コミックナタリー Power Push - 「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」

戦争嫌いで怠け者の女好き“昼行灯”は主役の鉄板? 小説、マンガ、アニメと広がるファンタジー戦記

「皇国の守護者」ファンは「アルデラミン」もチェック

──少し毛色を変えた質問ですが、「アルデラミン」の制作にあたって影響を受けている作品などはありますか?

宇野 例えば「パンプキン・シザーズ」ですね。戦場のやるせなさや戦いの激しさ、その辺りを盛り上げる描き方はかなり参考にしています。それから「海皇紀」。基本的には大河もので、知略によって状況をなんとかしていく面白さを描いた作品なんですが、作中にトゥバン・サノオという最強キャラが出てきまして。古代文明のロボットと1対1で戦ったりするんですよ。軍略を描くのが戦記ものだと思っていたので、そこに個人のバトルを入れていいんだ!という驚きがあって。

アニメ版のヤトリの設定画。

──ヤトリも一騎当千キャラですが、その辺りに影響が?

宇野 すごくあると思います。同じ川原(正敏)先生の作品に「修羅の門」という作品があるのですが、これは千年ぐらいひたすら歴史最強のまま武門をつないできた「陸奥圓明流」という流派の話なんです。ヤトリの家系である“イグセム”というポジションは、これに通じるところが大きいんですよね。

中山 不敗を義務付けられた家系ですからね。

宇野 ええ。加えて先ほどもお話したヤトリの「武人としての価値観」や「徳の高さ」も、これらの作品から大いに影響されていると思います。

中山 なるほど言われてみれば、面白いですね。ほかにも影響を受けた作品はありますか?

宇野 一番大きいのはマンガ版の「皇国の守護者」です。例えば、側道上に臥せった主人公・新城さんの部隊がこれから敵を討つというシーンがあるのですが、これは文章でやると、ともすれば3行ぐらいでそっけなく終わってしまいかねない場面だと思うんです。でもそこで新城さんは、敵が来るまでに「でもこのやり方は間違っているんじゃないか」とかいろいろ逡巡する。そのあたりの心情を描いているのが面白いんですよ。

──確かに、イクタも策を実行する際に慢心はなく「ここをごまかしきれるかがこの作戦の成否を分ける」など、考えを巡らせますよね。

敵と交渉中のイクタ。自信満々に見えても、心の中では作戦への緊張が溢れている。

宇野 ええ。そういうところにはすごく影響を受けていますね。

川上 実は「皇国の守護者」は、私も「アルデラミン」をマンガ化するにあたって影響を受けているんです。

宇野 えっ? そうだったんですか!

中山 あれ? 宇野先生がオススメしたわけじゃないんですか。

川上 違うんですよ。戦記ものでマンガになっていて有名どころということで、手をつけてみたんです。読めば読むほど「こんなに(自分も)できるかな……」って気持ちになりましたが。

──(笑)。参考になったポイントはありましたか。

模擬戦の中で、作戦通りに事が進み笑みのこぼれるイクタ。

川上 戦場の厳しさがすごく出ていて、そんな中で主人公が「ニヤッ」って笑うんですよね。その顔のカットが大きく載ってたりすると「いいなあ」と。

宇野 新城さんいいキャラっすよねえ。

川上 戦場を描くのは大変だろうなと思ったのですが、それよりもそこで生きているキャラクターの「ここ!」という表情が描けたらいいなと思えました。小説と違って、マンガは絵がメインになると思うので、流し見している人でも、「おっ!」と目を留めてもらえるといいなと思っています。

中山 「皇国」ファンは「アルデラミン」をチェックですね(笑)。

「あえて言わず、あえて見せず」監督ならではの粋な演出

──それではここからは、いよいよアニメ版の話をできればと思います。この鼎談の公開は第1話が放送された後になりますので、みなさんにもその辺りのご感想をお聞きできればと。

アニメ「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」場面写真。

宇野 イクタのキャラクターがいい感じにユーモラスになっていたと思うんですよね。イケメンに厳しい性格が出た「ズバリ容姿端麗罪だあ!」みたいなシーンとか(笑)。1話の前半部分はキャラクター同士の掛け合いで引っ張っていくところが魅力だと思うので、そこをまず楽しんでいただければと。愉快な連中が出てくるアニメなんだな、というところから入っていってもらいたいですね。

川上 私は完全にイチ視聴者なのですが(笑)。第1話のラストが、すごくいい引きだなと思って。最後にナレーションが入るのが、カッコいいです。完璧だと思いました(笑)。

宇野 長い物語を俯瞰して語る戦記ものの雰囲気に、ナレーションがピッタリきてましたね。

川上 そうですね。先にアニメを観ていたら、もうちょっとマンガも構成を変えたかもと思います(笑)。まとめ方がすごく上手いじゃないですか。船に向かいながら、高等士官試験の話をしているところとか。マンガだと丸々1話かけて描いた静かなエピソードを、こんなに絵を動かしながら進められたのかと思いました。

──今後アニメ版で楽しみにされていることはありますか?

