出身、9月29日生まれ。主な出演作は「ワンパンマン」(サイタマ役)、「orange」(須和弘人役)、「タブー・タトゥー」(赤塚正義)など。
©カトウコトノ・講談社/将国のアルタイル製作委員会
©カトウコトノ/講談社
2017年8月2日更新