「アリータ:バトル・エンジェル」日本語吹替キャスト 森川智之、島﨑信長、神谷浩史インタビュー|豪華声優陣がハリウッド版「銃夢」に吹き込んだ生命とは?

INTERVIEW

島﨑信長(ヒューゴ役)インタビュー

ヒューゴ×島﨑信長

とにかくアリータの存在感にやられました

島﨑信長

──試写をご覧になったばかりだと思うんですけれど、まずは率直なご感想を聞かせてください。

「すごかった! 面白かったー!」って感じです。2時間があっという間でした。体感時間は短かったですけど、2時間では収まりきらない、押し寄せてくるような密度もあって。だから今、なんだろう……。たくさんのものを受け取ったなという感じがして、ちょっとボーッとしてます(笑)。

──1度観ただけでは処理しきれない感じでしょうか。

自分が演じさせていただいている吹替版で拝見したのもあって、よりいろんなところを観ちゃうのもあるかもしれないですね。観たいシーン、聞きたいポイントがたくさんあって、1回では追いつかないです。

──どんなところが印象に残っていますか。

とにかくアリータの存在感にやられました。機械の身体なのに作り物に見えないというか、本当にそういう身体を持った人間が存在しているようで……。もちろん、こんなに目の大きい人間はいないし、CGのはずなんですけど、初っ端のアリータが目覚めるシーンで眠たそうにあくびをするところなんか「ああ、生きてるな」って。映画を観る前は、「だんだんアリータの違和感がなくなっていくんだろうな」と思っていたんですけど、スタートから違和感を感じなかったです。もうアリータの1つひとつの動きや表情、すべてが名シーンだなと思います。

──その中でも特にお気に入りのシーンを挙げるとしたら?

「アリータ:バトル・エンジェル」より、モーターボールのシーン。

モーターボールのバトルシーンは上がりますね。選手1人ひとりもすごく強いし、すべての動きが激しい中、アリータが際立って強い存在だっていうのがすぐわかる。自分がもし観客だったら、いきなりこんな新人が出てきて、こんなバトルを見せられたらファンになるよなって。あと原作でも印象的なシーンですが、アリータが諦めずに腕1本になっても戦うシーン。腕でグリシュカの目を貫きに行くところなんか「うわ! 行った!」って。ゾクッとしました。

合格の連絡が来たときは、うれしいのと同時に信じられなかった

──日本のマンガを原作に、ジェームズ・キャメロン監督が製作を務めるということで、非常に注目度も高い作品ですが、本作に出演することについてどう思いますか?

僕、実は劇場映画の吹替版でメインキャラクターをやらせてもらうのは初めてで。映画でも配信やパッケージだったり、TV放送ではあるんですけど。

島﨑信長

──そうなんですか? それは意外でした。

だからオーディションを受けたときも、もちろん精一杯やってますけど、正直受かるとは思ってなくて(笑)。合格の連絡が来たときは、うれしいのと同時に信じられなかったというか。自分が一番最初にオーディションに受かったときの気持ちを思い出しました。しかもおっしゃられたとおり、大変な期待作であり大作ということで、ドキドキしっぱなしで。演じさせていただく前から光栄だなと思ってたんですけど、実際にできあがった作品を観て、こんな素晴らしい映画に自分が吹き替えとして関わらせていただけるなんて、誇らしい気持ちです。

──島﨑さんが演じるヒューゴは、アリータに惹かれていく真面目な青年であると同時に、秘かにサイボーグ部品を盗んで売るという闇を抱えているキャラクターです。彼の魅力はどんなところにあると思いますか。

夢を追いかけて、それに向かってがむしゃらに突き進んでいる人って、僕はとっても魅力的だなって思うんです。場合によってはそれが無茶なことだったり、それによって歪みが生じたり、行き過ぎたりすることもあると思うんですけど、それでも1つのものにまっすぐ向かう気持ちを持つ人が、僕はすごく好きで。ヒューゴがザレムに憧れて、自分も行ってみたいと一途に思う姿はカッコいいなと思いますし、そのために裏の仕事に手を染めているのも含め、清濁併せ持っているからこそ、その思いの強さも際立つんじゃないかなって。地位とか名誉とかお金とかじゃなくて、ずっと見上げていた憧れの場所への純粋な思いが、彼の行動原理であり核だなと感じますね。アリータがヒューゴに惹かれたのも、そんな彼が魅力的に見えたんじゃないかなと。

「アリータ:バトル・エンジェル」より、ヒューゴ。

──原作のヒューゴはやんちゃな少年という感じでしたが、映画では大人っぽく描かれていますよね。

確かに原作と比べると、年齢も上がって大人っぽくはなってますね。実際、役者さんはカッコいい人だし色気もあるし。でも夢を追いかけているってところは変わらなくて。例えば大人だなって思っている人が、時折見せる少年らしさとか、特に男の子ってそういうところあると思うんですよね。しっかりしていて大人だなって思う人でも、子供っぽいところがふと見えたり、ロマンみたいなものを追いかけてたり。だから設定として大人になっていたとしても、ヒューゴという人物の魅力は変わらないんじゃないかなと思うんです。

──映画ではアリータとの恋愛的な要素もありますね。アリータのような女の子はどう思いますか?