PVより、ヤトリの戦闘シーン。

川上 ヤトリの戦闘シーンは期待してます。戦記ものなので、大人数が戦うところも見どころではあるのですが、ヤトリの1対1のバトルは「アルデラミン」の花形だと思うんですよ。

中山 が……がんばります(笑)。

──プロデューサーの中山さんとしては、1話はどんなことを意識しながら作られたのでしょうか。

中山 やっぱりどうしても、取捨選択になるんですよね。小説やマンガは、読者が自分のタイミングで読む時間をコントロールできるのですが、アニメは強制的に尺に沿って進んでいってしまうメディアなので、落とさざるを得ない要素が出てしまうのは残念でした。それでも、昨今の作品の中ではじっくり尺を取ってやっていると思います。

宇野 すごく丁寧に作っていただいてるなと感じています。小説では表現できないたくさんの情報も詰まっているし。

中山 それはたしかにあって。アニメだと、役者の声が乗り、SE(効果音)が乗り、BGMが乗る。これらは耳で入ってくることで補強される部分ですよね。音が入るアニメだからできるニュアンスもあるんです。ですから、そのあたりにも注目いただきたいですね。

──演出的な部分でいうと、どのあたりが見どころとなるでしょうか。

アニメ「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」場面写真。

中山 市村(徹夫)監督ならではのテクニックという部分では、あえてしゃべっているところを見せないといった小技がありますね。例えばヤトリが、ライバルであるレミオン家の人間と挨拶をするときに「そう、あんたが……」と言いながら2刀をカチャっと鳴らすシーン。あれは「2刀を帯びるのを許されていることが、イグセムを表している」ということだったり。細かいところですが、そういう「あえて言わず、あえて見せず」という粋な部分も多いので、ぜひ注目してもらいたいですね。

──なるほど。2話以降についても期待が掛かるところなのですが……。

中山 2話からは、いよいよ実際の戦争状況に彼らが巻き込まれていく。その部分を楽しみにぜひ見ていただきたいですね。本作は4話までで1つのシークエンスとなるので……アニメ上級者の方々もいわゆる“3話切り”はせず、今回はちょっと4話まで付き合ってくれないかなと(笑)。

宇野 楽しみにしています!

川上 私もこれからはアニメをマンガの参考にしたいと思っています!

中山 ええ!? いやいや、こちらこそ今後とも参考にさせていただきます!

テレビアニメ「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」

隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国・カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々ながら高等士官試験を受験しようとしている1人の少年がいた。彼の名はイクタ。戦争嫌いで怠け者で女好き、そんなイクタがのちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。小説、マンガ、アニメの3メディアで展開される壮大なファンタジー戦記!

原作小説10巻、マンガ版5巻は2016年7月9日に発売。同時リリース記念の書き下ろし&描き下ろしの短編が、特設サイトにて公開中!

特設サイトはこちら

放送情報
  • TOKYO MX:金曜25:05~
  • サンテレビ:日曜24:30~
  • KBS京都:日曜23:00~
  • テレビ愛知:日曜26:05~
  • BSフジ:日曜25:30~
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原作小説はこちら

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宇野朴人(ウノボクト)

小説家。在学中より「神と奴隷の誕生構文」にてデビュー。現在は「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」を執筆中。同作は自身初のアニメ化タイトルとなる。そのほかの代表作に「スメラギガタリ」がある。

川上泰樹(カワカミタイキ)

マンガ家。代表作は「まおゆう外伝 まどろみの女魔法使い」。現在は「転生したらスライムだった件」「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」のコミカライズを担当している。

中山信宏(ナカヤマノブヒロ)

プロデューサー。ワーナー・ブラザーズ・ホームエンターテイメント所属。代表作に「とある魔術の禁書目録」「ロウきゅーぶ!」「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり などがある。