素敵な女性であり、人間だなと思います。何も記憶がなく、何も知らないがゆえのまっすぐさから始まって、過去との葛藤、選手としてのプライド、大切なものを守りたいという感情を知っていくことで強くなっている姿は、美しいしカッコいいですよね。だからこそ、なりふり構わず夢を追っていたヒューゴもアリータと出会って変わったんだと思います。

──洋画の吹き替え初挑戦だったという上白石さんのアリータはいかがでしたか?

とっても素敵でしたね。アリータのまっすぐさや、まっすぐの中にもいろんな思いが詰まっている姿を、素直に表現されていたなと思います。

神谷さんのザパンの人間臭い感じが最高

──イド役は森川智之さん、ザパン役は神谷浩史さんが演じています。おふたりの演技はいかがでしたか。

島﨑信長

森川さんが百戦錬磨なのは重々承知していましたし、自分自身いろんな森川さんを拝見してましたけど、改めてやっぱりすごいなと。本当に自然なんですよね。薄めて馴染んでいるのではなく、とても濃く中身が詰まっているのに自然なのがすごい。最初はつい「森川さんすげー!」と思いながら観ちゃうんですけど、気が付いたらイドとして観ていて。本当に役者さんとシンクロしているというか、役者さんと一緒に生きている感じがするんですよ。技術的にすごいなと思う部分もたくさんあるんですけど、あの自然さは、森川さんが役者さんの表現を120%感じているからこそなんだろうなと思います。今まで吹き替えで共演したこともありましたが、自分がメインで関わる作品で会話をして、改めてよりすごさを体感しましたね。

──神谷さんのザパンはいかがでしょうか。

神谷さんは、実際の数とかはわからないんですけど、森川さんと比べたら吹き替えの経験値的には少ないとは思うんですよ。僕と神谷さんの距離がまず遠くて、さらに神谷さんと森川さんの間にも経験や数の差があるので、森川さんに対しては、ただただ「すげえ」ってなってしまうんですけど(笑)。神谷さんは、森川さんよりも自分に近い分、だからこそ拾える部分があるというか、僕の想像が追いつける部分があって。アニメでご一緒する機会も多いので「吹き替えの神谷さんはこうなるんだ」とか「こういうアプローチがあるんだ」と勉強になりましたね。

──ご自身に近い先輩として、学べるところがあったんですかね。

「アリータ:バトル・エンジェル」より、ザレムを見上げるヒューゴとアリータ。

そうですね。そして神谷さんのザパンは人間臭い感じが最高でした。神谷さんってきっと主人公役とかのイメージが強いと思うんですけど、こういうちょっと闇を抱えた悪役というか、執着心を持っている表現が僕はすごく好きで。ザパンは悪役だけど、超越した悪ではなくて人間臭さがあるじゃないですか。弱さとかコンプレックス、虚栄心がある、人間臭さ全開みたいなキャラクターなので。だからこのキャスティングをした人はわかってるなと。この表現は神谷さんじゃないとできない。素晴らしかったです。

これからも吹き替えでチャンスがもらえるように

──今回、洋画の劇場作品でメインキャラクターを演じてみて、アニメとの違いを感じましたか。

島﨑信長

僕は根本は一緒だと思ってるんですが、一番の違いが何かと言ったらすでにその役を演じている役者さんがいるってことですね。アニメではイチから自分で役作りができるというか、自分でやらなきゃいけない。その分、アニメってト書きの情報量が多いんです。状況説明やキャラの心情や表情なんかも細かく説明されていて。でも洋画だとそもそも、元の映像に表情も心情も全部乗っているし、何より役者さんの演技がある。それが大きな違いですね。例えばアニメから洋画に行くと、役者さんの演技をリスペクトしながら演じるからこその制限もあるし、逆に洋画からアニメに入ると、正解のない状態で演じる戸惑いがある。もちろんアニメも、絵が未完成の状態でアフレコをすることも多いので、想像力で演じるしかないんですが。自分としては、苦手意識はまったくないんですけど、実写で演じられている役者さんの表現を汲み取ったり、呼吸とシンクロしたりっていう力は、もっと育てたいですね。それには当然技術も必要なので、個人として努力はしつつも、もっと場数を踏んで経験値を積めるよう、これからも吹き替えでチャンスがもらえるように精一杯演技をしていきたいです。

──では最後に、これから映画を観る方にメッセージをお願いします。

まず、純粋に大変面白い作品です。仮に声がまったくない状態で観たとしてもいろんなものが伝わってくるし、面白いと思える作品になっているなっていうのが僕の印象です。僕自身、収録のときは実写の音声を聞きながら吹き替えをしましたが、すごく素敵だなって思いながら演じていて。だから正直に言っちゃうと、もちろん吹き替えも観てほしいんですけど、もうどちらで見ても絶対面白い(笑)。それぞれに面白さ、よさがあると思うし、両方観ることで言い回しやニュアンスの違いを楽しむこともできると思います。僕も映画館に行って、どっちも観たいなと思います!